相続税軽減のための取得費加算の特例について

「相続税軽減のための取得費加算の特例を分かりやすく解説」の見出し画像

不動産を相続した方々にとって、その後の売却を検討する際に、所得税をいかに軽減できるかは大きな関心事です。ここでは、所得税軽減の有効な手段として「取得費加算の特例」に焦点を当て、その内容と利用方法について詳しく解説します。

目次

取得費加算の特例とは

取得費加算の特例は、相続によって得た不動産(家や土地など)を売却した際、得られる利益にかかる所得税を減らすことができる制度です。通常、不動産を売却するときには、売却価格からその不動産を購入した際の費用や売却に伴う諸経費を差し引いた金額が利益として計算されます。

この利益には所得税が課されるのですが、取得費加算の特例を活用することで、相続時に支払った相続税の一部を購入費用に加算することが可能になります。その結果、売却による利益が減少し、支払う所得税の額も少なくなるというわけです。

取得費加算の特例の計算例

取得費に加えることができる相続税額の計算方法を、具体的な例を使って説明します。

想定する状況は、ある人が亡くなって、残された遺産が合計1億円あるとします。この遺産は、現金が5,000万円と不動産が5,000万円から成り立っています。この遺産を相続するのは子ども1人です。そして、この子どもにかかる相続税が1,220万円、相続する不動産の価値(相続税評価額)が5,000万円だとします。

この場合、不動産を売った時に、その売却利益にどれだけの相続税額を加えられるかを計算すると、まず相続税の1,220万円を基にします。次に、売った不動産の価値が全体の遺産の中でどれくらいの割合を占めているかを考えます。この例では、不動産は全遺産の半分、つまり5,000万円です。そこで、相続税1,220万円にこの割合を掛け合わせて、どれだけの税額を不動産の取得費に加えられるかを計算します。

取得費に加算できる相続税額の一部=財産を売却する相続人の相続納税額×譲渡した財産の相続税評価額/(相続人の課税価格+相続人の債務控除)

具体的には、1,220万円(相続税額)× 5,000万円(不動産の価値)÷ 1億円(全遺産の価値)で、610万円が不動産の取得費に加えられる相続税額となります。

簡単に言うと、相続した不動産を売る時に、その売却価格から相続税として既に支払った金額の一部(この例では610万円)を差し引けるため、最終的に支払う税金が少なくなるというわけです。

取得費加算の特例の適用要件

取得費加算の特例を利用するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 相続または遺贈によって財産を取得していること。
  2. 相続税が課され、納税していること。
  3. 相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること。

これらの要件を理解し、適切に準備することで、特例の利用が可能になります。

特例利用時の注意点

取得費加算の特例を使う時、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

遺産分割協議のタイミング

まず、大切なのは遺産分割協議を相続税の申告期限内に終わらせることです。相続が起きた後、誰がどの財産を受け取るかを決めるこの協議が遅れてしまうと、特例を利用する機会を失ってしまう可能性があります。時間内に協議を完了させることで、スムーズに特例の適用を受けられるようになります。

売却する不動産の選択

次に、もし相続で複数の不動産を手に入れた場合、どの不動産を先に売るかを考える必要があります。税金を少しでも減らすためには、節税効果が高いと思われる不動産から売却する方が良いでしょう。これは、各不動産が売却時にどれだけの税金の軽減に貢献できるかを見極め、最も効果的な順番で売っていくことを意味します。

代償分割の選択についての検討

そして、代償分割という選択肢については慎重に考えるべきです。代償分割は、相続人の中で不動産を取得する人が他の相続人に対して、その不動産の価値に相当するお金や他の財産を渡す方法です。この方法を取ると、取得費加算を計算する際に不利な条件が生じることがあります。つまり、特例を最大限利用するための計算で、想定していたよりも少ない節税効果しか得られない可能性があるのです。

確定申告と専門家の相談の必要性

取得費加算の特例をうまく活用するためには、確定申告が必須ですが、その手続きは一見すると複雑に感じられるかもしれません。実際に、どのような手続きをどのように進めればよいのか、何の書類を用意すべきかについては、多くの人が戸惑うことでしょう。書類の準備に不備があれば、手続きのやり直しが必要になり、時間と労力の無駄につながるだけでなく、最悪の場合、確定申告の期限に間に合わず、特例の適用を受けられなくなる可能性もあります。

そのため、取得費加算の特例を確実に利用するためには、不動産の売却を仲介してくれる不動産会社や税理士などの専門家に相談することが重要です。専門家のサポートを受けることで、確定申告のプロセスをスムーズに進めることができ、時間と労力を節約できるだけでなく、特例の適用を確実に受けることができます。

まとめ

相続した不動産を持っているが、そのままにしておくと管理が大変だったり、必要なくなった場合には売却して現金化するのが一般的です。特に、売却によって利益が出た場合、その利益にかかる所得税をできるだけ減らしたいと考える人は多いでしょう。

この記事では、そんな時に役立つ取得費加算の特例について詳しく説明しています。相続した不動産の売却を考えている方は、この特例の内容をしっかりと把握しておくことで、不必要な税金を支払うことなく、売却手続きを進めることができます。

売買事業部岩富係長

この記事を監修した人

後楽不動産 売買事業部係長 岩富

長年の不動産売買経験と宅建士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ。豊富な知識と実績で、不動産売買に関するサポートを行う。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次