【空き家バンクの活用法】物件を登録する側のメリットと注意点を徹底解説

空き家バンクは、地方自治体が運営する空き家情報提供システムです。移住希望者や不動産購入者に空き家情報を提供する一方で、物件を登録する側にも多くのメリットをもたらします。手間やコストを抑えながら空き家を有効活用できるこの仕組みは、空き家を持て余している所有者にとって、解決策として注目されています。
この記事では、空き家バンクに物件を登録する仕組みやその具体的なメリット、注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。初めて登録を検討する方でも安心して利用できるよう、役立つ情報をまとめました。
この記事を読むことで、空き家バンクを活用するための基礎知識や、登録を通じて得られる利点を理解できます。空き家を抱える負担を軽減し、資産として活用する第一歩を踏み出してみませんか?
この記事を監修した人

岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
空き家バンクとは

空き家バンクは、各自治体が地域内にある空き家の情報を集めて公開する仕組みです。この情報を活用することで、空き家の所有者と利用希望者をつなげます。利用者は公開された物件情報を参考に、購入や賃貸契約を進めることができます。
空き家バンクの主な特徴
- 目的:空き家の有効活用や地域の活性化、移住者の受け入れ促進
- 運営主体:各自治体
- 連携先:不動産業者や宅地建物取引業協会などの専門機関
イメージとしては、SUUMOやat homeなどの不動産ポータルサイトの「自治体版」と考えると分かりやすいです。ただし、空き家バンクが提供するのは物件情報のみで、売買や賃貸契約の手続きそのものは自治体ではなく、不動産業者が行います。
空き家バンクを活用することで…
- 空き家の解消につながり、地域に新たな住民を呼び込むことができる
- 希望者にとって手頃な物件探しの選択肢が広がる
ただし、自治体は契約の成立やトラブル対応には直接関与しない点に注意が必要です。
空き家バンクに登録できる条件

空き家バンクに登録するには、物件が一定の条件を満たしている必要があります。
具体的には以下の4つの条件があります。
1. 対象エリア
登録する物件は、その空き家バンクを運営する自治体の区域内にある必要があります。
例:岡山市の空き家バンクを利用する場合、物件が岡山市内に位置していなければ登録できません。これは、各自治体が自地域内の空き家を活用する目的で運営しているためです。
2. 媒介契約の未締結
空き家バンクに登録する物件は、他の不動産業者と媒介契約(物件の仲介を依頼する契約)を結んでいない状態であることが条件です。すでに不動産業者が仲介している場合、その物件は空き家バンクに二重で登録することができません。
3. 建築基準法違反がないこと
登録する物件は、建築基準法に違反していない建物でなければなりません。
違反の例としては以下のようなものがあります。
- 建築確認を受けずに建てられた物件
- 敷地面積に対して建物が過剰に大きいなどの違反建築
- 増築や改築によって法的な規制を超えた建物
この条件により、違法状態の物件が空き家バンクに登録されることを防いでいます。
4. 自治体の判断による承認
自治体の最高責任者(例:市長や担当部署の責任者)が「登録に適さない」と判断した物件は、空き家バンクに登録できません。
不適切と判断されるケースの例
- 事業用物件:店舗やオフィス、マンション一棟売りなど一般住居向けでない物件
- 状態が悪い物件:大幅な修繕が必要で安全性が著しく欠けている物件
- 他の用途で利用予定の物件:公共施設として転用予定の建物など
これにより、空き家バンクに登録される物件が、一般の利用者にとって適切な選択肢であることを確保しています。
空き家バンクへの登録方法

空き家バンクへの登録は、自治体ごとに手続きの詳細が異なる場合があります。以下は一般的な登録手順ですが、自治体ごとの特徴や追加条件も併せてご紹介します。
1. 事前相談と申請書の提出
登録を希望する場合、まず自治体の担当窓口に事前相談を行うことが推奨されます。事前相談では、物件が登録条件を満たしているかの確認や、必要な書類の案内を受けることができます。
次に、必要書類を揃えた上で申請書を提出します。
申請時に求められる主な情報は以下の通りです。
- 所有者情報(氏名、連絡先)
- 物件の所在地や間取り
- 現在の物件状況(空き家になった経緯など)
※一部の自治体では、オンライン申請に対応している場合もあります。
2. 物件調査
提出された申請書をもとに、自治体または委託先の専門機関が現地調査を行います。
この調査では、次の点が確認されます:
- 物件の状態(老朽化、耐震性など)
- 建築基準法の適合性(違反がないか、建築確認済みか)
- 登録条件の適合性(空き家バンクの要件に合致しているか)
例として、高松市の場合、現地調査は香川県建築士会が実施するなど、調査主体が自治体ごとに異なる場合があります。
3. 不動産業者の紹介と契約
調査の結果、物件が登録条件を満たしている場合、自治体から提携する不動産業者が紹介されます。
ただし、以下のように手続きは自治体ごとに異なる場合があります。
- 直接契約が可能なケース:一部自治体では、所有者が自由に不動産業者を選び、直接契約することが認められています。
- 選定業者との契約が必須のケース:一部の自治体では、指定された取引業者以外と媒介契約を結ぶことができない場合があります。
媒介契約を締結すると、不動産業者が物件情報を整理し、契約に向けた調整を進めます。
4. 物件情報の公開
媒介契約が締結されると、不動産業者が自治体の空き家バンクシステムに物件情報を登録します。
公開される主な情報は以下の通りです。
- 物件の基本情報:所在地、間取り、築年数
- 価格情報:売買価格または賃料
- 追加情報:物件写真、周辺環境の特徴、修繕の必要性など
公開される情報の詳細は自治体や不動産業者によって異なるため、具体的な内容は事前に確認することが重要です。
空き家バンクに物件を登録する側のメリット

空き家バンクは、所有者が負担に感じている空き家を有効活用し、売却や賃貸に結びつけるための仕組みです。物件を登録することで、単に手放すだけでなく、多くのメリットを得ることができます。
1. 空き家の維持コストを削減できる
空き家を所有していると、以下のようなコストが発生します。
- 固定資産税:利用されていない建物にも課税され、年間で数万円から数十万円の負担が発生します。
- 維持管理費:放置すれば老朽化が進み、修繕や解体が必要になる場合があります。また、庭の草刈りや清掃費用もかかります。
空き家バンクを活用し、物件を売却または賃貸に出すことで、これらの負担を大幅に軽減することが可能です。売却の場合、固定資産税の支払い義務がなくなり、賃貸の場合も家賃収入で維持費を補うことができます。
2. 自治体のサポートを活用できる
空き家バンクでは、自治体が物件登録者をサポートする仕組みが整っています。具体的には以下のようなサポートが受けられる場合があります。
- 物件情報の広報:自治体が運営する空き家バンクのウェブサイトに物件情報を掲載することで、より多くの移住希望者や購入希望者にアプローチできます。
- 手続きのサポート:必要書類の準備や登録手続きに関する案内を受けられるため、初めての方でも安心して進められます。
- 物件診断:一部の自治体では、登録前に簡易的な物件調査を実施し、物件の状態や適正価格を所有者にアドバイスする仕組みがあります。
自治体の協力を得ることで、不動産取引に慣れていない所有者でもスムーズに登録や成約を目指せます。
3. 販売や賃貸の手間が軽減される
空き家バンクに登録された物件の仲介は、自治体と提携している不動産業者が担当する場合が多く、所有者が直接購入希望者と交渉する必要がありません。これにより、以下のような手間を軽減できます。
- 価格交渉や契約手続き:不動産業者が仲介役を務めるため、所有者は契約の複雑な手続きを代行してもらえます。
- 購入希望者への対応:問い合わせ対応や内覧の調整など、日常の業務に支障をきたすような作業を不動産業者に任せられます。
不動産業者が専門知識を駆使して進めるため、取引の信頼性も向上します。
4. 空き家を資産として活用できる
空き家を売却するだけでなく、賃貸物件として運用することで定期的な収入源にすることも可能です。賃貸物件としての活用を選べば、以下のようなメリットがあります:
- 家賃収入の確保:賃料収入を得ることで、固定資産税や維持管理費を補えるだけでなく、利益を生む資産として活用できます。
- 物件価値の維持:誰かが住むことで老朽化の進行を遅らせ、物件の資産価値を保つことができます。
賃貸活用を検討する場合も、空き家バンクの広報力を活用することで効率的に入居者を見つけることが可能です。
5. 地域社会への貢献ができる
空き家バンクに物件を登録することで、地域の空き家問題解消や人口減少対策に直接貢献することができます。所有者が空き家を放置せずに有効活用することで、以下のような効果が期待されます:
- 地域の景観改善:放置された空き家が減ることで、地域全体の景観が良くなり、環境価値が向上します。
- 地域の活性化:移住者や新しい住民が増えることで、地域の商業活動やコミュニティが活発になります。
空き家の活用が社会的な意義を持つことで、所有者としての満足感や達成感を得ることもできるでしょう。
6. 登録費用が安い、または無料で手続き可能
多くの自治体では、空き家バンクへの登録に費用はかかりません。登録にかかる初期コストを抑えられるため、金銭的な負担を気にせず気軽に活用できます。また、売却や賃貸が成立した際には媒介手数料が発生しますが、これは通常の不動産取引と同様の範囲内であるため、特別な負担にはなりません。
空き家バンク利用の注意点

空き家バンクは、空き家の有効活用や移住促進に役立つ便利な仕組みです。しかし、利用する際には以下の点に注意し、事前にしっかりと準備をしておく必要があります。
1. 仲介手数料が発生する
空き家バンクを通じて物件の売買や賃貸契約が成立した場合、不動産業者に仲介手数料を支払う必要があります。これは通常の不動産取引と同じルールに基づいています。
- 手数料の目安
売買の場合:物件価格の3%+6万円(税別)が上限。
賃貸の場合:賃料の1ヶ月分が一般的な上限。 - 注意点
成約に至るまでの登録費用は無料である場合が多いですが、実際の取引が成立した際に発生する仲介手数料について、事前にしっかり確認しておきましょう。
2. 入居者が見つからないリスク
空き家バンクは物件情報を公開する仕組みであり、物件が成約することを保証するものではありません。
- リスク要因
立地が不便、物件が老朽化しているなどの理由で、入居希望者や購入希望者が現れない場合があります。 - 対策
物件を登録する前に、修繕やリフォームを行って魅力を高めることが有効です。また、物件情報を魅力的に見せるために、写真や説明文を工夫することも成約率向上につながります。
3. 自治体は契約後のトラブルに関与しない
空き家バンクを通じて取引が行われた後、トラブルが発生した場合でも、自治体はそれに関与しません。トラブル解決は基本的に利用者自身の責任です。
- 例:発生し得るトラブル
- 取引成立後に物件の不具合が判明した。
- 賃貸契約後に家賃未払いが発生した。
- 対策
- 売買契約や賃貸契約の際は、信頼できる不動産業者と相談しながら、契約内容を十分に確認する。
- 必要に応じて弁護士や専門家に相談する準備もしておく。
4. 提携業者の選定に注意
自治体が提携する不動産業者が必ずしもすべて優良業者とは限りません。一部では、実績が少ない業者や対応が遅い業者が選定される場合もあります。
- 注意点
業者を選ぶ際は、次のポイントをチェックしましょう。- 過去の成約実績や地域での評判
- 提案内容が具体的かどうか(例:適切な価格設定や販売戦略)
- 問い合わせへの対応スピードや丁寧さ
- 対策
自治体から複数の業者を紹介された場合、慎重に比較してから選ぶことが重要です。また、業者が提供する媒介契約の条件についても詳細を確認してください。
5. 物件情報公開後の管理責任
物件情報が公開されると、利用希望者からの問い合わせや内覧希望が入る可能性があります。これらへの対応は基本的に所有者または媒介契約を結んだ不動産業者が行うため、手間がかかることを理解しておきましょう。
空き家バンク利用のポイント

空き家バンクを賢く活用するためには、自治体の役割や物件選びの注意点を正しく理解し、事前準備を徹底することが重要です。以下のポイントを押さえて、スムーズな手続きとトラブル回避を目指しましょう。
1. 自治体の役割を正しく理解する
空き家バンクは、物件情報を登録・公開する役割に特化しており、成約の保証や契約後のサポートは行いません。
- 重要な点
- 成約後のトラブル(例:契約違反や物件の不具合など)は、利用者自身または媒介業者が対応する必要があります。
- 自治体はトラブル解決の仲介や補償を行わないため、信頼できる不動産業者や専門家を選ぶことが鍵です。
- 対策
自治体のサービス範囲を事前に確認し、依存しすぎないように準備を進めましょう。契約内容のチェックや必要書類の整備など、自己管理を徹底することが求められます。
2. 情報収集と事前準備を徹底する
空き家バンクの運用方法や登録条件は自治体によって異なります。そのため、まずは担当窓口に相談し、具体的な手続きの流れや条件を確認しましょう。
- 事前に確認すべきポイント
- 登録条件:物件の所在地や建築基準法の適合性など、登録に必要な基準を満たしているか。
- 必要書類:物件の詳細情報や所有者情報を準備し、手続きをスムーズに進める。
- 手続きの流れ:登録から公開、成約までの具体的なプロセスを把握する。
- 追加の情報収集
- 不動産業者やリノベーション支援サービスを調べ、最適なパートナーを選びましょう。たとえば、岡山県の「as rebra」など、地域特化型のリノベーション支援を利用することで物件の価値向上が期待できます。
3. リスクを認識し、慎重に判断する
空き家バンクを活用することで、手頃な価格で理想の住まいや投資機会を得られる一方で、以下のようなリスクを認識する必要があります。
- 考慮すべきリスク
- 物件の老朽化:築年数が経過している物件では、耐震性や水回りの状態などに注意が必要です。
- 修繕費用の発生:購入後に必要なリフォーム費用を事前に見積もり、予算に組み込んでおきましょう。
- 立地条件:交通アクセスや周辺環境を確認し、長期的な生活や投資の視点で判断する。
- リスク回避のためのアクション
- 専門家(建築士やリフォーム業者)による物件調査を依頼し、物件の状態を正確に把握する。
- 不動産業者やリノベーション会社と連携して、リスクを最小限に抑える計画を立てる。
まとめ
今回の記事では、空き家バンクの仕組みや登録方法、利用時の注意点について詳しく解説しました。空き家バンクは、空き家を有効活用するための新たな選択肢を提供してくれる便利なシステムですが、その利用には仕組みや自治体ごとのルールを正しく理解することが欠かせません。
特に、空き家バンクは物件情報を提供するシステムであり、自治体が売買や賃貸契約後のトラブルに関与するわけではありません。そのため、登録者自身がリスクや手続きにしっかり対応することが求められます。信頼できる不動産業者の協力や、物件の状態確認と適切な価格設定がスムーズな活用のポイントです。
空き家バンクは、所有者にとって空き家を負担から資産に変える大きなチャンスです。今回の内容が、登録を検討している方にとって役立つ情報となり、空き家バンクを活用した新たな可能性の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。空き家バンクを通じて、空き家の有効活用と地域社会への貢献を目指してみてはいかがでしょうか。
