冬の空き家で水道管が破裂する原因と対策|管理を続けるか売却かの判断ポイントも解説

冬の空き家には、水道管の凍結や破裂といった深刻なトラブルが潜んでいます。誰も住んでいないからこそ気づくのが遅れ、気づいたときには高額な水道料金や修繕費が発生していた…というケースは珍しくありません。さらに水漏れが建物内部にまで影響すると、腐食・カビ・シロアリ被害など、資産価値を大きく下げる要因につながります。
本記事では、冬の空き家に潜むリスクと、凍結・破裂を防ぐための基本対策、そして「管理を続けるか」「売却すべきか」を判断するためのポイントを分かりやすく解説します。「まだ大丈夫」と後回しにしがちな方こそ、ぜひ一度目を通してみてください。
なぜ冬の空き家は危険なのか

冬の空き家で最も多いトラブルが、水道管の凍結・破裂です。気温が氷点下になると、水道管の中に残っている水が凍り、膨張によって管が破損します。居住中の住宅であれば、ちょっとした凍結でもすぐに気づけますが、空き家では発見が遅れることがほとんどです。
破裂した状態が数日〜数週間も放置されれば、床下浸水、外壁裏の水濡れ、断熱材の劣化など、建物全体へ被害が広がる可能性があります。さらに、後になって届く水道料金で“異常な請求額”ではじめて破裂を知る…というケースも少なくありません。冬の1〜2ヶ月の放置だけでも、建物内部の劣化は確実に進行するのです。
水道管破裂がもたらす深刻な被害

水道管の破裂は、単なる「水漏れ」では収まりません。特に空き家では発見が遅れやすく、その間に被害が広がり、経済的・構造的なダメージが一気に大きくなるのが特徴です。ここでは、破裂によって起こり得る代表的な被害を整理して解説します。
1. 高額な水道料金の発生
空き家で水道管が破裂すると、誰も気づかないまま水が流れ続け、水道メーターも止まらずに回り続けます。数日〜数週間放置されると、水道料金が数万円〜十数万円に達することもあります。例えば、1時間に10Lの水が漏れ続ければ、1週間で1,680Lもの水が無駄になります。「使っていない家なのに…」という高額請求書で初めて破裂に気づくケースも多く、発見が遅れるほど被害は大きく膨らみます。
2. 地中・床下の配管修理費が高額化
破裂場所が床下や地中など見えない場所の場合、修理には大がかりな工事が必要になります。室内であればフローリングを剥がし、屋外ならコンクリートの掘削が必要など、通常の配管修理に加えて解体・復旧費用が増え、10〜20万円を超えることも珍しくありません。さらに、漏水した状態が長く続くと、木材の腐食や断熱材のカビ、シロアリ被害など二次被害が広がり、「配管修理」だけでは済まなくなるリスクがあります。
3. 外壁・内装・床下への水害
破裂した水が外壁や床下に染み続けると、建物内部の構造材に深刻なダメージを与えます。空き家では気づくまでに時間がかかるため、以下のような劣化が静かに進行します。
・柱や土台が水分を含み、腐食・変形が起こる
・断熱材が濡れて性能低下やカビの原因に
・クロスの裏側や壁内部で劣化が進む
・床下が湿気を帯び、シロアリのリスクが高まる
木造住宅では外観からは問題が見えなくても、サイディングの裏側で劣化が進んでいることが多く、気づいた時には「外壁の全面張り替え」が必要になるケースもあります。
4. 給湯器・ボイラーの故障
破裂した水が屋外の給湯器やボイラーにかかると、機器内部に水が侵入し故障の原因になります。
・基板や配線のショート
・熱交換器の腐食
・通気口や点火装置の濡れによる安全装置の作動
といった不具合が起こり、修理では対応できず本体交換が必要になることも多く、費用は10万〜20万円以上になる可能性があります。空き家では湿気がこもった状態で放置され、再起動できないほど劣化が進むケースもあります。
5. 建物全体の価値の低下
水道管破裂によるダメージは、建物の資産価値に大きな影響を与えます。
・床下や柱の腐食など、外観では見えない劣化が進む
・断熱材や壁内部のカビで住宅性能が低下
・水害歴が判明し査定額が大幅に下がる
また「過去に水道管が破裂した家」という事実だけで購入希望者が敬遠し、売却が難しくなることもあります。売買契約後に隠れた損傷が見つかった場合、「契約不適合責任」(旧:瑕疵担保責任)を問われ、修繕費を請求される可能性もあり、所有者にとっては大きなリスクです。
外観がきれいでも、内部に水害歴があるだけで価値が大きく下がる。これが空き家の水道トラブルが「見えにくいのに重いリスク」と言われる理由です。
水道管破裂を防ぐためにできる3つの基本対策

水道管の破裂は突然起きるように見えますが、実は多くの場合、事前の準備やちょっとした工夫で防ぐことができます。特に空き家は人が出入りしない期間が長いため、小さな凍結がそのまま大きな被害に発展しやすい点が特徴です。ここでは、空き家を守るためにぜひ押さえておきたい3つの基本対策について、できるだけ具体的に解説していきます。
1. 水抜き作業を確実に行う
最も重要な対策と言えるのが「水抜き」です。これは、水道管の中に残った水を完全に抜いてしまうことで、氷点下になっても水が凍らず、膨張による破裂を防ぐ方法です。作業の流れとしては、まず元栓をしっかりと閉め、その後家の中にあるすべての蛇口を開いて、水が出なくなるまで放出します。
トイレのタンクや洗濯機の蛇口などは見落としやすい部分ですが、ここに水が残っていると凍結の原因になるため忘れずに開放しておくことが大切です。特に気温の低い地域では、数日家を空けるだけでも凍結する可能性があるため、冬に空き家を放置する際には必ず行いたい基本対策です。
2. 水道管に保温カバーを設置する
外気にさらされている水道管は、室内よりもはるかに凍結しやすくなります。外壁沿いの配管や屋外メーター周辺などは冷え込みの影響を直接受けるため、断熱材入りの保温カバーや専用の保温テープで覆うことで、凍結リスクを大きく下げることができます。
最近では、ホームセンターだけでなく100円ショップでも簡易的な保温材が手に入るため、費用を抑えながらしっかりと対策を行うことができます。一度巻いておけば冬の間ずっと効果が続くため、比較的手間のかからない対策として非常に有効です。
3. 定期的に「通水チェック」を行う
空き家のまま放置していると、配管の中で水が動かない状態が長期間続くことになります。この状態は凍結を招きやすいため、冬場はときどき現地へ足を運び、蛇口を開けて数分間水がスムーズに出るかどうか確認することが欠かせません。屋外の水栓やトイレなど、特に冷え込みやすい場所もあわせてチェックしておくと安心です。
もし「水の出が弱い」「変な音がする」といった違和感があれば、すでに配管の内部で凍結が始まっている可能性があります。ほんの数分水を流すだけでも、凍結による破裂リスクは大きく減らすことができるため、定期的な通水は非常に効果的な保全方法です。
それでも破裂した場合、どう対応すべきか

どれだけ事前に備えていても、自然の力や予期せぬ劣化によって、水道管が破裂してしまうことはあります。その際に最も重要なのは、冷静に、正しい手順で、素早く対応することです。
被害の拡大を防ぐために、以下のステップを押さえておきましょう。
1. 速やかに元栓を止める
破裂に気づいたら、まず最初にやるべきことは、家全体の水の供給を止めることです。建物内や屋外に設置されている「止水栓(元栓)」を閉めることで、これ以上の漏水を防ぐことができます。とくに空き家では、発見が遅れた分だけ水が出続けている可能性が高いため、一刻も早い止水が被害拡大を食い止める鍵になります。
2. 信頼できる修理業者へ即連絡
止水後は、専門の水道修理業者にすぐ連絡を入れましょう。破損の程度によっては、簡単な補修で済む場合もありますが、地中管や床下の損傷となると専門機器と技術が必要になります。事前に「緊急時に依頼できる業者」をリストアップしておくと、慌てずに行動できます。
3. 応急処置を施す
業者が到着するまでに時間がかかる場合、漏れ箇所にタオルを巻く、防水テープを貼るなどの応急処置を行うことで、被害を最小限に抑えることができます。ただし、応急処置はあくまで一時的な対応です。必ず専門家による正式な修理を行うことが前提です。
4. 水道局へ報告し、減免制度を確認
多くの自治体では、破裂など不可抗力による水道料金の増加に対して、減免や救済措置が用意されています。破裂が確認できたら、なるべく早く自治体の水道局や指定窓口に連絡し、該当する制度がないか確認しましょう。申請にあたっては、「修理業者の報告書」や「写真記録」が必要になることもありますので、現場の状況はできるだけ記録を残すようにしてください。
管理を続けるべきか、売却を検討すべきか

空き家を持つ方にとって、「このまま維持すべきか、それとも売却すべきか」という悩みは避けて通れません。特に冬場は凍結や劣化のリスクが高まるため、その判断がより難しくなります。ここでは、それぞれの選択がどんな人に向いているのか、また判断する際に押さえておきたいポイントを整理してお伝えします。
管理を続けるという選択肢
◆将来的な活用を考えている場合は「維持」が有効
空き家を将来活用する可能性がある方や、地域とのつながりを大切にしたい方にとって、「管理を続ける」という判断はとても現実的です。実家への思い入れが強い、ゆくゆく自分が住む予定がある、あるいは子どもが利用するかもしれない——こうした状況であれば、今のうちから定期的な点検や掃除を続けることで余計な修繕費を防ぎ、資産価値を保ちやすくなります。外壁や屋根の状態を確認し、給湯器や水道設備を使える状態で維持しておくだけでも、将来のリフォーム費用を大きく抑えられます。
◆通いやすい環境なら「予防管理」がしやすい
空き家が自宅から通える距離にあり、定期的に様子を見られる環境であれば、トラブルを早く発見できる点も大きなメリットです。通水作業や換気、敷地内の清掃、ポストの確認といった基本的な管理を続けることで、突然の破損や修繕が必要になるリスクを大幅に下げられます。状態が良く保たれていれば、「住む・貸す・売る」といった多様な選択肢を将来に残しておけるのも重要なポイントです。
◆家族の思い入れを大切にしたい場合
空き家の中には、資産である以上に「思い出の詰まった場所」としての価値を持つものもあります。子どもの頃の記憶が残る家や、親が大切に維持してきた家を手放したくないという思いは、金額では測れない大切な理由です。このような場合、定期的な点検や清掃を習慣化することで、いつでも活用できる状態を保ちながら、家族の思いを未来に大切に引き継ぐことができます。
◆冬の凍結対策を徹底することでリスクを抑える
管理を続けるのであれば、水道契約を残しつつ、水抜きや保温カバーの設置など、冬の凍結対策をしっかり行うことが不可欠です。こうした対策を徹底しておけば、水道管破裂のような大きなトラブルを未然に防ぎ、劣化の進行を最小限に抑えられます。結果として、建物の状態を維持しながら、資産価値を保ったまま次の世代へ引き継ぐことも可能になります。
売却を検討したほうがよいケース
◆管理が追いつかず「放置状態」が続いている場合
空き家を所有し続けるには、一定の管理と維持費がかかります。もし数カ月以上見に行けていない、気にはしているのに足が向かないという状態が続いているのであれば、すでに管理が追いついていない可能性があります。忙しさや距離の問題で放置が続けば、水道管の凍結や破裂、雑草の繁茂、ポストのチラシ放置、室内のカビや湿気など、気づかないうちにトラブルが進行していきます。表面上は問題がなくても、管理不足が続くと資産価値は確実に下がり、気づいたときには“売れない物件”に変わってしまうケースも珍しくありません。
◆築年数が進み、修繕費が増え続けている場合
築30年以上の空き家では、外壁や給湯器といった目に見える設備だけでなく、床下、断熱材、屋根、電気設備など“隠れた部分”の老朽化が同時に進行しています。「毎年どこかが壊れる」「終わりの見えない修繕が続く」という状況は、多くの場合すでに建物の寿命が近いサインです。維持費が増え続ける中で無理に持ち続けるより、劣化が深刻になる前に売却したほうが、結果的に負担を抑えられるケースは非常に多いと言えます。
◆将来的に活用する予定がなく、維持メリットが薄い場合
「住む予定もないし、貸すにもリフォーム費用がかけられない」
「とりあえず持っているけれど、具体的な活用計画がない」
このような状況では、空き家を所有するメリットより、固定資産税・管理コスト・老朽化リスクといったデメリットのほうが大きくなりがちです。利用予定がないまま所有を続けても資産価値は下がる一方で、売却して現金化すれば教育資金、生活費、老後費用などに充てられるメリットが生まれます。使わない空き家を「今の自分に必要な資産」に変える選択とも言えます。
◆地域の需要が低下し、地価が下がり始めている場合
周辺に空き家が増えて治安や景観が悪化している、地域の人口が減って住宅需要が落ちている——こうした状況下では、売却価格は時間とともに下がる傾向があります。築30年、40年を超えると建物の評価はほぼゼロになり、「土地のみの価値」と判断されるケースも増えてきます。さらに老朽化が進めば、修繕費への不安から買い手がつきにくくなり、交渉が難航する可能性も高まります。市場が弱まっているエリアでは、「売れるうちに売る」という判断が、結果的にもっとも損をしない選択になることが少なくありません。
◆「今はまだ売れる」と感じるなら、早めの判断が後悔を防ぐ
空き家の資産価値は、時間の経過とともに確実に下がっていきます。
「今なら売れるけれど、この先は分からない」
そんな不安が少しでもあるなら、市場価値が残っているうちに売却を進めることで、後悔の少ない選択ができます。売却は“決断のタイミング”が非常に重要であり、劣化が進む前に動くほうが、結果として手元に残る資金も多くなる傾向があります。
判断に迷ったときは「資産」として冷静に見直してみましょう

空き家には、家族の歴史や思い出が詰まっています。「実家だから」「親が大切にしていた家だから」と簡単には手放せないのは、ごく自然なことです。しかし、誰も住まず管理が行き届かない期間が続くと、建物は確実に傷み、外壁のひび割れや水道管の破裂、屋根からの雨漏りといった劣化が一気に進行します。こうした状態になると、市場価値は大幅に下がり、本来は売れるはずだった家が“修繕が必要な物件”として敬遠されてしまうケースも少なくありません。
だからこそ迷いがあるときほど、一度立ち止まって「この家を資産としてどう扱うべきか?」という視点で見直すことが大切です。感情を大切にしながらも、維持にかかるコストや今後の活用予定、老朽化の進み具合などを整理することで、現実的に取るべき選択が見えやすくなります。空き家と向き合う際は、思い出と資産価値の両面をバランスよく捉えることが、後悔しない判断につながるのです。
まとめ
冬の空き家には、水道管の凍結・破裂をはじめ、目に見えないトラブルが潜んでいます。修理費や水道料金の負担が増えるだけでなく、建物内部の腐食やカビなど、資産価値そのものを大きく損なう可能性もあります。
本記事では、冬に起こりやすい空き家トラブルの具体例から、凍結を防ぐための基本対策、そして「管理を続けるべきか」「売却を考えるべきか」を判断するための視点までを詳しく解説しました。
空き家の扱い方に“正解”はありません。思い出を守りたい人もいれば、負担が増える前に整理したい人もいます。しかしどの選択をするにしても、まずは家の現状を把握し、リスクを理解し、早めに行動することがもっとも大切です。
空き家を“負担”ではなく“未来につながる資産”として活かすために、できるところから一歩踏み出してみませんか?



