不動産売却をキャンセルする方法と注意点

不動産売却をキャンセルする方法と注意点

不動産を売却したいと思って不動産会社に依頼していたものの、途中で「売るのをやめたい」と思う可能性もないとは言えません。また、買主が見つかり売買契約を結んでしまった後で予想外の事態が起こり、手続きをキャンセルするというケースもあります。

不動産売却をキャンセルする際には、タイミングによって違約金が発生する可能性もあるので注意が必要です。場合によっては違約金が数百万にもなることがあり、キャンセルの方法や注意点を知っておくことで、損害を回避できることもあります。

本記事では、不動産売却の流れをおさらいし、キャンセルのタイミングや方法、注意点などについて解説していきます。

目次

不動産売却を途中でキャンセルすることは可能?

そもそも、不動産売却を途中でキャンセルすることは可能なのでしょうか?結論から申し上げますと、不動産売却の途中キャンセルは可能、しかし契約の種類や進行状況によって違約金が発生する場合があるんです。

不動産売却をキャンセルする場合は、タイミングを意識してキャンセルしないと大きな損をしてしまう場合もあります。本記事では、不動産売却を途中でキャンセルする流れや、注意点などについて解説していきます。

不動産売却をキャンセルする理由

不動産売却をキャンセルしたいと思う理由は人それぞれです。本章では、不動産売却をキャンセルするときによくある理由を4つ紹介していきます。

買主の信用問題・価格の不満

売主側に問題はなくても、買主の信用問題で不動産売却が途中でキャンセルになる場合があります。買主の金融機関や信販会社などからの経済的な信用が不足していると、住宅ローンの審査に通らない可能性があり、売却が進められません。

また、査定額が思ったより低かったときや、買主側から大幅な値下げ交渉があり、希望していた売却価格よりも低い金額になってしまうため売却をキャンセルすることもあります。

経済状況の影響とタイミング

不動産売却をなるべく損をしないように進めるためには、景気や不動産市場の動向をよく見極めてベストなタイミングで売却活動を行いたいものです。売却活動の最中に経済状況に大きな変化があった場合は、一旦売却を見送るという選択をする場合もあるでしょう。

ライフスタイルの変化

転勤のために自宅を売却予定だったが、単身赴任することになり売却の必要がなくなったというパターンもキャンセルの理由としてよくあります。結婚や離婚、転勤など大きなライフスタイルの変化があると、売却の予定を変更せざるを得ない場合もあるでしょう

住み替えを考えていたが、次に住む家がなかなか見つからないという理由で売却を中断する場合もあります。

物件の状態

中古住宅を売却後に白アリ被害や設備の故障などの欠陥が見つかった場合、売主が一定期間対応する責任のことを「契約不適合責任」と言います。買主との間でトラブルに発展する可能性があるため、物件の状態が良くないことに気付いたら、売却活動中であっても一旦キャンセルしたほうがよいでしょう

一般的な不動産売却の流れを解説

不動産売却の流れ

不動産売却のキャンセルについて解説する前に、まずは一般的な不動産売却の流れについて確認しておきましょう

売却の相談・査定

自宅から近い不動産会社に連絡して、不動産売却について相談したいと伝えます。不動産会社とは今後長く付き合うことになるので、店舗の雰囲気や担当者の対応もよくチェックしておきましょう

事前に「登記簿謄本または登記事項証明書」「売買契約書」「物件購入時の重要事項説明書」などの必要な書類を準備しておくとスムーズです

相談と同時に、不動産会社が売却予定物件の査定を行います。査定価格は不動産会社によって差がありますので、数社を回って査定額を見比べてみることをおすすめします

媒介契約の締結

不動産会社の対応が問題なく査定額にも満足できたら、売主と不動産会社との間で媒介契約の締結を行います。媒介契約は「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類です。

売却する物件の状態や立地、売却する理由、自身が売却活動にどの程度関われるかなどによって、有利な契約が変わってきます。不動産会社と相談しながら、媒介契約の種類を選びましょう。

売却活動

媒介契約を締結すると、不動産会社主体で売却活動が始まります。売り出し価格を決め、不動産会社による販促活動が行われるので、購入希望者が現れるのを待ちましょう。

不動産会社は広告やインターネットでの販促活動や、近辺の住宅を探している人に直接声をかけるなどして、購入希望者を探します。購入希望者は、内覧や値引き交渉などを経て不動産会社に購入を申し込み、買主が決まります。

売買契約の締結

買主が決定すると、不動産会社が買主側の住宅ローン審査と売却物件の調査を行い、問題なければ不動産売買契約へと進みます。実印・認印・身分証明書・登記済権利証・印鑑証明書・収入印紙が不動産売買契約締結の際には必要です。

決済・引き渡し

売買契約が締結されたら、後日決済と引き渡しを行います。決済と引き渡しが終了すると、不動産会社の役目は一旦完了となります。

不動産売却のキャンセル方法とは

本章では、不動産売却のキャンセル方法について詳しく解説していきます。不動産売却におけるキャンセルは、売買契約締結前と後では違反金や法的効力の有無などで違いがあります。

キャンセルするタイミングによって、数万円から数百万円の支払いが必要な場合があるため、どのタイミングでキャンセルするかは非常に重要なポイントです。本章では、売買契約締結前の媒介契約中でのキャンセルの場合と、締結後のキャンセルの場合をそれぞれ解説していきます。

一般媒介契約の場合

一般媒介契約は複数の不動産会社と契約が結べて、自分で購入希望者を探すことも可能な、自由度が高い契約です。自ら購入希望者を見つけた場合は、不動産会社を通さず売買契約を結べます。

一般媒介契約には、契約期間の定めはありません。そのため、一般媒介契約で途中で売却をやめたいとなったとき、売主側はいつでも媒介契約を解約できます

不動産売却をキャンセルしたいと思ったタイミングで、不動産会社に連絡しましょう。

専属専任媒介契約・専任媒介契約の場合

専属専任媒介契約と専任媒介契約は、契約が結べる不動産会社が1社のみです。一般媒介契約にはない売主への進捗報告義務があり、より熱心な売却活動が期待できます。

専属専任媒介契約と専任媒介契約では、売主の都合で契約期間中の解約をする場合には、違約金の支払いが発生する可能性があります

違約金の上限は、「売却価格×3%+6万円+消費税」が一般的です。更新のタイミングまで待ってから契約を解除すれば違約金はかからないので、なるべく契約更新のときに解約するとよいでしょう。

売買契約締結直後の場合

やむを得ない事情があって不動産売却をキャンセルしたい場合、不動産売買契約後でもキャンセルは可能です。契約締結直後のキャンセルならば、手付金を倍返しで売却のキャンセルができます

手付金は、通常物件価格の5%〜10%程度で設定されます。たとえば物件価格が4,000万円ならば手付金10%だと400万円なので、倍返しとなると800万円です。

引き渡し準備中(契約の履行に着手した状態)の場合

すでに売買契約を結んでいて、買主が引き渡しの準備を進めている中でのキャンセルだと、倍返しでのキャンセルはできません。引き渡し準備に入ったことを法律的には「契約の履行に着手」したと表現します。

契約の履行に着手したかどうかの基準は判例によっても異なるため、一概には言えません。例としては

  • 買主が内金として中間金を支払った
  • 買主が新居の引越しのために業者へ依頼した
  • 買主が新居に置く家具を購入した

などがあります。買主が契約の履行に着手後のキャンセルには、違約金が発生します

違約金の金額は、不動産売買契約書に記載されています。記載がない場合でも、契約解除に対して損害賠償を行うのが通常で、損害賠償額は売却価格の1~2割程度が相場です。

不動産売却キャンセルの注意点

不動産の売却をキャンセルする場合、タイミングや契約方法などで損をすることもあります。なるべく損をしないでキャンセルを行うために、知っておいたほうがよい項目を注意点としてまとめています。

不動産売却を考えている人は、万が一のケースに備えて頭に入れておいてください。

専任媒介・専属専任媒介契約中にキャンセルしても違約金が発生しないケース

通常専任媒介契約期間の最長3か月以内に売主側から契約の解除を申し出た場合は、売却活動にかかった費用を請求される可能性があります。ただし、以下に該当する場合は違約金なしでいつでも売主が契約を解除できます。

第 16条 次のいずれかに該当する場合においては、甲は、専任媒介契約を解除することができます。

一 乙が専任媒介契約に係る業務について信義を旨とし誠実に遂行する義務に違反したとき。
二 乙が専任媒介契約に係る重要な事項について故意若しくは重過失により事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしたとき。
三 乙が宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をしたとき。

(引用:宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款 | 国土交通省

不動産会社が業務を誠実に遂行しない場合、契約解除が可能です。具体的には、「業務の進捗状況を売主に報告しない」「レインズへの登録をしていない」「積極的な営業活動を行っていない」などの場合があります。

不動産会社への契約解除の申し出は電話でもできます。解除の際に「契約解除通知書」を内容証明郵便で送付すると、受け取りの証明ができるので確実です。

売主と買主の合意での契約解除の場合

不動産の売買契約が締結した後でも、売主と買主双方が合意の上で売買契約の解除を行う場合があります。合意解除とも呼ばれ、婚約破棄で新居が不要になった、家を買った後に家族の反対にあったなど、予想外のことが起こり契約を白紙に戻したいという場合に起こるケースです。

手付金の返還なども売主と買主の間で話し合って決めることになります。後々トラブルにならないように、合意解除が成立したら書面にて内容を残しておきましょう

合意解除の場合も、売主から買主へ移った不動産の所有権は売主が再取得した扱いになるため、売主に所得税が課される可能性があります

トラブルを避けるための対策

不動産売買の際には、売主も買主もスムーズな取引完了をのぞんでいます。ですが、予想外の事態で売買契約をキャンセルせざるを得ない状況になる場合もあります。

キャンセルとなると、違約金の発生や責任問題でトラブルになることもあり得ます。トラブルを避けるためには、売主側は売却前に家族間で売却についてしっかりと話し合い、意見をまとめておくことが必要です

買主側は、直前になってローンが通らないということがないように、余裕を持った資金計画を行いましょう。不動産売買契約に関しては複雑な手続きも多いので、契約内容をきちんと理解しないままに手続きを進めてしまうこともトラブルの一因となります

不明点があればその都度不動産会社に確認して、サポートをお願いしましょう。こちらの質問に真摯に答えてくれないなど、不動産会社に不信感を抱いた場合は、信頼できる不動産会社への変更を検討してみてください。

不動産売却をキャンセルするなら違約金発生のタイミングに気を付けよう

本記事では、不動産売買を途中でキャンセルしたいときの方法と注意点について解説しました。本来であれば、売却活動がスムーズに進んで買主が見つかり、滞りなく売買契約が完了するのが理想的です。

とは言え、不動産の売却は長い場合は完了まで数カ月以上にもわたり、大小のトラブルが必ずと言っていいほど発生するものです。残念ながら不動産売却をキャンセルしたいとなった場合は、本記事の内容を参考に、できるだけ損をしないタイミングでのキャンセルを行いましょう

また、トラブルが発生しないようにするためには、売却までをしっかりサポートしてくれる不動産会社選びも重要です。信頼できる不動産会社が見つかったら、円滑に売却が進められるように売主と不動産会社が協力し合って早期の売却を目指しましょう。

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