不動産売却の仲介手数料を抑えたい!直売のメリットとデメリットを解説
不動産を売却する際、できるだけコストを抑えたいと考えるのは、多くの人に共通する願いです。不動産会社に仲介を依頼する場合、仲介手数料が必要ですが、自ら売主として直接買主と取引する「直売」を選べば、こうした手数料を削減できる可能性があります。
ただし、直売を選ぶ際には注意が必要です。十分な準備をせずに進めると、予期せぬトラブルが発生したり、専門家への依頼費用がかさむことで、かえってコスト削減にならない場合もあります。本記事では、不動産売却における直売のメリットとデメリット、そして取引を進める上での注意点についてわかりやすく解説します。
さらに、不動産売却の具体的な流れや、直売がどのようなケースに適しているかについても触れています。不動産売却をできるだけコストを抑えて実現したいとお考えの方にとって、参考になる情報が満載です。ぜひ最後までお読みいただき、最適な選択にお役立てください。
この記事を監修した人
岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
目次
不動産売却における「直売」とは?
不動産売却においては、不動産会社に仲介を依頼し買主を探す方法が一般的です。ですが、中には売主が直接買主と交渉して売買を行う「直売」の方法が取られるケースもあります。
直売は、不動産会社自身が売主となっている場合がほとんどです。個人で不動産取引を直売で行う際には、メリットだけでなくデメリットについてもよく調べて行う必要があるでしょう。
「仲介」と「直売」の違いとは?
仲介と直売の違いを以下の表にまとめました。
仲介 | 直売 | |
---|---|---|
取引相手 | 仲介業者を通じて買主を見つける | 売主と買主が直接交渉 |
手数料 | 仲介手数料が発生 | 仲介手数料が不要 |
マーケティング | 仲介業者が広告や営業活動を担当 | 自分で広告や営業を行う |
プロセスのサポート | 仲介業者が手続きをサポート | 自分で手続きを進める必要がある |
取引の信頼性 | 仲介業者の専門知識や経験を活用 | 自分で買主の信頼性を確認する必要がある |
ネットワーク | 仲介業者のネットワークを利用可能で買主が見つかりやすい | 買主を見つけるのに時間がかかる可能性がある |
交渉の難易度 | 仲介業者が交渉を代行 | 自分で交渉を行う必要がある |
仲介は、仲介手数料を支払う代わりに買主の交渉や手続きなど、手間がかかり専門的知識が必要な部分を補ってくれます。買主側から見ても、不動産会社が仲介に入ることで信頼性が高くなり、安心して取引を進めることができるでしょう。
不動産売却における直売のメリット
不動産売却においては、仲介での取引が一般的で個人での直売はあまり行われていません。ですが、仲介業者を介さないことでより高い利益を得られる可能性がある点は大きなメリットです。
本章では、不動産売却における直売のメリットを3つ紹介します。
仲介手数料がかからない
不動産売却の際に直売で取引する大きなメリットが、仲介手数料がかからないという点です。仲介手数料は物件の売却価格に基づいて計算されるため、売却価格が上がるほど手数料も増加します。
不動産仲介手数料の計算式は以下の通りです。
不動産の取引額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 5% |
200万円超え、400万円以下 | 4%+2万円 |
400万円超え | 3%+6万円 |
例えば3,000万円の物件ならば約105万円、5,000万円の物件ならば約171万円が仲介手数料として不動産会社に支払う金額です。直売での取引だと、こうした仲介手数料の支払いがすべて不要となります。
スムーズにやり取り可能
不動産売却の際に直売を選ぶことで、スピードと効率面でのメリットもあります。不動産仲介会社に依頼する場合は、売主と買主は不動産会社を通してのやり取りとなるため、直接やり取りをするよりも時間がかかることがあります。
不動産会社の営業時間や担当者のスケジュールに左右されることなく、直接買主と連絡を取り合えるのは、取引のスピード化につながるでしょう。
売主と買主間で直接価格交渉ができる
不動産の直売では、売主と買主で直接価格交渉ができる点もメリットと言えます。物件のことを誰よりもよく知っている売主が、買主に直接物件のアピールを行えるので、買主側は納得の上で物件を購入できるでしょう。
買主側からは、仲介手数料が不要な分値下げ交渉が通るチャンスが増えるというメリットもあります。
不動産売却における直売のデメリット
不動産売却での直売は、不動産手数料が不要である代わりに自分でやるべきことが多くあります。仲介であれば不動産のプロが行う営業活動や、交渉といった難しい部分も直売は自分で対応しないといけないのもデメリットと言えるでしょう。
本章では、直売を検討しているならば頭に入れておいた方がいいデメリットについて解説していきます。
不動産の専門的知識が必要
不動産を直売で取引するためには、様々な専門的知識が必要になります。不動産の専門的知識が不足していると、買主から足元を見られて売主が損をしてしまう可能性もあるでしょう。
また、書類の作成にミスがあったり、物件の重要な情報が契約後に発覚したりすると、その後の取引がスムーズに進まず契約自体が白紙に戻る可能性もあります。直売の売主はすでに不動産業界に精通しているか、専門的知識を身に付けるために時間と手間を惜しまない人でないと難しいでしょう。
住宅ローン審査に通りにくい場合がある
不動産の直売(個人間売買)は、住宅ローン審査に影響を及ぼす可能性がありますが、それ自体が原因で審査が不利になるわけではありません。影響が生じる主な理由として、取引の透明性が不足している場合や、物件価格が適正かどうか金融機関が判断しづらいケースが挙げられます。また、重要事項説明書や売買契約書といった必要書類に不備があると、審査が進まない場合もあります。
しかし、宅建士や司法書士といった専門家に依頼して適切に書類を準備し、取引内容を明確にすれば、直売であっても住宅ローン審査に不利になることはありません。正しい手続きと十分な準備を行うことで、通常の取引と同様に進めることが可能です。直売を選択する際には、事前の準備と専門家のサポートが重要なポイントとなります。
引き渡し後にトラブルが起こるリスクがある
不動産の直売では、不動産に詳しくない人同士でも取引が成立してしまうため、引き渡し後にトラブルが起こることも少なくありません。例えば、次のようなトラブルのケースが考えられます。
引き渡し後のトラブルとは?
- 物件の欠陥や不具合の発見
引き渡し後に、売主が説明しなかった物件の欠陥や不具合が発見されることがあります。 - 契約内容の不備
契約書に重要な条項が抜けていたり、曖昧な記述があったために、後に双方で認識が異なることがあります。 - 支払いの遅延や不履行
買主が支払いを遅延させたり、最悪の場合、支払いを履行しないケースが発生することがあります。 - 登記手続きの問題
正しく登記が行われず、所有権が移転しない、または手続きにミスがある場合、後で大きなトラブルになることがあります。 - 近隣トラブルの発生
売主が事前に説明していなかった近隣との問題(騒音、境界線の問題など)が引き渡し後に発覚し、買主が困難な状況に陥ることがあります。
こうしたトラブルを避けるためにも、直売での取引の前にはしっかりとした事前調査を行い、準備を整えておきましょう。
不動産を直売で売却する際の注意点は?
ここからは、不動産を直売で売却する際の注意点について、詳しく解説していきます。個人間での不動産直売はトラブルが起きるリスクも高いため、注意すべき点をよく調べて慎重に進めていきましょう。
宅建業に該当する取引ではないか
反復・継続して売買を行う場合は、宅地建物取引業法に基づき宅建業として登録が必要です。未登録で宅建業に該当する取引を行うと、法的な制裁を受けるリスクがあります。
売却価格は相場をよく確認してから決定する
不動産の売却価格を決定する際には、近隣の類似物件を調査し相場を把握しておくことが重要です。専門家による査定を依頼することもよいでしょう。
市場の需要と供給のバランスを見極め、状況に応じた価格設定を行うことも必要となってきます。適正な不動産売却価格を決定するためには、経験豊富な不動産会社に相談してみることをおすすめします。
売買契約書は司法書士に依頼する
売主直売では契約書などの書類も自分で用意しなくてはいけません。売買契約書は法的な文書であるため、作成には法律や不動産に関する知識が求められます。
自分で作成するのが難しいと感じる場合は、司法書士へ売買契約書作成を依頼するとよいでしょう。依頼費用は物件の詳細や地域、依頼する事務所により異なりますが、相場は5万円~20万円程度です。
なお、重要事項説明書の作成と説明は、宅建士の資格所持者のみ可能です。
不動産売却を直売で行う場合の流れ
不動産売却価格を決定する
不動産売却を直売で行う際には、最初に売却価格を設定します。売却物件の周辺にある築年数が同程度の物件の売却価格を参考にしながら、立地や物件の状態を総合的に評価して決定します。
不動産会社に査定を依頼すると、より正確な価格を把握できるでしょう。
必要な書類を準備する
物件売却時に必要な書類
- 本人確認書類
- 印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 住民票(発行から3か月以内)
- 登記済権利証または登記識別情報
- 登記簿謄本または登記事項証明書
- 購入時の重要事項説明書と売買契約書
- 土地測量図、境界確認書
- 固定資産税納税通知書
- 間取り図、測量図
- 建築確認済証および検査済証
- (マンションの場合)管理規約または使用細則
- (マンションの場合)維持費関連書類
売却時に必要な書類は多岐にわたります。発行するのに時間がかかるものや、発行してからの期限が決まっているものなどもあるため、スケジュールを確認しながら計画的に書類を揃えていきましょう。
売却活動を行う
買主が決まっていない場合は、売却活動を行い買い手を募ります。近隣の家にチラシを配ることは始めにやっておきましょう。個人間での不動産売買のほとんどは、友人知人や近所の人との間での取引です。
今はインターネットで物件を探す人が多いですが、大手の不動産ポータルサイトは個人での広告掲載は不可となっています。(参考:suumo)
一方、個人間の直売で売却したい人向けに、誰でも広告掲載できるサイトもあります。
ジモティーでも物件の個人間売買が行われています。
ただし、不動産売却は高額取引であるため、利用時には相手方の信頼性を十分に確認する必要があります。また、取引に際して契約書や重要事項説明書を適切に作成しないと、後々トラブルに発展する可能性もあるため、慎重に進めましょう。
売買契約書を作成・売買契約の締結
買い手が見つかり価格の交渉がまとまったら、売買契約書を作成します。契約内容の中には、物件の価格の他に、代金の支払方法、支払時期、引き渡し時期、所有権移転時期、登記費用負担、固定資産税の清算、契約の解除についてなどが含まれます。
契約書の作成ができたら、売主と買主で契約内容について相違がないか確認し、署名・押印して売買契約を締結します。
物件の引き渡し
物件の引き渡しは、売買契約で指定された日時に実施されます。引き渡しと決済は同時に行われることが一般的ですが、契約書に記載された日時に従って、後日行うことも可能です。
買主が住宅ローンを利用して決済金を支払う場合は、基本的に融資先の金融機関で決済が行われます。物件に関する資料や鍵の引き渡しが済めば、売却手続きは終了です。
直売での買主はどのような人がおすすめ?
不動産売却の直売は一般的な仲介での取引に比べて、売主の身近な人が買主になるケースが多いのが特徴です。本章では、どのような人が買主になる場合が多いのか、おすすめの理由などを詳しく解説していきます。
隣地の所有者や近隣の住民
所有する不動産を売却したい場合は、まず隣地の所有者や近隣住民に声をかけてみましょう。特に、隣地が再建築不可物件の場合は、売主の土地を購入すると再建築可能になる場合もあるため、喜ばれることが多いでしょう。
身元がはっきりわかっている隣地の所有者や近隣住民であれば、直接の取引であってもトラブルになることは少ないでしょう。万一トラブルになった場合も連絡を取ることができるので、買主としておすすめできます。
同じマンション内に部屋を所有している人
売却予定物件がマンションならば、同じマンション内の住民に売却するのもおすすめです。マンション自体の立地や設備などが気に入っているが、ライフスタイルの変化で部屋数が不足してきたと感じている人は、同じマンション内で広い部屋に住み替えを行うことがあります。
逆に、子どもが独立したなどの理由で、広い部屋から狭い部屋へ住み替えたいという人もいます。同じマンションの住民ならば、住み心地についてはよく分かっているので、売買手続きもスムーズに進むでしょう。
親族や友人知人など
親族や友人知人など、自分と親しい関係の人に不動産を売却する場合は、直売になるケースが多いです。不動産会社に支払う手数料がかからないため、お互いに費用を節約して不動産の売買取引ができます。
親族や友人知人に売却する場合は、相場より安く売却してみなし贈与と扱われないように気を付けましょう。
まとめ
本記事では、不動産売却における「直売」について、そのメリットやデメリット、売却の流れ、直売に適した買主像などを解説しました。直売は仲介手数料を削減できる点が魅力ですが、同時に、売主には不動産取引に関する専門的な知識や交渉力が求められるため、必ずしも誰にでも適した方法ではありません。
直売を成功させるには、事前の十分な準備と専門家のサポートが欠かせません。具体的には、宅建士に重要事項説明書の作成を依頼したり、司法書士に売買契約書の作成を相談することで、取引の透明性と信頼性を確保できます。また、物件の適正価格を判断するために不動産会社に査定を依頼するのも有効な手段です。これらのステップを踏むことで、リスクを軽減し、安全に取引を進められるでしょう。
準備不足のまま直売を選ぶと、予想以上の手間や費用が発生し、不動産会社に仲介を依頼した方が結果的にコストを抑えられる場合もあります。直売のメリットとデメリットを正しく理解し、専門家の力を借りながら、自分に最適な売却方法を慎重に選びましょう。