不動産売却前に知っておきたい譲渡所得と税金
不動産を売却しようと考えているけれど、譲渡所得や税金の計算が難しく感じていませんか?
不動産の売買は大きな金額が動くため、税金の問題は非常に重要です。特に、売却によって生じる譲渡所得に関する正しい理解が必要となります。
この記事では、不動産売却に伴う譲渡所得と税金について分かりやすく解説します。どのような場合に税金が発生し、その税率はどれくらいなのかを具体的にご紹介します。また、節税対策についても詳しく触れ、売却前に把握しておくべきポイントをお伝えします。
記事を読み終えるころには、譲渡所得と税金に関するあなたの疑問が解消され、不動産売却に関する安心と自信が得られるでしょう。不動産売却を考える際、節税の機会を逃さず、より有利な条件で取引を進めるための準備が整います。
目次
不動産の譲渡所得と課税方法について
資産や権利を他人に譲る行為を「譲渡」と言い、譲渡によって得られた収入を「譲渡所得」と言います。特に、不動産による譲渡所得とは、不動産を売却した際に受け取った代金を指し、譲渡所得には所得税と住民税が分離して課税されます。その課税対象となるのは、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた額です。
取得費や譲渡費用を差し引いた結果マイナスとなる場合は課税対象外です。また、不動産譲渡所得に対する税額は他の所得とは分けて計算され、分離課税方式が採用されています。
ただし、例外として山林の譲渡は譲渡所得にはならず、山林所得・事業所得または雑所得とされます。
所有期間による譲渡所得の税率
譲渡所得には所得税と住民税が課せられ、その税率は所有していた期間によって異なります。短期間での売買(投機・運用目的)と長期保有後の売却では課税の考え方が異なるためです。所有期間が短いほど税率は高くなります。
所有期間の長さは、不動産を購入してから売却した実際の期間ではなく、購入した日および売却した日が属する年の1月1日が基準となります。5年を越える場合は長期譲渡所得、5年以下だった場合は短期譲渡所得となります。
2017年9月時点で、短期譲渡所得の税率は居住用・非居住用を問わず39.63%(所得税30.63%+住民税9%)です。一方、長期譲渡所得の税率は不動産の用途や譲渡所得の金額によって変わります。
- 住居用で譲渡所得が6,000万円以下の部分: 14.21%(所得税10.21%+住民税4%)
- 住居用で譲渡所得が6,000万円超の部分: 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
- 非住居用: 14.21%(所得税10.21%+住民税4%)
これらの税率には復興所得税の所得税2.1%が加算されています。
譲渡所得税の計算方法
課税譲渡所得の計算は以下の式により行われます。
特別控除とは、例えばマイホームを売却した際に、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円までが控除されるという制度のことを指します。
これは、自己が居住していた家屋、または以前住んでいた家で、住まなくなった日から3年を経過する日の12月31日までに譲渡した場合に適用されます。ただし、この特別控除を適用するためには、土地家屋ともに所有期間が10年を超えていることが条件です。また、親族間や特別な関係にある人への譲渡には適用できません。
最終的な税額は、課税譲渡所得に対して所得税と住民税の税率を掛けて算出されます。以上の内容を理解して、自己の不動産売却が最も有利となるように事前の準備をしましょう。
課税譲渡所得計算に使われる取得費と譲渡費用とは?
不動産の売却に関する税金の計算に必要な「取得費」や「譲渡費用」について、説明していきます。
取得費
不動産を売却するとき、その不動産を買ったときにどれだけお金がかかったか、それが「取得費」です。具体的には以下のものが含まれます:
- 土地や建物を買うために支払った代金
- 不動産業者への手数料
- 過去の所有者に支払った立退料
- 契約書を作成するための収入印紙代
また、不動産を手に入れた時にかかる以下の税金も含まれます:
- 名義変更のための「登録免許税」
- 不動産取得のための「不動産取得税」
さらに、購入した不動産の建物を取り壊したときの費用や、不動産を購入するために借りたお金の利息(利用開始前までの分)、建物を改良したり設備をつけたりしたときの費用も取得費に含まれます。
購入後にかかった「固定資産税清算金」も取得費です。これは、年の途中で不動産を買ったときに、前の所有者が支払っていた固定資産税の一部を買主が負担するものです。
もしも不動産を親から相続したり、長い間所有していたために取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を譲渡する際に必要となる各種費用のことです。具体的な例として、不動産業者に支払う仲介手数料、売買契約書に貼る印紙代、土地の建物を取り壊して更地にする取り壊し費用などが挙げられます。
但し、全ての取り壊し費用が譲渡費用と認められるわけではありません。例えば、買主が更地を求めているために建物を取り壊した場合は譲渡費用と認められますが、より高い価格で売るために更地にした場合は、譲渡費用と認められない場合があります。このようなケースでは、不動産業者と相談することが推奨されます。
土地を売却する前の測量費用も譲渡費用となりますが、売却を行う前の時間が過ぎすぎていた場合は、譲渡費用と認められない可能性があります。
物件を貸していた場合の立ち退き料や、初めの買主との契約を解約し、より高い価格で買い取る後の買主との契約を結ぶための違約金も譲渡費用に該当します。
売却対象の建物をクリーニングやリフォームする費用も譲渡費用として計上できますが、これらの作業が価格上昇をもたらすものである場合のみ認められます。
また、個人で買主を見つけるために掛かった広告費や交通費、宿泊費、接待費、通信費なども譲渡費用とみなされます。しかし、住宅ローンや抵当権抹消登記の費用、売却に伴う自分の引越し費用は譲渡費用にはなりません。
特例や特別控除の活用
不動産の売却によって得た譲渡所得は課税対象ですが、特別控除や特例を利用することで税金を軽減できます。以下に特別控除の例を挙げます。
- 公共事業のために土地や建物を売却した場合、特別控除として5,000万円が認められます。
- マイホームを売却したときには、特別控除として3,000万円が認められます。
- 特定土地区画整理事業のために不動産を売却した場合、特別控除として2,000万円が認められます。
- 特定住宅地造成事業のために不動産を売却した場合、特別控除として1,500万円が認められます。
- 平成21年または平成22年に取得した日本国内の土地を譲渡した場合、特別控除として1,000万円が認められます。
- 農地保有の合理化などのために土地を売った場合、特別控除として800万円が認められます。
これらの特例を適用すると、課税対象額が大幅に減額され、納税額も相応に減少します。
まとめ
不動産を売却する際には、取得費や譲渡費用など、さまざまな要素が税金の計算に影響を与えます。しかし、それら全てに税金が課せられるわけではありません。取得費や譲渡費用を差し引いた後の金額、つまり「譲渡所得額」が課税対象となります。さらに、不動産の所有期間が5年を超えているかどうかも重要な点です。これが税率の大きな変動要因となるからです。
しかし、どこまでが取得費や譲渡費用として認められ、どこからが認められないのかは専門家でも意見が分かれることがあります。そのため、売却に向けた手続きを進める際には、事前にプロフェッショナルな不動産業者や税務アドバイザーに相談することを強くおすすめします。適切なアドバイスを得ることで、より正確な税金の計算が可能となり、予期せぬ損失を避けることができます。