不動産の査定で失敗したくない! 知っておきたい査定方法や流れを解説
不動産を売却する際、まずは不動産会社に査定を依頼し、現在の不動産の価値を知る必要があります。しかしながら、不動産の査定は、ほとんどの方には馴染みのない手続きです。
そのため、「査定とは具体的に何をするものなのか」「不動産会社を選ぶ基準は?」といった疑問が生じることでしょう。本記事では、不動産売却を成功させるための第一歩である「不動産の査定」について、詳しく解説いたします。
これから不動産を売却しようと考えている方々に向けて、査定を依頼する不動産会社を選ぶ際のポイントもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産の査定とは?
不動産の査定とは、売却を希望する不動産の現在の市場価値や売却価格の見積もりを、不動産会社に算出してもらう手続きのことです。ただし、査定価格は必ずしもその金額で売れることを保証するものではなく、依頼する不動産会社が違えば数百万円の差が生じることもあります。
そのため、複数の不動産会社に査定を依頼し、納得できる価格を提示してくれる会社を選ぶことが重要です。
査定で評価されるポイント
- 住宅の築年数
- 住宅の外観
- 住宅内部の状態
- 土地の広さや形状
- 立地条件
- 周辺の環境
- 住宅ローンの残債
不動産の査定は、土地と住宅の様々なポイントを評価し決定されます。不動産会社によって算出された査定額をもとに売却価格が設定され、買い手の募集が開始されます。
不動産の査定方法は大きくわけて3つ
不動産の査定方法には、大きくわけて3つの方法があり、査定の精度が低い順に並べると以下のようになります。
不動産査定の方法(精度が低い順)
- AI査定などの匿名査定
- 机上査定
- 訪問査定
これらの査定方法にはそれぞれにメリットとデメリットがあるため、目的や状況に応じて適した査定方法を選択する必要があります。本章では、3つの査定方法について、詳しく解説していきます。
AI査定などの匿名査定
匿名査定のメリット | 匿名査定のデメリット |
査定結果を即時に得られる 売却予定がなくても利用可能 個人情報を出さなくてもよい | 結果の信頼性が低い 売却予定の人には向いていない |
匿名査定は、個人情報を公開せずに不動産の評価を受けられる便利なサービスです。物件の詳細を入力することで、過去の取引データや市場の動向に基づいた査定額を即座に知ることができます。「売却の予定はないが、どのくらいの価格で売れるかを知りたい」といった気軽な理由でも利用可能です。
特に一部のマンションについては、売買情報がデータベースに蓄積されているため、高い精度で査定結果が得られることがあります。一方で、戸建て住宅や特殊な条件を持つ物件では、周辺データに基づく簡易的な計算のみとなるため、現地特有の事情が反映されず、実際の売却価格と大きく異なる場合もあります。そのため、匿名査定はあくまで参考値として捉え、売却を具体的に検討する際には他の査定方法を併用することが重要です。
机上査定
机上査定のメリット | 机上査定のデメリット |
査定結果がすぐに分かる 複数の不動産会社を比較検討できる 遠方からでも利用できる | 訪問査定に比べると精度が低い 営業の電話が来ることがある |
机上査定は、不動産会社が物件を訪問せずに、売主からの物件情報や、近隣の過去の成約事例などをもとに査定額を算出する方法です。簡易査定とも呼ばれます。
机上査定は売却価格の概算を把握するために行い、最終的に依頼する不動産会社を選定する際の参考にもなります。
机上査定で使われる情報
- 築年数や間取りなどの物件情報
- 似た条件の物件の成約価格
- 近隣の中古物件の販売価格
- 経済状況や不動産市場のトレンド
- 土地の価格帯 など
机上査定では、早ければその日のうちに、遅くとも3日程度で査定結果が分かります。匿名査定同様、実際の不動産を確認することなく査定額を算出するため、訪問査定に比べると精度が低いのがデメリットです。
訪問査定
訪問査定のメリット | 訪問査定のデメリット |
最も市場価格に近い査定結果が得られる 不動産会社との相性が分かる | 不動産会社への対応が必要 査定結果が出るまでに時間がかかる |
訪問査定は、不動産会社が実際に物件を訪れて、状態を詳しく確認しながら行う査定方法です。現地に赴くことで、データ上では分からなかった日当たりや眺望・周辺環境なども細かくチェックでき、より正確な評価が可能となります。
訪問査定へ進むと、不動産会社との交渉もより具体的に売却活動を見越したものになるため、売却の意志がしっかり固まってから実施する方がよいでしょう。
訪問査定でチェックされるポイント
- 隣地との境界線
- 土地の接道状況や形状・地勢
- 日当たりや眺望
- 騒音や振動などの周辺環境
- 建物外観や室内の状態
- 修繕歴の有無 など
訪問査定では、不動産会社の担当者と直接話せるので、気になることがあればその場で確認できます。信頼できる不動産会社かどうかを見極めるチャンスでもありますので、しっかりコミュニケーションを取り、担当者の人柄や接客態度などもチェックしておきましょう。
不動産査定の流れ
不動産の査定は、机上査定(または匿名査定)ののちに訪問査定へと進むのが一般的な流れです。本章では、不動産査定の流れと、各項目での注意点や不動産会社を選ぶポイントなどについて詳しく触れていきます。
- 複数の不動産会社に机上査定を依頼する
- 机上査定の結果をもとに訪問査定を依頼
- 日時を決めて現地調査に来てもらう
- 査定結果を確認し依頼する不動産会社を決定する
1.複数の不動産会社に机上査定を依頼する
まずは3〜5社程度の不動産会社に机上査定(または匿名査定)を依頼しましょう。各不動産会社が提示する査定額を比較し、大まかな相場を把握する機会になります。
机上査定で最近増えてきているのが、インターネット上で一度に複数の不動産会社に査定を依頼できる、「一括査定」と言われるサービスです。手軽で便利な一方で、個人情報を複数の不動産会社に提供するため、営業の電話やメールが来る可能性もあります。
2.机上査定の結果をもとに訪問査定を依頼
机上査定の結果は、不動産会社から直接、電話やメールで伝えられます。不動産会社の電話やメールでの対応や、提示された査定価格をもとに、訪問査定に来てもらう業者を2~3社程度に絞り込みましょう。
その際、自分でも自宅の不動産相場を把握しておくと、査定価格が妥当かどうかを判断しやすく、不動産会社選択の参考になります。
訪問査定へと進む不動産会社を選ぶポイント
- 査定額の根拠を明確に説明できる
- こちらの要望をきちんとヒアリングしてくれる
- 電話やメールのやり取りが迅速かどうか
- 担当者の言葉遣いや接客態度
上記のポイントも参考にしながら、訪問査定を依頼する不動産会社を選んでください。
3.日時を決めて現地調査に来てもらう
訪問査定を依頼する不動産会社を決定したら、日時を決めて現地調査に来てもらいます。現地調査にかかる時間は、1~2時間程度です。
必要書類や質問事項をあらかじめ準備しておくと、スムーズに査定が進みます。担当者と直接対面する機会になりますので、身だしなみや言葉遣い・接客態度に違和感がないかなどチェックしておくとよいでしょう。
4.査定結果を確認し依頼する不動産会社を決定する
訪問査定が一通り終了したら、査定結果を確認し、どの不動産会社へ依頼するかを決定します。各社の査定額や売却活動中のサービス内容を比較して、自分のニーズに適した会社を選びましょう。
売却活動を依頼する不動産会社の選び方
- 根拠があり納得のいく査定額を提示している
- 契約後の売却活動の内容についても明確である
- 不動産売却に関して十分な実績がある
- 地域密着型で買い手の傾向についても把握している
- アフターサービスが充実している など
ここでの選択が、今後の不動産取引に大きく影響してきます。口コミなども参考にしながら、慎重に判断しましょう。
不動産の査定を依頼する際の注意点
本章では、不動産の査定を依頼する際に、注意しておきたいポイントについて解説していきます。不動産査定で正しい資産価値を知り、損のない不動産売却を行うためにも、これらのポイントをぜひ押さえておいてください。
必ず複数の不動産会社に査定依頼する
不動産の査定を依頼する際には、必ず複数の不動産会社に依頼しましょう。不動産会社によって査定基準や評価方法が異なり、比較検討することによって、より正確な相場感が把握できるからです。
大手の不動産会社と地域に根ざした中小の不動産会社には、それぞれ独自の強みと特徴があります。大手と中小を組み合わせて依頼することで、各社の特色を理解し、より良い不動産会社選びができるでしょう。
査定に必要な書類を準備しておく
査定に必要な書類は? | |
机上査定 | 訪問査定(査定時には不要でも準備しておくとよい書類) |
登記事項証明書 測量図や公図 建物の図面 | 不動産の登記識別情報または登記済権利証 固定資産税課税明細書 実印と印鑑証明 売買契約書や重要事項説明書 リフォーム時の契約書 (マンションの場合は)管理規約や修繕計画書 |
査定を依頼する前に必要な書類をあらかじめ準備しておくと、手続きをスムーズに進められます。法務局などで取得の手続きが必要なものもあるため、余裕を持って準備しておきましょう。
売却までにかかる時間を逆算して動き出す
不動産会社に売却を依頼して実際に売却完了するまでに、最短でも3か月、長くかかる場合は1年以上になることもあります。住み替え等で売却を検討している場合、売却時期に合わせてスケジュールを調整しなくてはなりません。
売却までにかかる時間を想定し、時間的な余裕を持って査定から売却までのプロセスを計画的に進めてください。
過去の修繕歴をまとめておく
売却物件に修繕やリフォームの履歴があれば、内容や時期をまとめておくか、リフォーム契約書等の書類をあらかじめ準備しておきましょう。査定の担当者に物件の情報を正確に伝えることで、評価が向上することもあります。
「瑕疵」があれば正直に伝える
不動産において「瑕疵」とは、土地や建物になんらかの不具合や欠陥のあることを指します。売却予定の物件に瑕疵があれば、正直に伝えておくべきです。
もし報告を怠ったまま売買契約まで進むと、契約不適合責任(買主に対し、売却物件が契約内容に適合していない場合の補償義務)で買主から損害賠償を求められるリスクがあります。のちのトラブルを避けるためにも、マイナス情報ももれなく伝えるようにしましょう。
住宅ローンの残債を確認しておく
不動産の査定を依頼する前には、住宅ローンの残債を確認しておきましょう。不動産を売却するには住宅ローンを完済しておく必要がありますが、ローン残債が査定額を上回るようだと、自己資金を準備したり住み替えローンの利用を検討しなくてはなりません。
査定額次第では、売却自体が難しいと判断される場合もあります。ローンの残債があって売却可能かどうか気になる場合は、不動産会社に相談してみましょう。
不動産査定から売却の流れで失敗しないためのポイント
本章では、不動産査定から売却へと進む際に、チェックしておくべきポイントについて解説していきます。
査定額だけで不動産会社を決定しない
不動産会社を選ぶ際に、査定額は重要な要素ではありますが、査定額だけを基準に判断するのは早計です。査定額が高いからといって、必ずしもその金額で売れるとは限りませんし、査定額だけで不動産会社の良し悪しは決められません。
選んだ不動産会社の売買経験の豊富さ、売却活動の内容、アフターサービス等を総合的に判断し、信頼できる不動産会社をパートナーとして選びましょう。
売却にかかる諸費用や税金を把握しておく
不動産売却時には、仲介手数料や登記費用・譲渡所得税などの費用が発生します。売却後の費用や税金をあらかじめ把握しておくことで、計画的な資金計画が可能になります。
予想外の出費に慌てることがないように、諸費用・税金について事前にしっかり把握しておきましょう。
売却のベストなタイミングを意識しておく
不動産の売却において、タイミングは重要なポイントの1つです。一般的に、春や秋は引っ越し需要が高まることから不動産市場が活発になり、買い手が増える傾向があります。また、駅の開通や大型商業施設のオープンといった地域のインフラ整備や開発が進むタイミングでは、周辺環境の利便性が向上するため、不動産価格が上昇する可能性があります。
ただし、地域や物件の種類によって適したタイミングは異なるため、売却を検討する際には信頼できる不動産会社に相談しながら市場の動向を把握し、適切な時期を見極めることが大切です。
情報収集を怠らず、周辺環境の変化や市場の傾向に注目して行動を計画しましょう。
不動産売買の実績がある不動産会社を選ぶ
不動産会社を選ぶ時は、豊富な売買実績を持つ会社を選ぶことが大切です。実績のある会社は地域の市場に詳しく、過去の成功事例を活かして売却活動を行っています。
また、信頼性の高い不動産会社に任せることで、売却に関する不安を減らし、担当者とコミュニケーションを取りながら売却活動を進めていけるでしょう。選ぶ際には、口コミや評価もチェックし、自分のニーズに合った不動産会社を見つけましょう。
不動産売却で損をしないためには査定が重要
本記事では、不動産査定の種類や手続きの流れ、査定を依頼する不動産会社の選び方について詳しく説明しました。
不動産の売却において、査定は最初の第一歩であり、のちに長く付き合うことになる不動産会社選びの重要なプロセスです。査定をどの不動産会社に依頼するかによって、今後の売却活動がうまくいくかどうかが懸かっていると言っても過言ではありません。
不動産売却をお考えの方は、まずは査定についての知識を身に付け、後悔のない不動産会社選びができるように動き始めましょう。