専任媒介契約とは?メリット・デメリットも併せて解説
不動産を売る際には、その過程をスムーズに進めるため、そして最適な条件で取引を行うために、不動産会社と結ぶ「媒介契約」が欠かせません。媒介契約は、売却活動を不動産会社に委託することを正式に取り決めるもので、どの不動産会社を選ぶか、そしてどのような条件で売却を依頼するかという重要な点を定めます。売却を検討する多くの人が、その選択肢として「専任媒介契約」やさらに専門性の高い「専属専任媒介契約」を考えることがあります。
実際には、多くの売却者が不動産会社の提案に基づき、これらの契約形態を選択していますが、その背景にあるメリットやデメリットを十分に理解しているわけではないことが少なくありません。このため、専任媒介契約を深く理解し、それが売却者自身のニーズにどのように合致するかを明らかにすることが、賢明な売却戦略を立てる上で非常に重要となります。
この記事では、売却活動を円滑に進めるキーとなる「専任媒介契約」に焦点を当て、この契約形態が持つ特性や、どのタイプの売主にとって最適な選択肢となるのかについて、詳細に解説していきます。
目次
専任媒介契約とは
専任媒介契約は、不動産売却の活動を一つの不動産会社に限定して委ねる契約形式です。
専任媒介契約の特徴を見ていきましょう。
- 一社限定: 専任媒介契約を結んだ不動産会社のみが売却活動を行います。これにより、コミュニケーションや管理が一本化され、効率的な売却プロセスを期待できます。
- 自己発見取引が可能: 売主自身が買主を見つけた場合、専任媒介契約では、直接買主と取引を行うことができます。
- 契約期間: 契約の期間は最長3ヶ月と定められており、期間内に売却が完了しない場合は更新することが可能です。
- レインズ登録義務: 不動産会社は契約から7日以内に物件をレインズ(不動産業者間で物件情報を共有するシステム)に登録する必要があります。
- 定期的な報告: 売主に対して、不動産会社は2週に1回以上の販売活動報告を行う義務があります。これにより、売却進捗の透明性が保たれます。
専任媒介媒介契約のメリット
まずは専任媒介のメリットをお伝えします。専任媒介契約を結ぶことで、追加費用なしで、または特別な優遇価格で提供されることが多いです。そのため、専任媒介契約は、売却プロセスをスムーズに進めるだけでなく、物件の価値を高め、売却条件を改善するための有効な手段となるのです。
取引の窓口が一元化される
専任媒介契約を選ぶ最大の利点は、売却過程におけるコミュニケーションの簡素化にあります。具体的には、売却に際して生じる疑問や不安、さらには買い手からの問い合わせや交渉ごとを、一つの不動産会社が一手に引き受けます。
例えば、市場動向の解説、価格設定の相談、見学の調整、契約書の作成といった、売却プロセスに必要なあらゆる段階で、同じ担当者がサポートしてくれるのです。これは、複数の不動産会社を使い分ける場合に比べて、売主が負担する心理的・時間的コストを大幅に軽減できるという意味で、非常に大きなメリットと言えます。
特典の利用が可能になる
専任媒介契約のもう一つの魅力は、不動産会社が提供する特典の利用可能性です。これらの特典は、物件を売却する上で大きなアドバンテージとなり得ます。瑕疵保証サービスは、購入後に発見された隠れた欠陥に対して、一定期間内ならば修理費用を保証してくれるサービスです。これは、買い手にとって大きな安心材料となり、売却時の交渉で有利に働くことが期待できます。
買取保証サービスは、一定期間内に物件が売れない場合に、あらかじめ定められた価格で不動産会社が買い取るというものです。これにより、売主は最悪のケースにおいても確実に物件を手放すことができるという保証を得られます。
ハウスクリーニングやホームステージングは、物件を見学に訪れる予定の買い手に対して、より良い印象を与えるためのサービスです。ハウスクリーニングによって物件を隅々まで清潔にし、ホームステージングで家具や装飾を配置して物件の魅力を最大限に引き出すことができます。これらのサービスは、物件の売却価格を高める可能性があるだけでなく、売却までの時間を短縮する効果も期待できるため、売主にとって大きなメリットとなります。
専任媒介媒介契約のデメリット
次に専任媒介のデメリットについて、お伝えしていきます。
成功の可否が選んだ会社に依存する
専任媒介契約を結ぶ際、売却の成否は選択した不動産会社、そしてその中の一人の担当者の手腕に大きく委ねられます。この点がリスクとなるのは、担当者の経験、市場に対する洞察力、販売戦略の質、そして買い手との交渉能力に売却成果が左右されるためです。もし担当者が新人であったり、地域の市場動向に精通していなかったり、適切な販売戦略を立案できない場合、物件は適正価格で売れず、また売却までの時間が不必要に長引く可能性があります。さらに、売主と担当者とのコミュニケーションがうまくいかない場合、売主の要望が十分に反映されないまま売却活動が進められることもあり得ます。
契約の切り替えに時間がかかる
専任媒介契約には通常、3ヶ月間の固定期間が設定されており、この間は他の不動産会社への切り替えが制約されます。この制約は、売却活動において非常に大きなデメリットとなります。
例えば、担当する不動産会社が積極的な販売活動を行わない、効果的な広告を出さない、適切な買い手を見つけられないなどの問題が発生した場合でも、売主は契約期間が終了するまで待たなければならず、その間に市場環境が変化し、物件の価値が下落する可能性もあります。また、別の会社がより良い販売戦略やサービスを提案しても、すぐに乗り換えることができないため、最適な売却機会を逃すリスクがあります。
物件の囲い込みリスク
専任媒介契約における物件の囲い込みは、不動産会社が自社の利益を最優先し、物件情報を他社と共有しないことで、自社の顧客だけに販売しようとする行為です。この結果、物件は市場に十分に露出されず、可能性のある最適な買い手に届かないことがあります。
囲い込みが行われると、物件の売却プロセスが不必要に長引くだけでなく、最終的には売却価格が下がる可能性もあります。また、買い手が限定されることで、売主が望む条件での取引が難しくなることも考えられます。さらに、囲い込みは不動産業界全体の信頼性を損なう行為であり、長期的には売主・買主双方にとって不利益をもたらす可能性があります。
専任媒介契約がおすすめの人
不動産の売却プロセスにおいて、専任媒介契約は、特定の目標や条件を持つ売却者にとって非常に魅力的な選択肢となり得ます。この契約形態は、特に以下のような売却者に最適です。
高価格での売却を目指す人
市場価格以上での売却を目指し、明確な価格目標を持っている人にとって、専任媒介契約は有効です。相場を超える価格設定は、売却スピードを犠牲にする可能性がありますが、選んだ不動産会社がその目標達成に向けて積極的な販売戦略を立て、特別な努力を払うことが期待されます。
総合的なサポートを求める人
住み替えや離婚、相続など、売却以外の複雑なプロセスを伴うケースでは、専任媒介契約が提供する総合的なサポートが大きなメリットになります。この契約により、不動産会社は売却活動だけでなく、新居の購入支援や法的手続きのアドバイスなど、一連のサービスを一貫して提供することが可能になります。
市場での売却が難しい不動産を持つ人
立地条件が不利であったり、築年数が多いなど、市場での売却が難しい不動産を持つ人にとっても、専任媒介契約は有効な解決策となります。一般媒介契約ではなかなか注目されないこれらの物件も、専任契約を結ぶことで、不動産会社が売却に向けた特別な取り組みをしてくれることが期待できます。
結論
専任媒介契約は、不動産売却プロセスを効率化し、売却活動における不動産会社の全力のサポートを期待できる魅力的な選択肢です。この契約形態を選ぶことで、売主は特定の不動産会社から集中的な販売戦略や特別なサービスを受けられる可能性があります。
しかし、その一方で、専任媒介契約は売却活動を一社に限定することから生じるデメリットも考慮する必要があります。特に、選択した不動産会社の能力に売却成果が大きく左右される点、契約期間中の柔軟な変更が難しいこと、そして物件が市場に十分露出されないことによる囲い込みのリスクが挙げられます。
売却を成功させるためには、不動産会社の提案に単純に従うのではなく、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約といった各媒介契約の特徴を理解し、自身の状況や不動産の特性に最も適した契約形態を選択することが重要です。最終的には、売主自身の判断で、目的に合った契約を選ぶことが、望む売却結果を得るためのカギとなります。
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この記事を監修した人
後楽不動産 売買事業部 岩富
長年の不動産売買経験と宅建士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ。豊富な知識と実績で、不動産売買に関するサポートを行う。