土地を相続するときにかかる税金とは?節税対策も教えます!
実家や親が持っていた土地を相続することになった場合、「税金はどれくらいかかるの?」と気になる人もいるでしょう。相続のタイミングはいつ来るかわからないため、そのときになって慌てることがないように、しっかりと準備しておくことが重要です。
本記事では、土地を相続するときにかかる税金である「相続税」について、仕組みや計算方法、相続税を軽減するための対策などについてくわしく解説していきます。
目次
相続税とは?
相続税は、亡くなった親や親族から、お金や土地などの財産を相続した場合に支払う税金です。相続した財産の一部を税金として国に納めることで、その資産を再分配し、広く社会のために使われることになります。
相続した財産の額によって、支払う相続税の金額(相続税率)が変わります。これにより、家庭間での貧富の差を減らし、一部の国民に富が集中しないようにする役割も担っています。
相続税の基本的な仕組み
相続人は、亡くなった人の財産を計算し相続税を支払います。相続税は、相続財産の価額に応じて、10%から55%までの累進税率が適用されます。
相続した財産の中から、葬式費用や借金を差し引いた後の金額が基礎控除額を上回るときのみ、相続税の支払いが必要です。実際に相続税を支払うのは、相続人の1割程度だと言われています。
相続税の対象となるものは?
相続税の対象となるものは、亡くなった人の財産すべてです。具体的には以下のものが対象となります。
相続税の対象となる財産
- 不動産(土地と建物)
- 預金や株式・債券などの金融資産
- 生命保険の死亡保険金
- 年金受給権
- 美術品や宝石などの動産
- 著作権 など
経済的な価値があるすべてのものが、相続税の対象に含まれます。相続人は、亡くなった人の財産を把握し、適切に申告して相続税を納付しなければなりません。
「相続税が払えない」場合も?相続税を軽減する方法とは
相続する財産の価値が高い場合、相続税も高額になります。「なるべく相続税を払いたくない」と思うならば、事前の準備や対策が必要です。
相続税の負担を最小限に抑えるために、できることは早めに対策しておきましょう。
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生前贈与
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保険の活用
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事業承継税制の活用
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相続時精算課税制度の活用
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配偶者控除の活用
生前贈与や制度を活用することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。各制度には適用要件があるため、手続き面での不備がないように注意しましょう。
いざというときに「相続税が払えない」という事態が起きないように、具体的な対策は早めに専門家へ相談しておくと安心です。
土地の評価額とは?
土地の評価額とは、不動産の価値を示す指標であり売買の際に参考価格として使用されます。また、相続税や贈与税の計算をする際の基準額となります。
土地の評価額は、相続税を算出するのに必要な要素です。本章では、土地の評価額を算出するための計算方法について解説していきます。
土地の評価額を算出する方法
相続税の計算をする際に必要となる土地の評価額を出すには、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類の方法があります。該当の土地に路線価が設定されていれば「路線価方式」を、設定されていない土地は「倍率方式」を採用して計算しましょう。
路線価図と評価倍率表は、国税庁のホームページにて確認できます。それぞれの評価方法で計算式が異なるため、以下で詳しく解説していきます。
路線価方式の計算方法
路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表している基準価格(路線価)を活用した計算方式です。主に市街地にある土地が該当します。
路線価は土地が面している道路ごとに価格が決められていますが、土地の価値はその形状や大きさなどの要素も関わってくるため、補正がかけられることが多々あります。土地の奥行きや間口の狭さ・土砂災害特別警戒区域内に土地がかかっていないかなどが補正の対象です。
補正率の計算方法は、かなり複雑になります。必要な場合は、相続関係に詳しい税理士などの専門家に依頼するとよいでしょう。
倍率方式の計算方法
路線価が設定されていない地域は、倍率地域と呼ばれます。倍率地域の土地評価額は、固定資産税評価額にエリアごとに設定された倍率をかけて算出します。
倍率方式では、土地の条件や形状を十分に反映できないため、実際の価値と相違が出る可能性があるのが問題点です。また、地域の価格水準が変動しても倍率の見直しが追いついておらず、適切な評価額を算出できない点も懸念されます。
土地の評価による税金額の計算方法
「路線価方式」または「倍率方式」で土地の評価額が判明したら、相続税の金額も自分で算出可能です。
基礎控除額は3,000万円 + 法定相続人1人につき600万円です。税率は以下の通りです。
税率
- 1,000万円以下: 10%
- 1,000万円超3,000万円以下:15%
- 3,000万円超6,000万円以下:20%
- 6,000万円超: 30%
次の章では具体的に相続税の計算方法について解説していきます。
相続税計算の具体的なシミュレーション
本章では、相続税の計算を具体的にシミュレーションしています。節税対策を行った際のシミュレーションもありますので、参考にしてみてください。
土地を相続した場合の税金の試算
土地などの遺産を相続した場合、相続税の計算は次の4ステップで行います。
- 遺産の総額を集計する
- 基礎控除額を差し引く
- 相続税の総額を計算する
- 納付税額を計算する
相続税の総額を計算するには、遺産の総額から基礎控除額を差し引き、税率をかけて控除額を引きます。具体例をあげてみましょう。
- 遺産の総額:1億4,800万円
- 基礎控除後の遺産総額:1億円
- 法定相続人:妻、子供二人(長男長女)
法定相続分は配偶者が1/2、子供は全員で1/2です。
今回の例の場合は妻が5,000万円、子供が一人当たり2,500万円となります。
- 妻:5,000万円×20%-200万円=800万円
- 長男:2,500万円×15%-50万円=325万円
- 長女:2,500万円×15%-50万円=325万円
相続税の総額は「800万円+325万円+325万円=1,450万円」です。こうして算出された相続税の総額を実際に相続する割合で分割し、各人の相続税額を計算します。
税金対策を考慮した相続税額のシミュレーション
亡くなった人が死亡保険に加入していれば、相続人は保険金を非課税枠で受け取ることができます。生命保険への加入は節税対策として有効ですので、留意しておきましょう。
例として、遺産の総額が1億4,800万円、法定相続人が妻と子供二人(長男長女)の場合について試算してみます。
生命保険に未加入の場合 相続税の総額=1,450万円
生命保険に加入していた場合 死亡保険金の非課税枠:500万円×3=1,500万円
1億4,800万円-1,500万円=1億3,300万円
相続税の総額=1,188万円
上記の例では、生命保険に加入し死亡保険金を相続人の受け取りにしていた場合、262万円の相続税軽減ができます。相続税対策として活用されている生前贈与と、生命保険を組み合わせた税金対策をぜひ検討してみてください。
特例措置を活用した相続税軽減方法
相続税法では、相続人にかかる税負担が大きくなりすぎないように、特例や控除が設定されています。主な特例や控除は以下のものがあります。
- 小規模宅地等の特例
- 特定計画山林の特例
- 事業承継税制
- 納税猶予制度
- 保険料控除
- 障害者控除
- 寄付税額控除
特例措置として最も一般的な「小規模宅地等の特例」は、一定の要件を満たせば土地の評価額を8割減額できる制度です。適用には、被相続人の自宅であること、面積が330㎡以下、被相続人か配偶者が10年以上居住などの条件があります。
「納税猶予制度」は、親の農業を継いで農地を相続した場合、相続税の納税が猶予される制度です。そのまま農業を継続した場合は猶予期間が続くため、結果的に納税が免除されます。
土地相続時の贈与制度を活用した節税方法
生前贈与のメリットは、所有権を明確にしておくことでのちのトラブルを回避し、希望の相続人に必ず不動産を引き継げるところにあります。また、生前贈与をすることで、節税対策としての役割も果たします。
ただし、「小規模宅地等の特例」は贈与では適用されないため、相続のほうが税金を抑えられる可能性もあります。贈与と相続のどちらが得かは状況によって異なるため、税理士など専門家に相談することも検討したほうがよいでしょう。
土地相続における節税対策
土地を相続する際にできる節税対策には、ほかにどのようなものがあるでしょうか?本章では、特例や控除以外の土地相続における節税対策を紹介しています。
できる対策は早めに行っておくと、いざというときに安心です。
税理士や専門家のアドバイスを活用した節税対策
相続税の節税対策を相談できる専門家は、税理士を筆頭に次のような人たちがあげられます。
- 税理士や公認会計士
- 不動産鑑定士
- 弁護士
- 金融機関 など
税理士は「税金のプロ」です。相続税の問題で不安なときには、税理士に相談しましょう。
財務省が公表している資料では、相続税の申告者のうち8割以上が税理士に依頼しています。相続前には遺言書の作成や相続税の試算、相続時には相続税の申告手続き代行など、相続人には負担の大きい業務を代わりに行ってくれます。
ほかにも、不動産鑑定士や弁護士など、相続する土地の実態に応じて専門家のアドバイスを適切に受けることで、土地を正しく評価し節税対策につなげることができるでしょう。
参考:「令和3事務年度国税庁実績評価書」
相続した土地を有効に活用するには?
相続した土地を「負の遺産」にしないためには、必要であれば建物のリフォームやメンテナンスを行い、不動産の価値が下がらないようにしておくことが重要です。人が住まなくなった家は急速に劣化が進んでしまうので、最低限のリフォームをして賃貸に出すのもおすすめです。
土地だけで建物が建っていない場合は、駐車場やトランクルーム・太陽光発電といった土地活用の方法もあります。収入とコストのバランス、用途に土地が適しているかどうかなど慎重に考えて進めなければなりません。
駐車場を検討しているならば不動産会社へ、そのほかの場合もそれぞれの問い合わせ先へ確認し、相談してみてください。専門家の意見も取り入れながら、土地の価値を維持向上していきましょう。
土地相続で起こりやすいトラブルや注意点
土地の相続の際によくあるトラブルや、どのような点に注意すべきなのかを解説していきます。これから土地の相続の可能性がある方は参考にしてみてください。
土地の相続にまつわるトラブル事例
土地の相続の際に起こりうるトラブルとして、相続人の間で土地の分割・利用方法について意見が分かれることが考えられます。相続手続きがスムーズに進まず裁判になることもありますので、相続人が複数いる場合は事前に意見のすり合わせを十分行うことが重要です。
また、相続登記が適切に行われていないと、相続人以外の第三者が不動産を取得するなど、相続人が土地の管理ができなくなるトラブルが発生する恐れがあります。相続手続きの初期段階から専門家に相談して、期限内に確実に相続登記を行いましょう。
相続した土地や家を売却するときの注意点
相続した土地や家が有効に活用できそうにない場合、売却も選択肢のひとつとなるでしょう。相続した不動産の売却時には、「売り急ぎによる損失」と「売却期限」に注意してください。
相続人が複数いて、遺産を売却して等分することを「換価分割」と言います。換価分割を早く進めたいあまりに不動産を売り急いでしまうと、相場より安く手放すことになり結果的に相続人が損することもあります。
また、相続した土地の売却期限は、3年以内が目安となります。理由は、相続不動産で適用される特例の期限が3年以内だからです。
売却活動には時間がかかることを見越して、スムーズに売却してくれる不動産会社を選ぶことが重要です。不動産の売却に強い不動産会社を選択し、早めに行動に移しておきましょう。
まとめ:土地を相続するときは事前の税金対策が重要!
本記事では、土地を相続する際にかかる「相続税」について詳しく解説しました。また、相続税を節税するにはどのような対策があるのかについてもまとめています。
相続税の節税対策は、特例や控除など相続後に行う手続きもあれば、生命保険や生前贈与など事前の対策が必要になるものもあることが分かりました。いざというときに慌てないために、事前にできる税金対策を行い、手続きを円滑に進めていきましょう。
相続した土地を売却したいときは、不動産売却のプロにお任せください。