なぜ空き家を放置してはいけないのか?放置空き家に潜む5つのリスクを解説!
少子高齢化や首都圏への一極集中が理由で、国内の空き家は増加の一途をたどっています。中でも、「放置空き家」と呼ばれる所有者不在で適切に管理されていない空き家は、社会問題となりメディアでも度々報じられています。
空き家問題解決に向けて、令和5年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正され、空き家所有者はこれまで以上に空き家の管理責任を負うことになりました。空き家を適切に管理していないと、大きな代償を払うことになる可能性もあるのです。
本記事では、空き家を放置するリスクと、そのまま放置し続けるとどのようなデメリットがあるのかを解説していきます。また、空き家を有効活用するための方法も紹介していますので、今空き家を所有している方や将来空き家を相続する可能性があるという方は、ぜひ参考になさってください。
目次
空き家とは?
空き家は主に以下の3つに分類されます。
空き家の種類 | 説明 |
①賃貸・売却用の空き家 | 賃貸や売却のために空き家になっている家屋 |
②二次的住宅 | 避暑・保養などの目的で利用される別荘 仮住まいやセカンドハウスなど |
③賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 上記以外の人が住んでいない住宅 例:入院やホーム入居で住人がいない 建て替えのため取り壊し予定 など |
①は賃貸物件で空室状態の物件や売却活動中で空き家になっている物件です。②は別荘やセカンドハウスなど、常に人がいるわけではないが管理はされている住宅を指します。
③の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」が空き家問題で最も注視すべき住宅です。
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家の一例
- 住人が亡くなり子供たちも遠くに住んでいる空き家
- 手入れをされていないため荒れてしまっている空き家
- 地震や台風が来たら壊れてしまいそうな古い空き家
社会問題となっている③の空き家は、①②の空き家と区別するために「放置空き家」とも呼ばれています。
空き家を放置する5つのリスク
空き家を放置することで、様々なリスクが発生してしまいます。長く放置するほどに、リスクは深刻化し複雑になるでしょう。
本章では、放置空き家が直面する5つのリスクを詳しく解説していきます。所有者自身へのリスクはもとより、周辺住民にまで影響を与えるリスクもあるので、どのようなリスクが問題になるのかをしっかり把握しておきましょう。
維持管理費のリスク
人が住んでいない空き家でも、固定資産税や都市計画税は支払わなくてはなりません。一戸建ての固定資産税は平均で10万円から15万円程度と言われており、毎年払う必要があるので長く空き家にするほど負担は増えます。
他にも空き家を維持するための費用としては、火災保険料や空き家に通うための交通費、空き家管理代行サービスへ支払う代金などがかかる場合があります。
空き家の維持管理費とは
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 水道光熱費
- 空き家に通うための光熱費
- 空き家管理代行サービスの代金 など
老朽化による倒壊のリスク
家は人が住まなくなると、一気に劣化が進みます。長く放置された空き家は、屋根瓦や壁面の崩落や建物自体の倒壊の可能性があり、非常に危険です。
空き家となる家はもともと古い建物の場合がほとんどです。耐震基準が今より厳しくなかった時代の建物だと、大きな地震で倒壊してしまう危険性が高まります。
旧耐震基準 | 新耐震基準 | |
適用期間 | 1981年5月31日まで | 1981年6月1日から現在まで |
構造基準 | 震度5強程度の地震に耐える | 震度6強~7程度の地震に耐える |
また、崩れかけた家があるとその周辺一帯の景観が損なわれ、資産価値が下がってしまいます。結果的に地域住民へ迷惑をかけてしまうことも、念頭に置いておくべきでしょう。
衛生面のリスク
空き家を放置していると、隙間から害獣や害虫が入り込み巣を作ってしまうことがよくあります。
空き家に入り込む害獣や害虫
- 野良猫
- ネズミ
- コウモリ
- アライグマ
- ハクビシン
- スズメバチ
- シロアリ など
害獣が侵入した家の中には、動物の糞尿が家の中に堆積していたり死体がそのままになっていたりと、衛生面で大きな問題があります。一度害獣や害虫が繁殖すると、それらを餌にするさらに大型の害獣も呼び寄せることになってしまうので、早めに対処しなくてはなりません。
他にも不法投棄されたごみが悪臭を放ち、周辺住民に迷惑をかけるという事例もあります。一度ごみが投棄されると、それを見た人がさらに新たなごみを投棄するという負のループができてしまうのです。
害獣害虫・不法投棄ともに早めの対処が肝心です。空き家は定期的に見に行き、異常がないかチェックするようにしましょう。
治安悪化のリスク
放置された空き家がある地域は、住民同士のネットワークが希薄なエリアだと認識され、犯罪者に空き巣や不法投棄のターゲットとされやすくなってしまいます。実際に、不法侵入されて知らないうちに住み着かれていた事件や、空き家内で薬物の取引が行われていたという事件もありました。
他にも、空き家は放火の被害に遭いやすいリスクもあります。雑草や樹木が生い茂り、周囲からの目線が行き届きにくくなった空き家は、放火犯の格好のターゲットとなってしまいます。
空き家を所有する人は、放置した空き家で犯罪が起き、周辺の住民に大きな迷惑や被害を与えてしまうリスクを十分に把握しておかなくてはなりません。
管理責任のリスク
これまでに紹介したリスクが要因になって起こる事案のすべては、所有者に管理責任があります。空き家の管理が十分でなかったことが原因で、通行人の怪我や死亡事故、隣家への建物被害が発生すると、空き家の所有者は損害賠償責任を負う可能性があります。
令和5年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が改正され、空き家の所有者は周囲に悪影響を及ぼさないように、空き家を適切に管理する責務が定められました。この「空き家法」改正により、以前と比べて空き家の所有者の管理責任が重くなっています。
空き家を放置していると行政の指導・勧告等の対象になる可能性があることを理解し、空き家の管理を怠らないようにしましょう。
放置空き家の減少に向けて、空き家法が改正
令和5年に改正された「空家等対策の推進に関する特別措置法」通称「空き家法」は、改正前に比べて支援制度を充実させる一方で、危険な空き家の定義が広がり、より多くの空き家所有者が管理責任を負う可能性が出てきました。
本章では、空き家法の改正で新たに設置された制度の詳細について解説していきます。
「空家等管理活用支援法人」の新設
これまで行政職員の人員や知識の不足が原因で、空き家所有者が家屋の活用や管理について相談できる場所がないことが、問題視されていました。今回新設された「空家等管理活用支援法人」が行政と空き家の所有者や活用希望者との間を取り持つことで、空き家対策がさらに活性化することが期待されます。
「空家等管理活用支援法人」には、空き家の活用や管理に取り組んでいるNPO法人や社団法人・会社などが指定される予定です。
支援法人の業務例
- 空き家所有者や活用希望者からの相談対応・情報提供
- 所有者から依頼を受け、空き家の活用や管理
- 空き家リスクや活用方法についての普及啓発
「空家等活用促進区域」の新設
中心市街地など、地域の重点的な拠点となる場所に空き家が集中していると、その地域が本来担うべき機能を低下させてしまう恐れがあります。また、古い空き家等を活用したくても、建築基準法などがネックになり建て替えやリフォームが困難な地域もありました。
市町村がこうした地域を「空家等活用促進区域」に定めることで、区域内の空き家所有者へ賃貸や売却を促し、新たな住民を招き入れることで地域経済の活性化が期待できます。また、規制の合理化により、これまで不可能だった建て替え・改築や、空き家をカフェとして活用することなどが可能になります。
行政による代執行の円滑化
空き家法の改正で変更された点に、行政代執行の手続きを円滑化し迅速な対応が可能になったことがあります。これまでは自治体には空き家所有者への強制力がなく、危険な空き家の状況把握が困難でした。
改正後は「特定空き家」と呼ばれる特に危険な空き家に対して、勧告・命令などの手続きを省略し、スムーズな代執行が可能になります。さらに、特定空き家の解体費用は、空き家所有者の財産から強制的に徴収される仕組みです。
これにより、老朽化して倒壊の危機にある空き家を迅速に撤去できるようになり、周辺地域の安全が確保されるでしょう。
特定空き家・管理不全空き家とは何か?
特定空き家とは、周辺地域に悪影響を及ぼす恐れがある放置空き家の中でも、特に危険度が高い物件で、市町村が認定を行います。
特定空き家の認定基準は?
- 放置すれば倒壊などの危険な状態
- 衛生上有害になる恐れがある
- 空き家が原因で周囲の景観を損なう
- 周辺の環境保全のために不適切な状態 など
管理不全空き家とは、令和5年の空き家法改正で新たに新設された区分です。所有者が適切に管理していないため劣化が進み、このままだと特定空き家になる恐れがある物件を指します。
管理不全空き家も特定空き家と同様に、行政からの指導・勧告を受ける可能性があり、勧告を受けた場合は「住宅用地の特例措置」が解除され、固定資産税などの軽減が受けられなくなります。
特定空き家や管理不全空き家は、地域の景観や安全性を損なうだけでなく、犯罪の温床になるリスクもあります。空き家の所有者は適切な管理を行い、特定空き家等に認定されないように努めるべきでしょう。
特定空き家・管理不全空き家に認定されるデメリット
特定空き家に認定されるデメリットとは?
- 固定資産税の軽減などの、税金上の優遇措置が受けられなくなる
- 行政の指導に従い必要な措置を講じる義務がある
- 50万円以下の過料が科せられる
- 行政代執行で費用が請求される
特定空き家や管理不全空き家に認定されると、数々のデメリットがあります。中でも、特例措置が受けられなくなることで固定資産税が最大6倍になるのは、大きなデメリットです。
他にも、命令違反をすると最高50万円の罰金が科せられ、行政代執行で家屋の解体が行われるとその費用も請求されることになります。
空き家を有効に活用する方法は?
空き家を所有していると、人が住んでなくても維持管理費がかかり、様々なリスクも発生します。本章では、空き家をただ所有し続けるよりも有効な、空き家の活用方法を提案していきます。
建物ごと売却する
最も費用がかからない空き家対策が、建物ごと売却する方法です。古家付きの土地として売却することで、解体費用を負担せずに空き家を手放せます。
ただし、建物内に以前使っていた家具や日用品などが残っている場合は、すべて撤去しておかなければなりません。残置物が大量にある場合は、その処分費用が高額になる場合もあるでしょう。
空き家をより高く、満足のいく形で売却するためには、不動産売買のプロによる視点も欠かせません。空き家を売却しようとお考えの際には、信頼できる不動産会社に相談してから、動き始めるとよいでしょう。
賃貸物件にする
空き家の状態が良好で、リフォーム次第で人が住める状態になるなら、賃貸物件として貸し出すのもひとつの方法です。しかし、所有者である貸主がリフォームを行う場合は、必要最低限のリフォームにしておかないと、採算が取れません。
そこで近年増えてきているのが、家賃を安く設定する代わりに賃借人にリフォームを任せる「DIY可賃貸物件」です。古い空き家をDIYでリフォームして、自分たちの好みの家にしたいという人が増えているため、人気があります。
立地や建物次第では、空き家をシェアハウスや民泊施設として活用することもできるでしょう。設備投資と法的要件を満たす必要がありますが、需要があれば大きな利益を生む物件になる可能性もあります。
更地にして売却か賃貸
老朽化した空き家を解体して更地にし、土地を売却するか駐車場などとして貸し出す方法もあります。空き家の劣化が激しく、建物と土地のセットでの売却は難しそうな時には、更地にしてしまった方が買い手が付きやすくなるでしょう。
特定空き家に指定されている空き家を解体する際には、自治体からの補助金が利用可能な場合もあります。自治体により違いますが、条件が揃えば補助される金額は30万円~60万円程度です。
詳しくは各自治体のホームページ等でご確認ください。
リスクの多い空き家は放置しないでなるべく早く売却を
本記事では空き家を放置することで発生する5つのリスクについて、詳しく解説しました。空き家を放置していても良いことはひとつもなく、最悪の場合死亡事故につながる危険性もあります。
空き家法の改正で、空き家所有者はさらに厳しく管理責任が問われることになりました。空き家は適切な管理を行っていれば、異常にいち早く気付くことができ、特定空き家や管理不全空き家に認定されることは避けられます。
特定空き家に至らない状況でも、空き家を持ち続けるには維持管理費もかかりますし、時間の経過とともに老朽化も進むでしょう。自分や家族・地域を守るためにも、空き家を放置するリスクを正しく理解し、老朽化や損傷が進む前に売却などの行動を取ることが大切です。
自分で対処するのが難しいと感じた時は、不動産会社にご相談ください。