空き家の放置、何が起きる?劣化の原因・対策と“後悔しないための”リスク回避法

空き家を所有している方の多くが、「とりあえず置いてあるだけだから大丈夫」と思いがちです。
しかし実際には、人が住んでいないことそのものが、建物の劣化を加速させる最大の原因になります。
風を通さない、掃除をしない、水を使わない。こうした“使われない状態”が続くだけで、空き家は少しずつ確実に傷んでいきます。
この記事で分かること
- 空き家が劣化しやすい理由とそのスピード
- 放置すると発生する具体的なリスク
- 最低限やっておきたい管理方法
- 管理が難しい場合の現実的な選択肢
空き家は、放っておけば資産から「負担」に変わります。この記事を読むことで、空き家を適切に守り、将来の後悔を防ぐための実践的な知識を得ることができます。
「いつか使うかも」と思っている今こそ、空き家とどう向き合うかを考えるタイミングです。まずは、なぜ空き家は傷みやすいのか、その原因から見ていきましょう。
この記事を監修した人

岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
どうして空き家は劣化するの?

一見すると「ただ人がいないだけ」と思われがちな空き家ですが、実は“人が住んでいないこと”そのものが建物の劣化を加速させる大きな要因になります。住宅というものは、人の手による日々の換気・通水・清掃・チェックによって保たれている、いわば“生きた器”のような存在です。
人が暮らしている家では、毎日の生活の中で自然と換気が行われ、水道が使用され、掃除や軽微な修繕が繰り返されています。しかし、これらの「当たり前の行動」がなくなると、建物の健康状態は一気に悪化してしまいます。
使われなくなった瞬間から、建物は少しずつ老朽化のスピードを速めていきます。以下では、空き家で特に注意すべき代表的な劣化要因について詳しく見ていきましょう。
換気不足による湿気・カビ・腐食
空き家の劣化の中でも、最も基本的でありながら深刻なのが「換気不足」です。
人が住んでいない家は、窓もドアも長期間閉め切られ、空気の入れ替えがまったく行われません。この状態が続くと、室内に湿気が溜まり、カビや腐食が発生しやすくなります。特に梅雨や夏場など湿度が高い季節は、その影響が一気に加速します。
また、湿気は家のさまざまな素材に影響を与えます。畳や壁紙が傷むだけでなく、木材部分が膨張したり腐ったりし、家の構造そのものがダメージを受けることもあります。気づいたときには大掛かりな修繕が必要になるケースも少なくありません。
雨漏りによる構造損傷
空き家のもう一つの大きなリスクは、知らぬ間に進行する「雨漏り」です。
定期的に住まわれている家であれば、小さな雨漏りにもすぐに気づけます。しかし、空き家の場合はチェックが遅れ、屋根や外壁の小さなひび割れやコーキングの劣化などからじわじわと雨水が侵入しやすくなります。
一度水が入り込むと、木材の腐食や鉄骨のサビといった深刻な構造ダメージへと発展する可能性が高まります。特に天井裏や壁の内部に水が回ると、表面からは見えにくいため、気づいた頃にはすでに家の強度が大きく損なわれていることもあります。
配管の錆や詰まり、ガス管の劣化
空き家では「水を使わないこと」自体が、設備の劣化を引き起こす要因になります。
水もガスも使われないまま放置されると、配管の中で「水の循環」が止まり、さまざまな不具合が起きやすくなります。例えば、給排水管では内部に水垢や汚れが沈着しやすくなり、腐食や詰まりの原因に。錆びが進行すると、再び水を通したときに赤水が出たり、最悪の場合、配管が破裂してしまうこともあります。
また、ガス管も長期間使わないと劣化し、再利用時にガス漏れや破裂といった危険な事態を引き起こす可能性があります。特に古い住宅では、設備の老朽化が早く進むため、注意が必要です。
害虫・害獣の侵入と衛生問題
空き家は、人の出入りがないことで害虫や害獣にとって格好の住処になります。
特にゴキブリやシロアリは、空き家の静かな環境を好み、床下や壁の内部に巣を作ることがあります。シロアリが発生すると、家の柱や床を内部から食い荒らし、建物の耐久性そのものを損なう恐れがあります。
また、ネズミやハクビシンなどの害獣が侵入すると、天井裏や床下で巣を作り、断熱材を引きちぎったり、電気配線をかじることで火災の原因になることも。さらに、糞尿による悪臭や衛生面の悪化も深刻な問題となります。
空き家を放置することで生じる具体的なリスク

空き家の劣化は、単なる見た目の問題にとどまりません。放置し続ければ、いずれ所有者にとって深刻な経済的負担や法的責任へと発展していきます。
このセクションでは、空き家を長期間放置することで起こり得る主なリスクを、「経済的損失」「法的リスク」「地域社会への影響」といった観点から具体的に解説します。
売却が難しくなる
劣化が進んだ空き家は、どうしても買い手に敬遠されがちです。
たとえば、屋根の破損や壁紙の剥がれ、床の腐食といった見た目にわかる劣化だけでなく、配管・電気系統などの内部設備の不具合も、購入希望者にとっては大きな不安要素になります。
「この家を直すのに、どれくらいお金がかかるのか?」という懸念から、購入をためらわれるケースが多く、結果として…
- 売却までに時間がかかる
- 相場より大幅に値下げしないと売れない
といった状況に陥りやすくなります。
空き家は、「時間が経つほど売りづらくなる資産」でもあるのです。
賃貸への転用に高額な修繕コストが発生する
「いつか貸そう」と考えていた空き家も、長期間放置されたままだと、改修工事が大掛かりになる可能性があります。
築年数が経っていたり、劣化が進んでいた場合、内装・水回り・配管・断熱など広範囲にわたるリフォームが必要になるケースも少なくありません。すると当然、初期費用は大きく膨らみます。
その結果、
- 回収に何年もかかる
- 投資としての収益性が著しく悪化する
- 修繕が不十分だと入居者の満足度が低下し、空室リスクも増大
「貸せば収入になる」と簡単にはいかないのが現実です。空き家を賃貸に活用するなら、早めの状態チェックと費用試算がカギとなります。
「特定空家」に指定されるリスク
空き家の劣化が進み、倒壊の危険性や衛生環境の悪化が顕著になると、自治体から「特定空家」に指定される可能性があります。これは、周辺住民の安全や景観を守るために、行政が改善命令や指導を行う制度です。
「特定空家」に指定されるとどうなる?
- 改善命令に従わない場合、過料(罰金)や行政代執行(強制解体)の対象になる
- 解体や修繕の費用はすべて所有者負担
- 住宅用地の固定資産税軽減(最大6分の1)が打ち切られ、税負担が大幅に増える
つまり、放置した結果、多額の出費が一気に降りかかるリスクを抱えることになります。
「誰にも迷惑をかけていないから…」と思っていても、ある日突然通知が来る可能性がある。それが「特定空家」の怖さです。
地域社会への悪影響と近隣トラブル
空き家の外観が荒れてくると、その影響は周囲の住環境にもじわじわと波及していきます。
たとえば、
- 庭の雑草が伸び放題になり、景観を損なう
- 害虫や動物が発生し、近隣の家にまで被害が及ぶ
- ボロボロの外観が、地域全体の資産価値を下げる原因になる
こうした状態が続けば、「あの家なんとかして」と近隣からのクレームや苦情に発展することも。最初は小さなことでも、放置することで「近所付き合いの悪化」や「地域からの孤立」といった深刻なトラブルに発展する恐れがあります。
空き家は、所有者だけでなく地域にも影響を与える存在だという認識が大切です。
空き家の劣化を防ぐためにやるべき3つの基本管理

空き家の劣化を防ぐために、特別な知識や高額な設備投資が必要なわけではありません。大切なのは「人が住んでいる状態に少しでも近づけること」。つまり、日常的に行われていた“当たり前の行動”を定期的に再現することが、劣化を最小限に抑える第一歩です。
ここでは、今すぐ誰でも取り組める基本的な管理方法を3つに絞って紹介します。
管理①:月1回の換気と通水作業の習慣化
空き家の劣化を防ぐうえで最もシンプルかつ効果的なのが「空気と水を流す」ことです。
換気のポイント
- 月に1度はすべての窓・ドアを開けて風を通す
- 雨の翌日など湿度が高い日は避け、晴れた日に実施
- 押入れや収納の扉も開け、空気をこもらせない
湿気を逃がすことで、カビや木材の腐食、内装材の劣化を大幅に防げます。
通水のポイント
- キッチン・洗面台・浴室・トイレなどすべての蛇口を開け、1〜2分水を流す
- トイレは流して水を入れ替える
- 月1回の通水で配管内の錆、詰まり、悪臭の予防に効果あり
通水によって、給排水管やトラップ内の水が乾ききるのを防ぎ、悪臭や虫の侵入も抑えられます。
管理②:清掃と簡易メンテナンス(外構含む)
空き家でも“人の気配”を保つことが重要です。そのためには、室内外の清掃と最低限のメンテナンスを定期的に行うことが求められます。
清掃のポイント
- 室内のホコリ取り、床の掃除機がけ
- キッチンや浴室のカビチェックと簡易拭き掃除
- 不用品やゴミの処分で害虫の温床をなくす
外構メンテナンスのポイント
- 雑草の除去(特に道路側・隣家との境界部)
- 郵便物の整理(放置すると空き家と分かりやすくなる)
- 雨樋のつまりチェック、落ち葉の掃除
見た目の美しさは、劣化防止だけでなく「近隣との良好な関係維持」にも直結します。
管理③:害虫・害獣対策と侵入経路の封鎖
空き家では害虫や害獣の侵入リスクが高まるため、予防措置をしっかり講じることが重要です。
具体的な対策
- ネズミ用忌避剤や超音波発生器の設置
- シロアリ対策として床下の点検・薬剤散布(年1回目安)
- 虫の侵入を防ぐため、排水口にフタ、網戸の破れチェック
- 換気口・床下通気口に金網を設置し、大型の害獣の侵入をブロック
また、ゴミや食べ物の残り香は害獣を引き寄せる原因になるため、完全撤去を心がけましょう。
「管理が難しい」と感じたときの選択肢

ここまで紹介したように、空き家を劣化させないためには、定期的な換気・通水・清掃・点検が欠かせません。しかし、実際には「遠方に住んでいて行けない」「高齢で体力的に難しい」「仕事や子育てで時間が取れない」といった理由で、思うように管理できない人も多いのが現実です。
そんなときは、“自分ひとりですべて管理しなければならない”という思い込みをいったん手放し、状況に応じた現実的な選択肢を考えてみましょう。
選択肢①:管理代行サービスや地元業者に一部を委託する
管理が難しい場合、まず検討したいのが「信頼できる第三者に任せる」方法です。最近では空き家の管理代行サービスが全国的に増えており、月に1回の換気・通水・清掃を定期的に行ってくれるプランなども用意されています。
主な委託内容
- 建物内の換気・通水・簡易清掃
- 建物外の草刈り・ゴミ拾い・郵便物の整理
- 定期巡回+報告レポート(写真付き)
- 必要に応じた簡単な修繕の手配や業者紹介
地元の工務店や不動産会社が提供していることも多いため、まずはエリア内で実績がある業者を探して相談してみるのがおすすめです。
選択肢②:「売却」で資産を整理する
「今後使う予定がない」「管理の手間や費用に限界を感じている」
そんなときは、“空き家を売る”という選択肢を前向きに検討してみてください。
売却によって得られる主なメリットは以下の通りです。
- 固定資産税や維持費の負担から解放される
- 相続時の“負動産”リスクを未然に防げる
- まとまった資金を別の目的に活用できる(老後資金・子育て・資産運用など)
しかも、売却には複数のルートがあり、自分の状況や希望に合った方法を選ぶことができます。
売却方法の主な選択肢
- 一般仲介売却(不動産会社経由)
希望価格に近い金額で売れる可能性があり、時間をかけてじっくり売却したい方向け。
※内見対応や簡易リフォームが必要になることも。 - 不動産会社による買取
スピード重視で、現況のまま買い取ってもらえるケースが多く、急いで現金化したい人におすすめ。
※価格は相場よりやや低めになる傾向あり。 - リノベーション会社・不動産投資家への売却
築古や傷みのある物件でも、“再生目的”で購入してくれる可能性あり。
立地や建物の個性によっては高値がつくことも。 - 空き家バンク(自治体運営)を活用
地域への移住希望者や若年層などにマッチしやすく、空き家を地域資源として活かすことができる。
価格は抑えめになるが、社会的意義や安心感がある。
「空き家を売ること=諦めること」ではありません。
これは、“資産の持ち方を見直す”という、将来の安心に向けた前向きなステップです。
選択肢③:賃貸・その他の活用も視野に
「まだ住める家なのに、ただ手放すのはもったいない」
そう感じている方には、賃貸運用や活用型の利活用も有力な選択肢になります。空き家に“人の気配”を取り戻すことで、劣化防止と収益化の両立が期待できます。
主な活用パターン
- 賃貸住宅として貸し出す
居住用として貸すことで、月々の家賃収入を得ながら、建物の傷みも防げます。
リフォームが必要な場合もありますが、安定的な運用を目指せます。 - 民泊施設(Airbnbなど)に転用する
観光地や交通の便が良い場所なら、短期宿泊向けにリフォームして民泊として運営するのも一案。
初期投資や管理体制の構築は必要ですが、上手くいけば高収益も期待できます。 - レンタルスペース/コワーキングスペースにする
在宅勤務やテレワークの広がりを背景に、時間貸しで貸し出すニーズも高まっています。
大きな改装をせずに運用できるケースもあり、空室リスクを分散できます。 - シェアハウスやグループホームへの改装
複数人で住める間取りの家は、シェアハウスや介護対応のグループホームとして活用可能。
入居者が固定すれば収益も安定し、地域ニーズにも応える形になります。 - 古民家カフェ・バー・雑貨店として活用
趣のある建物なら、リノベーションして小商いの場に。
近年は地域活性や観光目的での再生事例も増えており、支援制度が使えることも。 - 地域のコミュニティスペースとして開放
収益目的ではないものの、地域の居場所・イベント会場として活用することで社会貢献にもつながります。
空き家対策を「売却」「賃貸」「その他の方法」の大きく3つに分けて解説▼

まとめ:空き家管理は「資産を守る」という意識から始めよう
空き家をどう扱うかは、将来の安心に直結する大切なテーマです。
放置してしまえば、劣化は進み、売却や活用といった選択肢もどんどん狭まってしまいます。
逆に言えば、「今、少しだけでも手をかけること」が、将来の損失や不安を大きく減らすことにつながります。
- 空き家管理は「資産を守る」意識から
- 完璧でなくていい、まずはできる範囲から
- 難しいと感じたら、専門家に早めに相談を
空き家の問題は、放置しないことが最大のリスクヘッジです。
今日できる小さな行動が、明日の後悔を防ぎ、あなたの大切な資産を守ります。