一般媒介契約とは?メリット・デメリットも併せて解説
不動産を売るときには、不動産会社との間で「媒介契約」というものを結びますが、その中に「一般媒介契約」という契約形態があります。この記事では、一般媒介契約の特徴や、それが持つメリットとデメリットについてわかりやすく解説します。さらに、他の契約形態である「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」との違いや、どんな時に一般媒介契約を選ぶべきかについても触れていきます。
目次
一般媒介契約とは?
一般媒介契約とは、売り手が不動産の売却を複数の不動産会社に依頼できる契約です。これにより、売り手は自由に多くの不動産会社を利用して、物件を売り出すことが可能になります。
一方で、媒介契約には「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」もありますが、これらは売り手が一つの不動産会社とだけ契約を結ぶ形式です。
契約の種類 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
契約 | 複数社可能 | 1社のみ | 1社のみ |
販売活動の報告義務 | 規定なし | 14日に1回以上 | 7日に1回以上 |
契約期間 | 規定なし(行政指導に従い3ヵ月以内が一般的) | 最長3ヵ月 | 最長3ヵ月 |
レインズ(※)への登録義務 | × | ○(契約から7日以内) | ○(契約から5日以内) |
自己発見取引 | ○(不動産会社の仲介なしで取引き可) | ○(不動産会社の仲介なしで取引き可) | ×(不動産会社の仲介が必要) |
一般媒介契約の特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 複数の不動産会社と契約が可能
一般媒介契約では、売主は何社とでも契約を結ぶことができます。これにより、信頼できる複数の会社を選んで依頼することが可能です。たとえば、2〜3社に絞るもよし、10社以上に依頼するもよし、売主の自由です。
2. 自分で見つけた買主と直接取引ができる
自分で買主を見つけた場合、一般媒介契約では不動産会社を通さずに直接取引をすることができます。これにより、仲介手数料を節約できる可能性があります。
3. 仲介手数料に違いはない
一般媒介契約でも、専任媒介契約や専属専任媒介契約と同じく、最終的に支払う仲介手数料に差はありません。売買契約が成立した場合のみ手数料が発生します。
4. 明示型と非明示型がある
「明示型」では他の不動産会社への依頼状況を明らかにし、「非明示型」ではそれを明かさなくてもよいという選択肢があります。しかし、信頼関係構築や積極的な売却活動を期待するなら、「明示型」を選ぶことが推奨されます。
5. 周囲に知られずに売却活動ができる
レインズへの登録義務がないため、一般媒介契約では周囲に知られずに売却活動を行うことが可能です。ただし、必要に応じて任意で登録することもできます。
6. 売却活動の報告義務がない
一般媒介契約では、不動産会社から売却活動の報告を受ける義務がありません。そのため、活動状況を知りたい場合は、自ら不動産会社に問い合わせる必要があります。
7. 契約期間に法令上の定めはないが3ヶ月が目安
法令で定められた契約期間はありませんが、一般的には3ヶ月が目安とされています。この期間は不動産会社によって異なるため、契約時には確認が必要です。
8. 解約はいつでも可能
契約期間中であっても、いつでも解約することができます。解約手続きは比較的簡単で、特別な費用がかかることは通常ありませんが、契約内容によっては異なる場合があるため、注意が必要です。
一般媒介契約を選ぶメリット
不動産を売るときに役立つ一般媒介契約ですが、この契約方式を選ぶ大きなメリットがいくつかあります。
1. 複数の不動産会社と契約できる
一般媒介契約のいちばんの魅力は、複数の不動産会社と同時に契約できる点です。これにより、さまざまな会社が販売活動を行うため、売却のチャンスが広がります。
2. 競争による良い条件での売却の可能性
複数の不動産会社があなたの物件を売るために競争することで、より良い条件で売却できる可能性が高まります。これは、不動産会社が売却成功時のみ仲介手数料を得られるため、積極的に活動してくれるからです。
3. 不動産会社選びの手間が省ける
一般媒介契約では、複数の会社と契約できるため、どの会社にするかで悩む時間が省けます。専任契約の場合は、一社だけを選ばなければならず、その会社が期待通りの活動をしてくれるか不安になることもありますが、一般媒介ならその心配が少なくなります。
4. 周囲に知られずに販売活動ができる
一般媒介契約では、レインズ(不動産情報ネットワーク)への登録が必須ではないため、物件情報を公にしたくない場合にも適しています。もし必要なら、任意でレインズへの登録も可能です。
5. 不動産会社の囲い込みを防げる
一般媒介契約では複数の不動産会社と契約することができるため、特定の不動産会社による物件の囲い込み(買い手を独占しようとする行為)を防ぐことができます。これにより、売却の機会を広げることができるのです。
一般媒介契約を選ぶ際の注意点
一般媒介契約を選択する際は、いくつかのデメリットも理解しておく必要があります。ここで、大学生の皆さんにもわかりやすく一般媒介契約のデメリットを解説します。
1. 積極的な販売活動を期待できないことがある
一般媒介契約では、複数の不動産会社と契約できるため、競争が生まれ、好条件での売却が期待できる一方で、反対に各社が積極的に動かないこともあります。なぜかというと、他社が先に買い手を見つけた場合、自社の広告費用が無駄になってしまうリスクがあるからです。特に、人気エリアや築年数の浅い物件以外は、このデメリットが顕著に現れる可能性があります。
2. 販売状況が分かりにくい
一般媒介契約では、不動産会社からの定期的な販売状況の報告が義務付けられていないため、どの会社がどれだけ販売活動をしているかが把握しにくくなります。これにより、価格の見直しや販売戦略を立てるのが難しくなることがあります。販売状況を知りたい場合は、自分から各不動産会社に連絡を取って確認する必要があります。
3. 特定のサービスを受けられないことがある
不動産会社には、物件をより魅力的に見せるための「ハウスクリーニング」や「ホームステージング」、さらには売れ残り時の「買取保証」など、さまざまなサポートサービスがあります。しかし、これらのサービスは通常、専任媒介契約や専属専任媒介契約で提供されることが多く、一般媒介契約では受けられないことがほとんどです。つまり、一般媒介契約を選ぶと、これらのサポートを受けられない可能性があります。
一般媒介契約を選ぶべき人は?
メリット・デメリットを踏まえた上で、一般媒介契約はどのような人におすすめの契約なのかを紹介します。一般媒介契約は、自分の状況や物件の特性、そして自分の性格や好みによって、向いているかどうかが変わってきます。自分にとって最適な選択をするために、以下ののポイントを参考にしてみてください。
1. 人気のあるエリアや新しい物件を売りたい人
まず、自分の持っている物件が人気エリアにあるか、まだ新しいかという点がネックになります。これらの物件は売れやすいので、一般媒介契約を選んだら、複数の不動産会社が競ってくれる可能性があります。それによって、もしかしたら思っていたより高く売れるかもしれません。でも、「うちの物件は郊外だし、駅からも遠いな…」という場合は、一社にじっくり売り出してもらう方がいいかもしれませんね。
2. いろんな不動産会社とやり取りできる人
一般媒介契約の場合、複数の不動産会社と契約することになるので、それぞれの会社と連絡を取り合うことが多くなります。不動産会社からの自動的な報告は期待できないので、自分から動いて情報を集める必要があります。これが苦じゃない、むしろ得意!という方には、一般媒介契約がおすすめです。
3. 内緒で不動産を売りたい人
もし、家族や友達、ご近所さんに内緒で物件を売りたい場合、一般媒介契約はいい選択肢かもしれません。レインズへの登録が必須ではないため、広く公に情報が出回ることなく売却活動ができます。ただし、内緒で売るとなると、買い手を見つけるまでに時間がかかることも覚悟しておきましょう。
一般媒介契約から専任媒介契約への切り替え
「一般媒介契約を結んだ後、他の契約形態に変更できるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論から言うと、一般媒介契約から専任媒介(または専属専任媒介)契約への切り替えは可能です。
切り替えプロセス
切り替えを検討する場合、まずは複数の不動産会社と結んでいる契約を一つに絞る必要があります。すでに一般媒介契約をしている不動産会社と専任媒介契約を結ぶ場合、その会社に切り替えたい旨を伝えるだけで、その会社が以前の一般媒介契約を解除し、新たに専任媒介契約を結んでくれます。このプロセスは比較的簡単に完了します。
他の不動産会社に関しては、自分で直接解約の意向を伝える必要がありますが、これも電話や直接話をすることで、「解約したい」と伝えるだけで大丈夫です。大抵の場合、解約に際して追加の費用がかかることはありません。
切り替えの注意点
ただし、契約書に解約時の特別な条項がある場合もありますので、解約する際にはその内容をよく確認することが大切です。特例が設定されている場合は、契約の有効期限が終わるまで待ってから解約するのが安全です。
まとめ
これまでに一般媒介契約の特徴や、そのメリット・デメリットについて触れてきました。そして、一般媒介契約から専任媒介契約への切り替えも可能であることを学びました。では、最後に、この情報を踏まえて、一般媒介契約がどのような方に適しているかをおさらいしましょう。
もしもあなたが、人気エリアにある物件や新築同様の築浅物件をお持ちで、可能な限り高価で売却したいと考えているなら、一般媒介契約はとても魅力的です。複数の不動産会社があなたの物件を競って売り出すため、より良い条件での売却が期待できます。
また、複数の不動産会社とのやり取りが苦でない、むしろ自分から積極的に関わっていきたいという方にも、一般媒介契約は向いています。さらに、売却の事実を周囲に知られたくない方にとっても、一般媒介契約は有効です。
一方で、専任媒介契約への切り替えも考えられます。特に、売却に時間がかかっている、もしくはより手厚いサポートを受けたい場合は、専任媒介契約が適しているかもしれません。切り替えは簡単にできるので、状況に応じて柔軟に契約形態を選択しましょう。
最後に、どの契約形態を選択するにせよ、契約の解約や切り替えを行う際は、契約内容をよく確認し、必要な手続きを適切に行うことが大切です。これにより、不動産の売却過程がスムーズに、そして望んだ結果に結びつくでしょう。
不動産を売るというのは大きな決断です。だからこそ、自分にとって最適な方法を選び、納得のいく売却ができるようにしましょう。
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この記事を監修した人
後楽不動産 売買事業部 岩富
長年の不動産売買経験と宅建士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ。豊富な知識と実績で、不動産売買に関するサポートを行う。