田舎の空き家を宿泊施設に?空き家活用事例と成功の秘訣
住む人がいなくなり放置されている空き家の増加は、全国的に深刻な問題となっています。この記事をお読みの方も、相続などで手に入れた空き家をどうにかして活用したいと苦慮されているのではないでしょうか?
空き家の活用方法には売却や賃貸などが一般的ですが、宿泊施設としての活用が今注目を集めています。
本記事では、田舎の空き家を活用したいとお考えの方に向けて、空き家を宿泊施設として活用するメリットやデメリット、実際の活用事例などを紹介しています。また、宿泊施設以外の活用方法や、自治体の支援制度なども取り上げ、空き家を活かすための幅広い選択肢をお伝えします。
不要になった空き家を活用しながら、収益を得られる方法はたくさんあります。これからの空き家の活用方法について、一緒に考えていきましょう。
この記事を監修した人
岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
目次
空き家を宿泊施設として活用するメリット
空き家は放置したままだと老朽化が進み、最終的には取り壊すしかなくなってしまいます。なるべくならば、空き家を解体や売却以外の形で活用していきたいとお考えならば、宿泊施設として活用してみてはどうでしょうか。
本章では、空き家を宿泊施設として活用する際のメリットについて解説していきます。
メリット①空き家から収益を得られる
空き家はそのままにしておくと、固定資産税や都市計画税などの税金や維持管理費がかかります。空き家を宿泊施設として活用すると、所有しているだけでマイナスになってしまう空き家から、収益を得られるようになるメリットがあります。
空き家にかかる税金は、標準的な庭付き一戸建てのケースで年間10数万円程度になり、その他にも維持管理費として光熱費や火災保険料・庭の剪定費用などが必要です。空き家を宿泊施設として利用すると、こうした維持費を収益で賄えるようになり、プラスの資産へと転じる可能性もあるのです。
メリット②空き家の資産価値が高められる
空き家を宿泊施設として活用すると、建物の資産価値が高められることもメリットのひとつです。宿泊施設としての運営が軌道に乗っていれば、のちに売却する際に高く売れる可能性があります。
近年は海外からの観光客が増えたことにより、民泊の需要も急速に拡大しています。古い日本家屋は外国人観光客からの人気が高く、立地次第では高収益が期待できるでしょう。
メリット③地域の活性化に貢献できる
空き家を宿泊施設として運営することになれば、国内外から多くの人が訪れることになります。宿泊目的で訪れた人々は、施設の近所にある飲食店や商店で食事をしたりお土産を購入したりするものです。
もとは空き家だった宿泊施設がきっかけで、地域の経済が潤い活性化に貢献できるかもしれません。宿泊施設の周辺が自然豊かな場所ならば、農業体験なども体験オプションとして加えると、地域ぐるみでの活性化につながるでしょう。
メリット④初期投資が少なく済む
空き家を宿泊施設にすることの金銭的なメリットとして、初期費用が少なくて済むという点もあります。空き家があれば新たに宿泊施設を建築する必要がなく、必要最低限のリフォームで開業できます。
飲食店の開業だとキッチンの改装などが必要ですが、宿泊施設であれば元々の住宅の間取りを大きく変えずにスタートできます。空き家を活用して事業を始めたい場合は、初期投資が少なく済むというメリットがある、宿泊施設の運営も検討してみましょう。
ただし、宿泊施設への転用には、消防法や建築基準法、旅館業法などの規定を満たすためのリフォームが必要になることがあり、その費用は物件の状況や規模により大きく異なります。事前に詳細な費用見積もりを行うことが重要です。
空き家を宿泊施設として活用するデメリット
空き家を宿泊施設として活用する際には、デメリットについても考慮しておかなくてはなりません。メリットとデメリットを比較して、デメリットの方が大きいと判断される場合は、宿泊施設以外の活用方法を検討してみるべきです。
本章では、空き家を宿泊施設として活用する際に、どのようなデメリットがあるのかを詳しく解説していきます。
デメリット①営業日数の制限
2018年から民泊新法が施行され、これまで旅館業法でしか認められていなかった宿泊施設の運営が、簡易的な手続きでできるようになりました。ただし、民泊新法には営業日数の制限があり、年間の営業日数が180日に定められています。
営業日数が制限されていることで、宿泊希望者がいるのに泊められないといった事態も起こり得ます。制限を解除して180日以上営業を行いたい場合には、従来通りの旅館業法での許可申請が必要です。
ただし、旅館業法の基準を満たすためには、建物の構造や設備に大幅な変更が必要になる場合があります。そのため、事前に十分な準備と確認を行うことが重要です。
デメリット②トラブル発生のリスク
宿泊施設で起こるトラブルとは?
- 夜間の騒音やゴミの放置
- 備品の盗難や破損
- 予約のキャンセルやダブルブッキング
- 外国人観光客とのコミュニケーション問題
空き家を宿泊施設として活用するとなると、様々なトラブルが発生するリスクがあります。特に外国人観光客の受け入れを行う場合は、文化の違いや言語の壁などでトラブル発生の可能性も高くなるでしょう。
騒音やゴミ問題は、近隣住民にも迷惑が及んでしまいます。トラブルが常態化している場合は、施設の運営を継続することも難しくなってしまうでしょう。
宿泊施設を運営する上で起こりうるトラブルへの対策は、十分に取っておく必要があります。
デメリット③リフォーム費用や維持管理費用
空き家の老朽化が進んでいた場合は、宿泊施設へ転用するためのリフォーム費用がかさむ可能性があります。また、宿泊者がいない時期にも施設の維持管理費は必要です。
180日の制限をなくすために旅館業法の認可を受けようとしても、リフォームなしだと部屋の広さや消防設備・トイレの数などが基準に満たない場合もあります。大幅なリフォームは、費用を回収できない可能性もあるため慎重に行う必要があるでしょう。
空き家を宿泊施設に!実際の活用事例
本章では、実際に空き家を宿泊施設として活用している事例について紹介します。
岡山市で茶道教室を民泊施設へリノベーション
https://www.kenbiya.com/ar/ns/jiji/investor/7044.html
100万円で購入した廃屋をリノベーションし、高単価の民泊施設として活用している事例です。岡山駅から車で10分の立地ながら、県外からの利用者を中心に高評価を得ています。
築80年の長屋を人気ホテルに「Bamba Hotel Tokyo」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000097061.html
昭和20年代に建てられた長屋を改築して、一棟貸しホテルとして生まれ変わらせた事例です。インバウンド観光客だけでなく、日本国内からの旅行客からも支持を集め、開業から10周年を迎えています。
インバウンドの受け皿として空き家活用
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000146141.html
東京や埼玉の人気観光地まで電車1本で行ける利便性を武器に、インバウンド客中心に利用されている宿泊施設です。
3つの事例に共通する成功のヒント
これらの事例から見えてくる、空き家を宿泊施設として活用するためのヒントを以下にまとめました。どれも、実際に空き家活用を検討する際に参考になるポイントです。
1. 物件の魅力を最大限に引き出す
3つの事例すべてに共通しているのは、物件が持つ独自性を効果的に活かしている点です。
例えば、歴史ある茶道教室や築80年の長屋といった「昔ながらの日本家屋」を活用し、宿泊者に特別感のある体験を提供しています。観光客はこうした「ここでしか味わえない」宿泊体験に価値を見出します。
2. 立地条件の強みを活かす
立地は宿泊施設の成功を左右する大きな要因です。今回紹介した事例では、いずれも交通の利便性が高い場所に物件があります。観光地へのアクセスが良い物件や、都市から近い静かな環境など、ターゲット層に合った立地を選ぶことが重要です。
3. 適切なリノベーション計画
茶道教室を民泊に改修した事例では、物件購入費用を100万円に抑えた上で、費用対効果の高いリノベーションを行っています。築80年の長屋でも、建物の趣を残しつつ必要な改修を実施。こうした適切な投資計画が、収益性を高めるカギとなっています。
4. トレンドを捉えたターゲット設定
外国人観光客の需要に対応した宿泊施設の成功例が目立ちます。インバウンド観光客をターゲットにすることで、地域の観光資源や文化を活かした独自性のあるサービスを提供しています。増加傾向にあるターゲット層を狙うことで、収益を安定させることが可能です。
宿泊施設以外の空き家活用事例
空き家をどうにか活用したいが、宿泊施設は手間もコストもかかりすぎると考える方も多いと思います。そこで、本章では宿泊施設以外で空き家を活用する方法を紹介していきます。
賃貸物件として貸し出す
空き家を賃貸物件として貸し出す場合、不動産会社に依頼すると入居者の募集やトラブル対応などを行ってもらえるので、所有者の負担を軽減できます。空き家所有者は不動産会社に管理委託費として家賃の5%を支払うのが一般的です。
サブスク住宅として登録する
サブスク住宅とは、定額制で様々な物件に住めるサービスです。通常であれば賃貸住宅は年単位での契約ですが、サブスク住宅の場合数週間から数か月の短期間で住み替えていくことを前提にしています。
観光客や地方移住希望者のお試し、リモートワーカーなどが主な利用者です。所有する空き家をサブスク住宅として登録し、必要な家具家電を設置すると貸し出しを開始できます。
コワーキングスペースとして運営する
リモートワークの普及により、作業場所を提供するコワーキングスペースが都市部だけでなく地方にも広がりを見せています。PC用の電源やWi-Fiなどのインターネット環境、プリンターなどの設備と、落ち着いて作業に集中できる空間が用意できれば、空き家をコワーキングスペースとして活用することは十分に可能です。
ただし、運営しようとしているエリアで、コワーキングスペースのニーズがどれくらいあるかを事前によく調査してから始めることが大切です。
レンタルスペースとして運営する
レンタルスペースとは、様々な用途に利用可能な場所を貸し出すサービスです。一戸建ての場合、一軒まるごと貸し出すケースと、部屋ごとに貸し出すケースがあります。
レンタルスペースの用途はスペースの広さや設備などにより異なり、パーティや推し活の集まり、コスプレ撮影、ギャラリーやライブ会場などに利用されることもあります。民泊と違い宿泊を伴わないため、認可や届け出は不要です。
シェアハウスに改築する
都市部では、なるべく家賃の安い所に住みたいという若い人を中心に、シェアハウスの需要が高まっています。空き家の部屋数が十分にあり、駅から近いなど立地が良ければ、シェアハウスに改築して運営するのもよいでしょう。
シェアハウスは、建築基準法の上では寄宿舎として扱われます。シェアハウスを運営しようとする場合は、最初に所有している空き家がシェアハウスとして活用可能かどうかを自治体の建築担当課に確認しましょう。
古民家カフェやバーとして活用する
古民家カフェやバーは隠れ家的な魅力があり、人気が高まっています。もしも「飲食店をやってみたい」という夢があるのならば、空き家を改築しカフェやバーとして開業してみてはどうでしょうか。
ただ、カフェやバーは比較的気軽に始められることから競合となる店舗も多く、しっかりとしたコンセプトや運営計画がないと、長くは続きません。地域の人に愛されるお店にするためには、運営資金の準備も含めて事前にじっくり時間をかけて取り組む必要があります。
地域のコミュニティスペースとして活用する
地域住民の関係性が希薄になっている今、空き家を地域の人々の交流の場として開放するのもよい案です。収益はほとんど期待できませんが、人の出入りがあることは空き家の老朽化を遅らせるために役立ちます。
地域の人から喜ばれる施設として空き家を活用することで、所有者自身も地域住民との密な関りを持てるようになり、空き家を維持するモチベーションとなるでしょう。
空き家を活用したい!利用できる制度や助成金はある?
空き家を宿泊施設やその他の用途に活用したいときに、リフォーム費用などで使える助成金があると助かります。本章では、自治体が行っている空き家活用の支援制度や、助成金について詳しく解説していきます。
セーフティネット登録住宅の改修費支援
空き家を賃貸物件として活用する際に、低額所得者・高齢者・障害者や子育て世帯などの住宅確保要配慮者を対象としている「住宅セーフティネット制度」に登録すると、改修工事費用や家賃補助制度が利用できる可能性があります。
空室対策として有効ですが、家賃滞納などの住民トラブルのリスクもあります。住宅セーフティネット制度利用の際には、事前に空き家がある自治体で制度を利用できるか確認しましょう。
参考:報道発表資料:空き家等を改修してセーフティネット住宅とする事業者を支援します!~「令和6年度 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」の募集を開始~ – 国土交通省
空家等適正管理支援事業(リフォーム)
各自治体で、空き家の再生改修にかかる経費の一部を補助する事業が行われています。岡山市では、「空家等適正管理支援事業(リフォーム)」として、空き家改修後に賃貸や売却、自己居住する場合などに助成金を利用できます。
補助金額の上限は50万円で、工事に要する金額の3分の1が助成されます。対象となる空き家の条件など、詳しくは岡山市のホームページにてご確認ください。
参考:空家等適正管理支援事業(リフォーム) | 岡山市
空き家バンクへの登録
空き家バンクとは、空き家を売却または貸し出したい人と、空き家の活用を希望する人を結びつける目的で、自治体を中心に運営されています。仲介手数料がかからないことや、活用希望者が見つかりやすくなることがメリットです。
空き家バンクを利用して空き家の有効活用を図り、地域の活性化や定住促進に貢献しましょう。
【空き家バンクの活用法】物件を登録する側のメリットと注意点を徹底解説
空き家バンクは、地方自治体が運営する空き家情報提供システムです。移住希望者や不動産購入者に空き家情報を提供する一方で、物件を登録する側にも多くのメリットをも…
まとめ:空き家活用における成功の秘訣は?
空き家の活用には宿泊施設をはじめ、様々な方法があることをお伝えしました。ですが、空き家活用はリフォームに多額の資金が必要になることもあり、慎重に検討する必要があります。
空き家活用を成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 地域のニーズに合わせて活用方法を選ぶ
- 自治体の助成金を利用する
- 不動産会社や工務店などプロのアドバイスを受ける
まずは所有している空き家の状況を見直し、地域での活用事例を参考にすることが第一歩です。迷ったときは、専門家や自治体の支援を活用しながら、無理のない計画を進めていきましょう。
空き家を適切に活用すれば、地域の活性化や新たな収益源にもつながります。空き家を「負担」ではなく「資産」に変える一歩を踏み出してみてください。
また、当社ではリフォームやリノベーションにも対応しております。空き家を活用したいけれど具体的な方法が分からない、どれくらいの費用がかかるのか知りたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。お客様の空き家を「負担」から「資産」に変えるお手伝いをいたします!