空き家が増える理由とは?放置のリスクと対策

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日本では空き家問題がますます深刻化しています。空き家が増え続けているにもかかわらず、なぜ多くの所有者が売却を選ばないのでしょうか?

本記事では、空き家が増加する背景と、所有者が売却しない・できない理由について詳しく解説します。また、空き家を放置することのリスクについても掘り下げていきます。この問題が私たちの生活や社会にどのような影響を与えるのかを明らかにし、空き家問題の解決策についてもご紹介します。

この記事を通じて、空き家問題への理解を深め、その解決に向けた一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

目次

空き家が増加している背景

空き家が増加している背景

日本における空き家の増加は、人口減少と家族形態の変化が大きく影響しています。これらの要因が複雑に絡み合い、全国的に空き家の数が増加しています。

人口減少による住宅需要の低下

日本の人口は長期的に減少傾向にあります。人口減少が住宅市場に与える影響は大きく、特に昭和時代に建てられた古い住宅が空き家となることが多いです。

これらの住宅は、築年数が経過しているため新築物件と比べて選ばれにくくなっています。さらに、地方では若者が都市部に流出する傾向が強く、地方の空き家が増加する要因ともなっています。都市部でも、需要の低下により、一部の住宅が空き家となるケースが見られます。

家族形態の変化

日本の家族形態の変化も空き家の増加に大きく影響しています。特に核家族化や単身世帯の増加が顕著であり、大きな住居から小さな住居への移行が進んでいます。

かつては三世代同居が一般的だった日本の家庭も、近年では夫婦と子供のみ、または単身世帯が主流となってきています。このような変化により、大きな家が不要となり、結果的に空き家が増加しています。

さらに、高齢者の増加とともに、老人ホームや介護施設に入所する高齢者も増えており、これに伴って持ち家が空き家になるケースが増加しています。高齢化が進む地域では、高齢者が所有する物件が空き家となり、その数が年々増加しています。

日本の高齢化社会の進展に伴い、高齢者の保有物件が空き家になる現象は避けられない課題となっています。高齢者が亡くなった後、その物件が相続されずに放置されるケースも多く見られます。相続人が遠方に住んでいたり、物件の管理が困難であったりすることが原因で、こうした空き家が増えているのです。

空き家を売らない理由

空き家の所有者が売却しない理由には、感情的なつながりや経済的な問題、社会的な背景が深く関係しています。以下に、空き家を手放すことが難しい主な理由を詳しく説明します。

感情的な価値

多くの空き家の所有者にとって、家には感情的な価値が強く残っています。家を建てた親の記憶や子ども時代の思い出が詰まった家を売却することは、所有者にとって非常に困難な決断です。

特に、代々続く家族の家という意味合いが強い物件では、売却を躊躇する理由となります。家族間で物件に対する感情的なつながりや意見の相違がある場合、売却の決定に至らないことが多いです。

例えば、親が建てた家を手放すことに対する罪悪感や、思い出の詰まった家を他人に渡すことへの抵抗感が強いケースが多く見られます。

物置としての利用

空き家を売却しない理由の一つとして、物置としての利用が挙げられます。特に、所有物が多い家庭では、空き家をトランクルームの代わりに使うのが便利なようです。

例えば、季節ごとの装飾品や家具、家族の遺品など、普段使わないが捨てるには惜しい物の保管場所として空き家を利用するケースがあります。また、相続した空き家に残っている物の撤去が面倒で、そのままにしているケースも多く見られます。

解体費用が高額

解体費用の高さも、空き家を売却しない理由の一つです。金銭的に余裕がない場合、解体費用の負担は大きな障壁となります。

解体費用の相場は物件の大きさや立地、建物の状態によって異なりますが、通常150万円から200万円程度かかり、大きさや構造によりそれ以上かかる場合もあります。この費用は所有者にとって大きな経済的負担となり、多くの空き家所有者は、高額な解体費用を避けるために空き家を放置してしまう傾向があります。

相続関連のトラブル

空き家が相続の対象となると、共有者間の意見の不一致や手続きの煩雑さが売却の壁となります。親からの相続を受けて、物件の所有権が未決定の場合があります。相続により複数の共有者が発生し、意見が合わない場合、売却の決定が困難になることがあります。

一般に相続と言えば、物件を巡る争いが想像されますが、老朽化した物件では「相続したくない」という理由での押し付け合いが多く見られます。その結果、所有者がいない物件が生まれることがあります。相続手続きの複雑さや、共有者間の意見の対立が空き家の放置を招く要因となっています。

遠方にある空き家の管理

所有者が遠方に住んでいる場合、空き家の管理や売却は非常に困難です。引っ越しや相続者が遠くに住むことで、空き家が遠方にある場合は管理が難しくなります。

例えば、定期的なメンテナンスや草刈りが必要な空き家が遠方にある場合、所有者は頻繁に現地に行くことが難しく、物件の状態が悪化する可能性があります。また、家の老朽化や周囲の環境の悪化が進むケースもあり、最終的には所有者の所在が不明となることもあります。物理的な距離が管理を難しくし、空き家の放置につながることが多いです。

売却や賃貸のハードルが高い

売却や賃貸をするためには、市場価値の把握と物件のリフォームが必要です。市場価値の調査には不動産会社の査定や、物件サイトを利用して近隣の売却物件から相場を調べる方法があります。買い手や借り手を見つけるために、リフォームで価値を高める必要があり、これには内装の更新や機能的な改修が含まれます。

リフォームは、物件の魅力を高め、より良い条件での売却や賃貸を可能にします。しかし、これには費用と労力がかかるため、所有者がリフォームをためらうことがあります。特に空き家の場合、キッチンやバスルームの改装、壁の貼りなおし、省エネ設備の導入、セキュリティの強化、外観の改善などが一般的ですが、これらの改修には相当な投資が必要です。

結果として、売却や賃貸のハードルが高くなり、空き家の放置が続くことがあります。

空き家を放置するリスク

空き家を放置するリスク

空き家を放置することは、多くのリスクや問題を引き起こす可能性があります。以下に、これらのリスクとそれに伴う悪影響や経済的損失について詳しく説明します。

固定資産税の増加

空き家を放置することで、固定資産税の負担が増加する可能性があります。固定資産税の計算は、土地や建物の評価額に基づいて行われ、その税率は地域や物件の状況によって異なります。

標準的な固定資産税の税率は1.4%ですが、都市計画税(市街化区域の土地や建物に課される税金)は一般的に0.3%の税率が適用されます。これらの税率を適用すると、空き家の年間の固定資産税は数万円から数十万円になることがあります。特に、空き家が都市部に位置している場合、高い評価額に基づく税金の負担は大きくなります。

空き家が増加することで、地方自治体も税収面での影響を受ける可能性があります。放置された空き家は地域の景観や治安にも悪影響を与えるため、自治体は空き家対策を講じる必要があります。これにより、自治体は追加の財政負担を強いられることになります。

買い手が見つからない

長期間放置された空き家は、物件の劣化や周辺環境の変化により市場での競争力が低下し、買い手が見つかりにくくなります。具体的な理由としては、屋根の破損や壁の亀裂が進行し、雨漏りや害虫の発生が起こる可能性があります。さらに、給排水システムの劣化による水漏れや詰まりのリスクも増加します。空き家周辺の過疎化や商業施設の撤退による地域価値の低下も、買い手が見つかりにくくなる一因です。

これらの問題が深刻化すると、空き家の売却は一層困難になります。市場での競争力が低下するため、買い手が見つからない状態が続くと、物件の価値はさらに下がります。そのため、空き家の売却はできるだけ早めに行うことが望ましいです。

害虫や倒壊のリスク

放置された空き家は、害虫の発生や建物の倒壊のリスクが高まります。空き家にはゴキブリやネズミ、シロアリなどの害虫が発生しやすく、これが周辺の衛生環境に悪影響を与えます。特にシロアリは木造建物を食い荒らし、建物の構造を弱体化させるため、倒壊のリスクを高めます。

建物の老朽化も倒壊の危険性を高める要因です。放置された建物は、風雨や湿気の影響で徐々に劣化し、やがて構造的に危険な状態になります。こうしたリスクは近隣住民の安全にも直接的な脅威をもたらします。

これらのリスクが存在すると、物件の魅力は大きく低下し、結果として財産価値が下がる可能性があります。投資家や購入希望者はこれらのリスクを考慮して価格を決定するため、空き家を放置することは経済的損失を招くことになります。

空き家問題の解決策

空き家問題の解決策

空き家問題の解決には、さまざまな対策が考えられます。以下に、具体的な解決策を詳しく説明します。

空き家バンクの活用

自治体が運営する「空き家バンク」を活用することで、空き家を有効活用することができます。空き家バンクは、空き家の情報を一元管理し、購入希望者や賃借希望者に紹介するサービスを提供しています。これにより、空き家の流通が促進され、売却や賃貸がスムーズに進む可能性が高まります。

空き家バンクは、物件情報を詳細に掲載し、写真や動画を通じて物件の魅力をアピールします。これにより、購入希望者や賃借希望者は実際に物件を訪れる前に、物件の状態や特徴を確認できるため、意思決定がしやすくなります。また、空き家バンクを通じて自治体が提供する支援策や補助金情報も共有されるため、利用者は費用負担の軽減も期待できます。

リフォームやリノベーション

空き家の価値を高めるためには、リフォームやリノベーションが効果的です。特に古い物件の場合、キッチンやバスルームの改装、壁の貼り替え、省エネ設備の導入、セキュリティの強化、外観の改善などが重要です。これにより、物件の魅力が高まり、買い手や借り手が見つかりやすくなります。

リフォームやリノベーションを行う際には、最新の住宅トレンドやエコロジー技術を取り入れることがポイントです。例えば、オープンキッチンやバリアフリー設計、エネルギー効率の高い設備を導入することで、若い世代や高齢者にもアピールできる物件となります。また、外観の改善は第一印象を左右するため、外壁の塗装や庭の手入れも重要です。

補助金や助成金の活用

空き家の解体やリフォームには高額な費用がかかるため、自治体や国からの補助金や助成金を活用することが有効です。多くの自治体では、空き家の解体費用やリフォーム費用に対する補助金制度を設けています。これらの制度を利用することで、費用負担を軽減し、空き家の有効活用が進むでしょう。

例えば、空き家の解体費用を補助する制度では、解体費用の一部を自治体が負担することで、所有者の経済的負担を軽減します。また、リフォーム費用に対する補助金制度では、省エネ設備の導入や耐震改修、バリアフリー化など、特定のリフォーム内容に対して補助金が支給されます。これにより、空き家の価値を高め、売却や賃貸の可能性を広げることができます。

地域コミュニティとの連携

地域コミュニティとの連携も、空き家問題の解決に有効です。地域住民や自治会、地元企業と協力して、空き家を地域資源として活用するプロジェクトを推進することで、空き家の再生が進みます。例えば、空き家をコミュニティスペースや地域の交流拠点として活用することで、地域の活性化に寄与します。

また、地域住民が協力して空き家の管理やメンテナンスを行うことで、安全性や美観を保つことができます。地域全体で空き家問題に取り組むことで、社会全体の課題解決につながります。

専門家への相談

空き家の売却や管理に関する悩みを抱えている場合は、不動産会社や専門家に相談することをおすすめします。専門家は市場価値の査定や売却のアドバイス、管理のサポートなど、さまざまなサービスを提供しています。専門家のサポートを受けることで、空き家問題の解決がスムーズに進むでしょう。

不動産会社は、物件の市場価値を正確に査定し、適切な売却価格を設定することで、早期売却をサポートします。また、マーケティング戦略の立案や広告活動を通じて、物件の魅力を広くアピールします。さらに、物件の管理に関するアドバイスや、賃貸管理のサポートを提供することで、所有者が安心して空き家を手放すことができるよう支援します。

まとめ

空き家問題は、日本社会においてますます深刻化している課題です。この記事では、空き家が増加する背景と所有者が売却しない理由について詳しく解説しました。人口減少や家族形態の変化が空き家増加の主な要因であり、感情的なつながりや経済的な負担、相続トラブルなどが所有者の売却を妨げています。

さらに、空き家を放置することによるリスクについても掘り下げ、固定資産税の増加、買い手が見つからないこと、害虫や倒壊の危険性などが明らかになりました。これらのリスクは、個々の所有者だけでなく、地域社会全体にも影響を与える重大な問題です。

最後に、空き家問題の解決策として、空き家バンクの活用、リフォームやリノベーション、補助金や助成金の活用、専門家への相談、地域コミュニティとの連携などを紹介しました。これらの対策を積極的に活用することで、空き家の有効活用と問題解決が期待できます。

空き家問題への理解を深めることで、私たち一人ひとりができることを見つけ、具体的な行動を起こすきっかけとなれば幸いです。皆さんも、この問題に対する意識を高め、一緒に解決策を考えていきましょう。

売買事業部岩富係長

この記事を監修した人

後楽不動産 売買事業部 岩富

26年の不動産売買経験と宅建士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ。豊富な知識と実績で、不動産売買に関するサポートを行う。

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