不動産売却の「割賦販売」とは?メリットとデメリットや注意点を解説

不動産売却の「割賦販売」とは?メリットとデメリットや注意点を解説

不動産売買において、現在ではほとんどの方が住宅ローンを利用しています。しかし、買主の信用不足や親族間での不動産取引・再建築不可物件の売買など、ローンを組みにくいケースも存在します。

銀行でのローンが組みにくい場合でも有効な不動産売買の手段が「割賦販売」です。いわゆる分割払いのことですが、この割賦販売にはリスクや問題点もあるため、実施の際には理解を深めておく必要があります。

本記事では、割賦払いのメリット・デメリットをはじめ、所有権を移転するタイミング、割賦払いを成立させるための注意点などを解説します。親族間での不動産取引や住宅ローン不可物件の売却を検討されている方は、ぜひ参考になさってください。

目次

「割賦販売」は不動産売却の「分割払い」

不動産売却における「割賦販売」とは、売主が不動産を売り、買主がその代金を分割で支払う仕組みです。宅地建物取引業法では、『代金の全部または一部を、物件引き渡し後1年以上の期間にわたって、2回以上に分けて受け取ることを条件に販売すること』と定められています。(宅地建物取引業法35条)

ローン販売とは異なり、割賦販売では金融機関を介さず、売主と買主が直接分割払いの契約を結びます。ローンを組むのが難しい買主に対して、この方法が活用されることがあります。

割賦販売のメリットとデメリットは?

割賦販売は、不動産売却の際に買主が代金を分割で支払う方式です。割賦販売には売主と買主の双方にさまざまなメリットとデメリットが存在します。

メリット①買主が住宅ローンを組みにくい場合にも不動産売買できる

最近は、ほとんどの方が不動産購入時に住宅ローンを利用します。割賦販売を活用できれば、買主側の事情で住宅ローンが通らない場合も不動産購入できる可能性があります。

割賦販売により買主の負担が軽減されることは、売主にとっても利点があります。一般的に住宅ローンが通りにくい物件でも、割賦販売で買主が購入できる見込みが高まれば、売却が進めやすくなるからです。

再建築不可物件など、担保価値が低く住宅ローンが難しいとされる物件を売却したい売主にとって、割賦販売により販路が広がるのは大きなメリットといえます。

メリット②親族間での不動産売買に利用できる

遺産相続など親族間で不動産を譲渡する場合「贈与」がひとつの方法ですが、不動産贈与には受け取る側に贈与税が発生します。そのため、高額な贈与税の支払いを回避する方法として、親族間で不動産売買を行うケースがあります。

しかし、親族間での売買の場合、不正利用防止などの観点から金融機関は積極的に融資を行わないのが一般的です。買主側の親族が住宅ローンを利用できず譲渡がスムーズに進まない場合に、割賦販売は有効な方法となります。

親族間であれば、お互いに信頼関係があるため長期の分割払いも同意が得やすく、売買契約が滞りなく進められるでしょう。

メリット③古い賃貸物件の売却に有効

割賦販売は古い賃貸物件の売却にも有効です。古い貸家を所有していて、長期入居している現居住者に買い取ってほしい場合、家賃相当額を割賦に変えて売却できます。

現居住者に家を購入してもらえれば、売却のための活動が不要で非常にスムーズです。売却のために古家の解体や修繕をする必要もなく、費用面でも助かります。

居住者側も、今まで家賃として支払っていた額を割賦金として払えばよいので負担が少なく、生活環境を変えずに済むメリットは大きいでしょう。

デメリット①所有権移転登記をいつ行うか判断が難しい

割賦販売のデメリットの一つに、所有権移転登記のタイミングを判断するのが難しい点があります。通常の不動産売却では、売主が売却代金を全額受け取った後に、買主へ所有権を移転します。しかし、割賦販売では代金が数年から数十年にわたって分割で支払われるため、全額受領後に名義変更を行うのは現実的ではありません。

一方、契約時に所有権を移転してしまうと、売主には大きなリスクが生じます。例えば、代金をすべて受け取る前に買主が破産してしまった場合、売主は代金を回収できないだけでなく、不動産が差し押さえられる可能性もあります。

そのため、所有権移転登記のタイミングについては、売主と買主の間で十分に協議し、慎重に決定する必要があります。

デメリット②利息分が贈与とみなされる可能性がある

親族間で割賦販売を行う際、無利息で進めるケースも考えられますが、これには税務上のリスクが伴う場合があります。通常、長期間の分割払いでは利息を支払うのが一般的ですが、無利息の契約が買主にとって有利すぎる条件と判断されると、税務署がその利息分を贈与とみなし、贈与税が課される可能性があるのです。

ただし、すべての無利息取引で自動的に贈与税が発生するわけではなく、これは限定的なケースに適用されます。こうしたリスクを避けるためには、適切な利息を設定しておくことが推奨されます。

不動産売却で割賦販売した場合の所有権移転登記時期は?

当事者間で契約を結ぶ不動産の割賦販売の場合、所有権移転登記をいつ行うかは大きな問題です。ベストなタイミングを判断するのは、売主と買主双方で十分に協議する必要がありますが、やはり不動産売却に精通していないと難しいものです。

そこで本章では、売買契約時・割賦払いの完済時・指定の金額に達した時期の3つのパターンについて、特徴や問題点を解説していきます。

売買契約時

不動産の割賦販売において、売買契約と同時に所有権を移転するケースもありますが、慎重な判断が求められます。特に、親族間では信頼関係があるため契約時に所有権を移転することが可能な場合もありますが、親族以外の個人間取引では注意が必要です。

所有権移転を契約時に行うと、買主の経済状況が悪化した際、支払いが滞ったり、不動産が他の債権者に差し押さえられるリスクがあります。こうしたトラブルを避けるため、所有権移転のタイミングは慎重に検討する必要があります。

特に親族間以外で割賦販売を行う場合、仮登記や抵当権の設定など、万が一買主に問題が生じた際に売主が残金を回収できる手段を講じておくことが重要です。

割賦払いの完済時

所有権移転登記の時期として、割賦払いの完済時があります。売買代金が全て支払われるまで、所有権を売主が保持する方法です。

割賦払いの完済時に所有権移転登記をすると、売主は全額が手元に入るまで所有権を持ち続けることができるため、安心して分割払いの支払いを待つことができます。しかし、この方法では、所有権を持つ売主が他の第三者に売却することが可能になってしまうため、分割払いを行っている買主の立場が不安定になりがちです。

そのため、一般的にはあまり使われていません。

指定の金額に達したタイミング

指定の金額に達したタイミングで、所有権移転登記を行うケースも考えられます。たとえば、物件総額の〇割を支払った時点で所有権を移転する、という契約です。

この場合、売主には最低限の金額が担保され、買主側も全額完済時のタイミングよりも、早く所有権を移転できるという安心感があります。指定の金額に達したタイミングでの所有権移転登記は、お互いの希望を考慮した折衷案といえるでしょう。

とはいえ、売買と登記の時期が異なるこの方法は、手続きが煩雑になりトラブルが起きやすい問題もあります。

不動産売却で「割賦販売」を利用する際の注意点

割賦販売は不動産売却のひとつの方法ですが、契約内容や支払い条件・リスク管理などさまざまな要素が絡むため、事前の理解と準備が必要不可欠です。本章では、割賦販売を行う際の主な注意点について詳しく解説していきます。

住宅ローンが残っていれば完済が必要

不動産を売却する場合、住宅ローンが残っていれば完済しないといけません。これは割賦販売においても同様です。
住宅ローンを銀行から借り入れる際、「金銭消費貸借契約」を銀行との間に結びます。

契約の中には、住宅ローンの返済中は不動産の譲渡を禁止する旨の規定が盛り込まれています。親族間での譲渡もできませんので、住宅ローンが残っている物件を割賦販売で売却する場合は、先にローンを完済し抵当権を抹消してから売却手続きを進めましょう

将来相続人の間で紛争になる可能性がある

不動産の割賦販売は、親族間でよく行われる不動産売却の契約方法です。しかし、親族間で不動産を相続したり売買したりする場合、相続人同士の間でトラブルが発生する可能性があります。

不動産は現金と違って均等に分けるのが難しく、相続財産の中で不動産の割合が多い場合に揉める可能性が高くなります。トラブルを避けるには、事前に相続人となる可能性がある人(推定相続人)に対して、親族間売買を行う旨を伝えておくことが重要です。

買主の支払いが滞納した場合に備える

不動産の割賦販売を行う際には、買主からの返済が滞ってしまったときのことも考え、対策を取っておいた方が安心です。

買主の支払いが滞納するリスクへの対策は?
  • 建物や土地に抵当権を設定する
  • 強制執行認諾文言付公正証書を作成する

買主が返済を滞納したとき、抵当権が設定されていれば売主は不動産を売却し現金化することができます。さらに、強制執行認諾文言付公正証書を作成しておくと、買主が支払い不能になったとき財産を差し押さえられます
売主は、割賦販売の残金が回収できずに困ることがないように、上記の対策を取っておくと万全です。

割賦販売の知識や実績がある不動産会社に相談する

割賦販売は取引相手がすでに決まっていることが多いため、「業者に頼まず個人間取引で完結すれば、手数料がかからず安く済ませられるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、割賦販売は相続と密接に関わることが多く、将来トラブルになる可能性もあります。

割賦販売を行う際には、トラブルに備えて弁護士や司法書士などの専門家や、不動産会社と連携することが重要です。とはいえ、近年では住宅購入の際には銀行で住宅ローンを組むことがほとんどで、割賦販売の知識や実績が豊富な不動産会社は少ないのが実情です。

割賦販売での不動産売却を検討しているならば、まずは実績のある不動産会社へ相談されることをおすすめします

後楽不動産では割賦販売をはじめ、さまざまな不動産売却方法を提供しています。
岡山の不動産市場に精通した当社の専門知識を活かし、お客様が満足できる適正価格での不動産売却をお手伝いいたします。
不動産に関するお悩みやご相談がございましたら、どうぞお気軽に後楽不動産にお問い合わせください。

割賦販売で不動産売却する場合の税金まとめ

割賦販売で不動産を売買する際にも、税金が発生します。主な税金は以下の通りです。

  1. 登録免許税:不動産を取得して登記する時にかかる税金
  2. 譲渡所得税:売主が不動産を売却して得た利益にかかる税金
  3. 不動産取得税:買主が不動産を取得した際にかかる税金
  4. 収入印紙代:売買契約書に貼付する印紙代
  5. 固定資産税と都市計画税:不動産の所有者に課せられる税金

不動産を売却した際に譲渡所得が発生すると、売主には譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税には税額を軽減するためのさまざまな特例がありますが、親族間での売買の場合はこれらの特例を利用することはできません

例えば、自宅を売却した場合には、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例がありますが、親子や夫婦間の取引は対象外です。特例が適用されないことで、税金の負担が大きくなる可能性があることに留意しておきましょう。

不動産売却で割賦販売をするなら専門家に相談しよう

本記事では、不動産売却の「割賦販売」について、メリット・デメリットや所有権移転の時期、割賦販売を行う上での注意点などを解説しました。割賦販売はローンが組みにくい買主でも不動産取得できるというメリットがある一方、契約内容の複雑さや売主買主双方のリスク管理などさまざまな要素が絡むため、事前の理解と準備が必要不可欠です。

親族間の不動産取引に割賦販売が利用されることがありますが、相続も絡むことなので後々トラブルになる可能性も高いです。将来的なトラブルを回避するためにも、割賦販売を利用する場合は弁護士や行政書士といった法律の専門家や、割賦販売に詳しい不動産会社に相談しながら進めていくとよいでしょう

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次