終活において重要な不動産整理の方法は?生前贈与についても解説
「終活」とは人生の最期を迎えるにあたり、少しずつ身辺整理など準備を進めておくことをいいます。エンディングノートの作成や断捨離、遺言書の作成などを行う終活の中で、「不動産の整理」は早めに着手しておきたい項目です。
本記事では、終活における重要な要素である「不動産の整理」について、具体的な方法や何のために行うのか、それぞれの方法のメリットやデメリットなどについて詳しく解説しています。ぜひ最後までお読みいただき、ご家族で不動産について話し合うきっかけになれば幸いです。
目次
終活で不動産整理をするべき理由
終活の中でも、不動産の整理は必ずやっておきたい事項です。不動産の整理がなぜ重要なのかというと、資産の中で大きな割合を占めることが多く、相続時のトラブルが起こりやすいからです。
不動産を適切に整理することで、残された家族がスムーズに手続きを進められるようになり、親族間での係争も避けられます。本章では、終活で不動産を整理するべき理由について、詳しく解説していきます。
財産分与トラブルや家族への負担を減らせる
不動産は現金のように均等に分けることができないため、財産分与の際にトラブルになりがちです。そこで、終活で不動産整理をすることで、将来家族が行うことになる財産分与やそれに伴う遺品整理、空き家の維持管理などの負担を減らすことができます。不動産に関する書類や所有状況を整理しておくだけでも、家族の相続税対策や遺産相続トラブルの防止になるでしょう。
空き家の維持管理は、残された家族にとって大きな問題です。自分が亡くなった後の自宅をどうするのか、誰が引き継ぐのかをよく話し合い、家族間でお互いの意思を確認しておくことが重要です。
老後生活の資金になる
多くの人が老後の生活に不安を感じる中で、不動産を売却してまとまったお金が手に入れば、老後生活にゆとりをもって暮らせます。自宅を手放して賃貸に移り住めば、固定資産税や都市計画税などの税金は不要になるのもメリットです。
しかしながら、不動産の売却には時間も費用もかかります。売却のために必要な費用や自宅の推定売却価格を事前に調べておいて、実際いくらくらい手元に残るのか把握しておくとよいでしょう。
売却が難しい「放置空き家」化を防げる
相続人がいない場合や、相続人が遠方に住んでいて生活基盤が確立している場合には、売却が適切な選択となります。これは、自宅を持ち続けることで、将来的に所有者がいなくなった際に「放置空き家」となり、周囲に迷惑をかける可能性があるためです。
相続人からの要望がない場合、将来空き家になる可能性がある自宅については、早めにその行く末を考慮する必要があります。不動産に関する相談は、不動産会社であれば幅広く受け付けていますので、自宅の将来に不安を感じている方は早めに相談することをおすすめします。
住み替えのメリット
高齢になると足腰が弱くなるため、階段の上り下りや入浴時に転倒の危険があります。終活で不動産を整理し、バリアフリー化された安全で便利な家に住み替えることは、病気や怪我から身を守ることにもつながります。
また、田舎の広い家から断捨離してコンパクトなマンションに住み替えると、将来子どもが相続した際の管理負担も減らせるでしょう。
終活で不動産整理する主な方法3つ
終活で不動産を整理する方法として主なものは以下の3つです。
- 売却
- 生前贈与
- 遺言書での相続
本章では、それぞれの具体的な方法やメリットデメリットについて詳しく解説していきます。
売却
終活で不動産を売却する場合は、以下の3つの方法が主に選択されます。
不動産を売却する方法
- 中古住宅(または古家付き土地)として売却する
- 更地にして売却する
- 不動産会社に買い取ってもらう
中古住宅(または古家付き土地)として売却する
物件が部分的なリフォームでも住める状態であれば、中古住宅として売却します。また、フルリフォームや建て替えが必要なほど古い家でも、古家付き土地として売却すれば、解体費用は不要です。
自宅を売却する場合、まずは不動産会社に仲介を依頼し、買い手を探すのが一般的です。しかしながら、簡単に買い手が見つからない場合や、希望通りの金額で売れない場合もあります。
自宅の売却を考えているならば、周辺の状況に詳しい地元の不動産会社に相談し、アドバイスを受けながら進めていくとよいでしょう。
更地にして売却する
不動産の状態によっては、更地にして売却したほうが売り出しやすいという場合もあります。
更地にして売却したほうが良いケース
- 建物が老朽化している
- 建物の構造や用途が法令に違反している
- 立地条件が悪い
- 賃貸に不向きなエリアである
- 空き家を管理する負担が大きいあ
- 古家の建て替え費用が修繕費用を下回る
更地にすることで用途が広がり、買い手が見つかりやすくなる一方で、解体費用の負担や固定資産税が上昇するといったデメリットもあります。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社に自宅や土地を買い取ってもらうことも、不動産売却の方法のひとつです。買い手がいつ見つかるか分からない通常の売却に比べ、買い手を探す手間が省けて、スピーディに現金化できるのが買取のメリットです。
不動産会社の買取の場合、すぐに買取してもらう場合もあれば、期間を決めて仲介での売却活動を行い、売れなかった場合は買い取ってもらえる「買取保証」もあります。買取の相場は仲介の6〜8割程度ですので、通常より安く売却することになっても早く売りたいという方におすすめです。
生前贈与
終活として不動産を整理する方法のふたつ目は、生前贈与です。生前贈与とは、被相続人が生きているうちに財産を相続人に分け与えることで、不動産を受け継いでほしい人に確実に渡すことができます。
また、相続人が複数いる場合は、相続人間での遺産トラブルなども回避できます。一方で生前贈与のデメリットは、贈与を受ける側に贈与税や不動産取得税、登録免許税がかかる可能性がある点です。
相続税だと使える特例が贈与税には適用されないこともあるため、税金面での有利不利を十分に検討した上で生前贈与を行うことが重要です。
生前贈与のメリット
- 贈与する相手を自分で選べる
- 任意のタイミングで贈与できる
- 相続よりも手続きがスムーズ
- 相続税の節税対策になる
生前贈与は相続と違い、任意のタイミングで自分が選んだ相手に送ることができます。相続だと、遺言書に記載してある内容が必ずしも実行されるとは限らず、相続人らの協議により変更されてしまう可能性もあります。
確実に財産を分与したい相手がいる場合は、遺言書での相続よりも生前贈与がよいでしょう。
生前贈与のデメリット
- 贈与税がかかる
- 名義変更などの事務手続きに諸費用がかかる
- 相続税だと使える特例制度が使えない場合もある
- 税務署に否認されることがある
- 特別受益とみなされる場合がある
贈与税の税率は相続税よりも高く設定されることが多いため、むやみに大きな贈与を行うと、結果的に相続税よりも高い税負担がかかる可能性があります。また、土地や建物など不動産を贈与した場合、贈与された側には不動産取得税や登録免許税を支払う必要があります。
生前贈与を検討する際は、そのメリットとデメリットをしっかりと把握し、贈与者と受贈者の両者がきちんと話し合い、お互いに納得できる形で進めることが大切です。
遺言書での相続
遺言書なしでの相続の場合、相続人間で不動産の分割や処分・管理方法などでのもめ事が起こりがちです。生前に家族で話し合ったうえで遺言書を作成しておけば、万が一の際には遺言書通りに相続すればよいので、基本的にはスムーズに遺産の分配が行われます。
ただし、相続税が高額になることが予想される場合、相続人の負担が大きくなりすぎないように、納税資金も同時に相続させるなどの対策も必要でしょう。
終活で不動産整理した後の住まいはどうする?
自宅を売却したり生前贈与で手放す際には、次に住む場所を事前に確保しておかねばなりません。子ども世帯との同居や賃貸物件への引越し、老人ホームへの入居など、具体的な計画を立ててから売却を進めることが重要です。
賃貸物件へ引っ越す
高齢になると、健康面や金銭面の不安要素から、賃貸物件が借りにくくなる場合があります。入居審査がスムーズに進めるために、連帯保証人を立てたり家賃保証会社を利用したりする場合もあるので、協力してもらえる身内がいたらお願いしておきましょう。
また、高齢の方で賃貸物件が借りづらい方のために、高齢者向け有料賃貸住宅という制度もあります。ただし、入居希望する人が多いと抽選になるため、必ずしも希望するタイミングで入居できるとは限りません。
高齢者向け優良賃貸住宅への入居を希望する場合は、自治体のホームページなどから情報を得ておきましょう。
老人ホーム等への入居
健康状態に不安があり一人暮らしや夫婦だけでの生活が難しい場合や、介護サービスを利用しながら生活したいという場合は、老人ホームへの入居も検討してみましょう。入居条件は、年齢、要介護度や認知症の有無、収入などで施設ごとに異なります。
要介護認定を受けていない人であれば、自立型老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も選択可能です。サービス付き高齢者向け住宅は、自立度の高い人でも入居できる施設で、制度上は賃貸住宅にあたります。
外出や外泊に制限がなく、自宅と同じように暮らせる自由度が高い施設です。入居を希望する施設があれば、最寄りの地域包括支援センターや自治体の福祉課、民間の紹介窓口などで相談してみましょう。
終活で不動産整理するとかかる費用は?
本章では終活で不動産整理することでかかる費用について、詳しく解説していきます。
自宅の片づけ、不用品整理
自宅を売却する、もしくは生前贈与する場合も、不用品をあらかじめ整理して身軽になっておくと、引越しの費用も少なく済みますし手間も時間も節約できます。自宅の片づけや不用品整理の際に必要な費用の概算は、以下の通りです。
自宅の片づけや不用品整理の方法 | かかる費用の概算 |
---|---|
自治体で粗大ごみ回収 | 0円~2,000円程度(粗大ごみ1つにつき) |
不用品回収業者に依頼 | 軽トラック1台→8,000円~15,000円程度 2tトラック /1台→25,000円〜39,000円程度 |
リサイクルショップに持ち込む | 0円 売れればプラスになる場合もあるが、処分費用が取られることもある |
自治体での粗大ごみ回収は、基本的に安く不用品を処分できます。ただし、粗大ごみの回収費用や不用品回収業者の料金などは、住んでいる自治体や地域により差があります。
自分で集積所までごみを運んだり、粗大ごみセンターへ直接車で持ち込んだりすることは、体力に自信のない高齢者には難しい作業です。安全面も考慮して、なるべくプロの回収業者に任せた方がよいでしょう。
自宅の解体費用
自宅があった土地を更地にして売却する場合、解体費用がかかります。一戸建ての家屋を解体する費用は、木造住宅の場合1坪あたり3~4万円程度で、30坪の木造住宅だと約90~120万円です。
この金額は基準となる金額であり、道路幅が狭い場所や階段が多く重機が入れない家は、手作業での解体になるため費用は高くなります。ほかにも、塀の撤去や樹木の伐採・伐根などの付帯工事が多い場合も、費用は割高になります。
自宅売却の諸費用と税金
自宅を売却する際には、不動産会社などに支払う諸費用と売却に伴う税金の負担があります。
内訳 | 詳細 | 費用 |
---|---|---|
仲介手数料 | 不動産業者に支払う手数料 | 売却価格の3% + 6万円(税別) |
登記費用 | 所有権移転登記にかかる費用(司法書士の報酬) | 数万円 |
印紙代 | 売買契約書に貼付する印紙の費用 | 契約金額に応じて変動 |
引っ越し代 | 引越し代、不用品処分費、新居の諸費用など | 数万円~数十万円程度 |
譲渡所得税 | 不動産を売却して得た利益に対して課税される税金 | 譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 諸経費) |
不動産の売却額から上記の諸費用と税金を引いた額が、手取りの額になります。上記の他にも解体して更地にする場合は解体費、リフォームしてから売却する場合はリフォーム費などもかかります。
各物件によって、必要になる費用は異なります。どのような費用がかかるのか詳しく知りたいという方は、不動産会社に相談してみましょう。
遺言書作成費用
遺言書を作成するときは、相続内容や資産状況によって作成方法が変わります。
遺言書の作成方法 | 費用 |
---|---|
自筆証書遺言として作成 | 0円 |
公正証書遺言として作成 | 2万~5万円程度 |
弁護士や行政書士に依頼 | 10万~20万円程度から |
銀行や信託銀行に依頼 | 140万~150万円程度から |
遺言書の作成費用は、作成方法によって大きく異なります。遺産が高額な場合や遺言の内容が複雑な場合は、費用がさらに上がる可能性もあるので、事前に見積もりを取ることをおすすめします。
終活で不動産の整理をするなら、家族全員が納得できる方法で
本記事では、終活の際に重要なポイントとなる「不動産整理の方法」について詳しく解説しました。不動産整理の方法は主に、「売却」「生前贈与」「遺言書での相続」の3つに分けられます。
いずれの方法を選んだとしても、家の問題は自分ひとりの意見ではなく、家族全員の意向をよく聞いて決定することが重要です。加えて、プロのアドバイスがあれば不動産の売却や贈与など、難しく感じてしまう部分も円滑に進めていけるはずです。
終活で不動産の整理を考える際は、家族や不動産会社の担当者とともに、全員が納得できる方法を考えていきましょう。