不動産売却に必要な登記事項証明書(登記簿謄本)とは?取得方法や必要になるケースを解説

不動産を売却する際には、様々な書類を準備する必要があります。その中でも「登記事項証明書(登記簿謄本)」は非常に重要な書類です。
本記事では、登記事項証明書の基本的な内容から、取得方法、必要となる具体的な場面などについて詳しく解説します。これから不動産を売却しようとしている人や、購入する予定がある人はぜひとも知っておいてほしい内容です。
登記事項証明書を正しく理解することで、スムーズな売却や購入の一助となるでしょう。
この記事を監修した人

岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
不動産売却に必要な登記事項証明書(登記簿謄本)とは?

登記事項証明書は、不動産の権利や状態について法務局が保管している公的な記録を証明する書類です。不動産の売却手続きでは、この書類を通じて所有権や抵当権などの状態を確認し、取引が安全に行われます。
2004年に不動産登記法の改正が施行され、不動産登記簿謄本から現在の登記事項証明書に名称が変更されました。この改正では登記制度電子化の一環として従来の紙ベースの登記簿から、デジタルデータとして管理される登記事項証明書に移行しています。
登記事項証明書に記載されている内容
不動産登記は、私たちにとって重要な土地や建物の位置や面積、所有者の住所や名前を公的な帳簿(登記簿)に記録し、それを一般に公開することで権利関係などが明らかにし、取引の安全性と円滑さを確保する役割を果たしています。登記所で指定の請求書を提出すると、誰でも登記事項証明書を見ることができます。
登記事項証明書に記載されているのは、土地家屋に関する以下の情報です。
- 不動産の所在(場所)
- 不動産の地番・地目
- 土地の面積
- 登記の日付
- 不動産所有者の住所・氏名
- 所有権移転の履歴(売買、相続など)
- 不動産の権利関係(所有権、抵当権、賃借権など)
不動産売却前には登記事項証明書を取得して、土地の情報や所有者について現況との違いがないかを確認しておきましょう。
登記事項証明書の構成
登記事項証明書は、「表題部」「甲区」「乙区」の3つのパートで構成されています。
項目 | 記録内容 | 詳細 |
---|---|---|
表題部 | 土地:所在、地番、地目(現況)、地積(面積) 建物:所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積 | マンション等の場合は敷地権についての記録が含まれることがある |
甲区 | 所有者に関する事項 | 所有者が誰で、取得時期や取得原因(売買・相続など)が記録され、所有権に関する仮登記や差押えなども含まれる |
乙区 | 抵当権など所有権以外の権利 | 抵当権設定、地上権設定、地役権設定など、所有権以外の権利に関する内容が記録される |
登記事項証明書の種類(3種類)

登記事項証明書には3つの種類があり、利用目的に応じて使い分けられます。
- 全部事項証明書: 全ての登記情報が記載されたもの。
- 現在事項証明書: 現在有効な内容のみを記載したもの。
- 閉鎖登記簿謄本: 過去に閉鎖された登記簿の写し。
※土地の形状や面積などを確認したい場合には、「地積測量図」などの附属図面を参照しますが、これは登記事項証明書とは別の書類です。
全部事項証明書
登記簿に記載されている全ての情報が記載された証明書が、全部事項証明書です。売買契約や相続手続きなど、全ての登記情報を確認する必要がある取引で使用されます。
不動産売却の場合は、買主や金融機関に提出することが一般的です。
現在事項証明書
登記簿に記載された情報のうち、現在有効な情報のみを記載した証明書が現在事項証明書です。過去の記録は含まれず、最新の登記内容だけを確認できます。
抵当権の設定状況や現在の所有者名など、現行の権利状況を確認するために使用されます。
閉鎖登記簿謄本
古い権利関係や登記変更の履歴を調べる際に役立つのが、閉鎖登記簿謄本です。既に閉鎖された登記簿の内容が記載されており、過去に抹消された情報も確認できます。
過去の登記履歴を追跡したい場合や、特定の取引履歴を確認する場合に使用されるものです。
登記事項証明書の取得方法

本章では、登記事項証明書の取得方法について解説していきます。窓口での取得だけでなく、郵送やオンラインなどでの取得も可能ですので、自分に合った方法を選びましょう。
取得前に確認しておくこと
登記事項証明書の取得前には、不動産の正確な所在地や地番を確認しておきましょう。これらの情報がないと、証明書を取得するのが困難になる場合があります。
法務局の窓口で取得する
最寄りの法務局の窓口(または法務局証明サービスセンター)で申請書を提出し、証明書を取得します。その場で書類を受け取れるため、急ぎの場合には便利です。法務局の窓口の業務取扱時間は、平日の午前8:30から午後5:15までです。
「法務局証明サービスセンター」は、市役所などの法務局庁舎外に設置され、登記に関する各種証明書を取得できる窓口です。不動産や商業登記の登記事項証明書、法人の印鑑証明書などがその場で発行可能です。
タッチパネル式の機械で簡単に請求でき、分からない点があればスタッフが丁寧にサポートしてくれます。ただし、交付業務のみを取り扱い、登記申請の受付は行っていないので注意しましょう。
郵送で取得する
登記事項証明書は郵送による申請もできます。ただし、受け取りまでに時間がかかる点に注意が必要です。
申請書を郵送する際は、申請書を入れた封筒の表に「不動産登記申請書在中」と記載し、管轄の法務局に書留郵便で送付します。登記完了時に書類の返還を郵送で希望する場合は、宛名を記載した返信用封筒と書留郵便のための郵便切手を同封します。
オンラインで取得する
法務局のオンラインシステム「登記ねっと」を利用すれば、証明書をインターネット上で簡単に取得申請できます。オンライン申請の場合には、平日の午前8:30から午後21時まで請求可能なので、時間内に窓口へ行けない人にも便利です。
窓口や郵送での交付請求に比べると、オンラインは手数料が安く済むメリットもあります。自宅や会社から請求が可能で、手数料はインターネットバンキングで振り込めるため、収入印紙は必要ありません。
オンラインにて請求した証明書は、郵送での受け取りか最寄りの法務局窓口での受け取りかを選べます。
手数料
令和7年4月1日より、各種証明書の手数料が改定されることになりました。登記事項証明書の手数料は以下の通りです。
請求方法 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
書面での請求 | 600円 | 600円 |
オンラインで請求し送付で受領 | 500円 | 520円 |
オンラインで請求し窓口で受領 | 480円 | 490円 |
改定日以降に請求手続きをする場合は、手数料に注意しておきましょう。
登記事項証明書はどんなときに必要?

登記事項証明書が必要になるのはどのような場面でしょうか。本章では、登記事項証明書が必要になるケースについて、どのような目的で利用されるのか詳しく解説していきます。
不動産の売却時
不動産を売却する際には、登記事項証明書が重要な書類となります。所有者が誰か、抵当権が残っていないか、過去の所有履歴に問題がないかなど、買主や金融機関が安心して取引できるよう、登記内容を事前に確認します。
登記事項証明書は、物件の正確な権利関係を公的に証明する書類として不動産売買においてはほぼ必須といえる存在です。安全な売却を進めるうえで欠かせない情報が詰まっています。
賃貸契約時
賃貸契約の場合、登記事項証明書の提出が必須となるケースは少ないものの、不動産会社や借主が参考として利用することがあります。特に、貸主が本当にその不動産の所有者であるかどうかの確認や、借地権・使用権などの権利関係の把握を目的として使われることがあります。
法人契約や事業用物件の賃貸では、登記事項証明書を確認することで契約上のリスクを軽減できるため、事前確認の一環として活用されることもあります。
融資の申請時
住宅ローンや不動産担保ローンの申請時にも、金融機関から登記事項証明書の提出が求められます。不動産の権利関係や物件情報を公的に証明する書類になるため、貸付金額の査定や担保として適格かどうかを判断するのに使われます。
抵当権や担保設定の有無を確認するためにも必要で、安全な取引のために重要な書類です。
相続手続きや不動産の名義変更を行うとき
相続不動産の名義変更手続きの際に、登記事項証明書を使用します。不動産の権利関係を正確に把握し、適切な名義変更を行うためです。
また、贈与や売買による名義変更時にも必須の書類です。公的な書類を利用することで、相続人間での紛争・不動産詐欺などのトラブルを防ぐ目的もあります。
不動産の調査を行うとき
不動産を購入する前の調査にも、登記事項証明書は利用されます。不動産の権利関係や抵当権の有無を確認し、安全に取引が行えるか、価格は妥当であるかなどの判断に役立てます。
万が一地上権や借地権が第三者にあった場合、契約期間または設定期間が満了するまで権利が存続するため、その間所有者の土地利用が制限されることになります。こうした状況を避けるために、不動産購入前に登記事項証明書を確認し権利関係を把握しておくことが重要です。
不動産売却の書類はいつまでに準備が必要?

不動産売却に必要な書類は、契約締結時までに揃えておくことが望ましいとされています。特に登記事項証明書は、売主の権利関係を確認するため早めの準備がおすすめです。書類によって準備のタイミングが異なるため、事前に確認しておきましょう。
以下に、不動産売却に必要な書類と、それらが必要になる時期を表にまとめました。不動産の売却手続きは段階ごとに異なる書類が求められるため、計画的に準備を進めておきましょう。
書類名 | 必要になる時期 | 概要 |
---|---|---|
登記事項証明書(登記簿謄本) | 売却前の準備段階、買主との契約締結時 | 不動産の権利状態や基本情報を証明する書類。法務局で取得可能。 |
身分証明書(運転免許証など) | 買主との契約締結時、売却代金受取時 | 売主の本人確認のために必要。公正証書を作成する場合や金融機関とのやり取りで使用。 |
印鑑登録証明書 | 売買契約時 | 売主の実印を証明する書類。不動産取引では、契約書への押印時に求められる。 |
実印 | 売買契約時 | 契約書や公正証書に押印するために使用。登録された印鑑である必要がある。 |
固定資産税納税通知書 | 売却前の準備段階、契約締結時 | 固定資産税の金額や支払い状況を確認するための書類。物件の維持にかかる費用の確認に利用。 |
権利証または登記識別情報 | 売買契約時、所有権移転登記時 | 不動産の所有者であることを証明する重要な書類。登記所での手続きで必須。 |
重要事項説明書 | 買主との契約締結時 | 物件の状態や契約条件などを買主に説明するための書類。不動産会社が用意する場合が多い。 |
売買契約書 | 買主との契約締結時 | 売買の条件を正式に取り決める契約書。売主と買主双方で署名・押印する。 |
仲介手数料の領収書 | 売却完了後 | 不動産会社へ支払う仲介手数料を記録するために必要。税務申告時にも利用できる。 |
引渡確認書 | 物件引渡し時 | 物件の引き渡しが完了したことを双方で確認する書類。取引を証明する役割がある。 |
必要になるタイミングによって事前に準備しておく書類もあるため、早めに確認し、足りないものがあれば取得しておくことをおすすめします。
登記事項証明書で確認すべきポイントはどこ?

登記事項証明書を取得した際には、不動産売却がスムーズに進められるように以下の点を確認しておきましょう。
不動産の現況と違いがないか
登記内容と実際の状態に食い違いがないか確認が重要です。特に面積や住所の相違に注意してください。また、地目や用途が現況と一致しているかも確認しましょう。
例えば、現況が「宅地」なのに登記上の地目が「農地」になっている場合などがあります。建物の場合は、建物の種類や階数に違いがないか確認しておきましょう。
さらに、共有名義の場合は共有者の情報が正しいかどうかもチェックしてください。これらの確認を怠ると、後の手続きでトラブルの原因となる可能性があるため注意が必要です。
抵当権が設定された不動産の売買ではないか
不動産に抵当権が設定されたままでは、原則として売却を完了することはできません。そのため、売主は売買に先立ち、抵当権の抹消手続きを行う必要があります。
通常は、債権者(多くの場合は金融機関)に連絡し、残債の確認と返済手続きを進めます。一括返済が完了すると、金融機関から「抵当権抹消書類」が発行され、それをもとに法務局で抹消登記を申請するのが一般的な流れです。
なお、売主にあらかじめ返済資金がない場合でも、売買代金の一部を充てて同時に決済・抹消手続きが行われるケースも多くあります。この場合は、司法書士が立ち会いのもとで資金のやり取りと抵当権の抹消を同時に進めることで、安全かつ円滑に取引が完了します。
不動産の登記で知っておきたいこと

本章では不動産の登記にまつわる情報や、注意点について解説します。登記は不動産を所有・管理する上で欠かせない制度です。
正しい知識を身に付け、必要な手続きは早めに行うようにしましょう。
相続登記の義務化
令和6年4月から相続登記が義務化されました。相続による所有者の変更が発生した場合、正当な理由がない限り3年以内に法務局で相続登記を行う必要があります。
この改正の目的は、登記の放置による所有者不明土地問題の解消です。登記を怠ると過料(罰金)が科される可能性があります。
手続きには、遺産分割協議書や相続人全員の同意書などの書類が必要です。2024年4月以前に相続が開始している場合でも、3年の猶予期間があるものの義務化の対象となります。
不動産を相続したら、早めに登記申請を行いましょう。
自分で登記手続きを行う際の注意点
専門家に頼らず登記申請を自分で行う際は、申請書の作成や必要な添付書類の収集を行う必要があります。法務局は専門知識がない人に情報提供をしていますが、登記は重要な情報を公示する手続きです。
申請予定の登記の種類や内容によって、高度な法律の専門知識や測量等の知識を要する場合があります。その上、書類の作成や収集には、相当な手間と時間がかかることが予想されます。
手続きが難しいと感じた場合は、司法書士や土地家屋調査士に依頼することを検討してみてください。不動産の売買に関する登記手続きは、不動産会社でも相談に応じています。
困ったことがあれば気軽に相談してみましょう。
まとめ:登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法や注意点を知っておこう
登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の権利関係や物件情報を公的に証明する重要な書類です。売却や購入、相続、融資など、さまざまな場面で活用され、取引の安全性を高める役割を果たしています。
本記事では、登記事項証明書の基本から取得方法、使われる場面や注意点までを詳しく解説しました。不動産を売却・購入する際には、早めに登記事項証明書を取得し、現況との相違や抵当権の有無などを確認しておくことが、スムーズな手続きにつながります。
また、手続きの内容によっては、専門家のサポートが必要になることもあります。登記や売買に関する不安があれば、無理に一人で進めず、不動産会社や司法書士などに相談するのも大切な選択肢です。
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