一般媒介契約とは?メリット・デメリットも併せて解説

不動産を売却する際に必要な「媒介契約」。その中でも、自由度の高い「一般媒介契約」は、複数の不動産会社に同時に依頼できる特長を持っています。この記事では、一般媒介契約の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
さらに、専任媒介契約や専属専任媒介契約との違いもご紹介し、どの契約形態が自分に合っているかが明確にわかる内容です。これを読むことで、不動産売却の選択肢が広がり、納得のいく売却方法を選ぶためのヒントが得られるでしょう。
初めての不動産売却でも迷わずに進められるよう、必要な情報をシンプルかつ丁寧にお伝えします。この記事を参考に、理想的な売却プランを見つけてください。
この記事を監修した人

岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
一般媒介契約とは?

一般媒介契約とは、売り手が不動産の売却を複数の不動産会社に依頼できる契約です。これにより、売り手は自由に多くの不動産会社を利用して、物件を売り出すことが可能になります。
一方で、媒介契約には「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」もありますが、これらは売り手が一つの不動産会社とだけ契約を結ぶ形式です。
契約の種類 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
契約 | 複数社可能 | 1社のみ | 1社のみ |
販売活動の報告義務 | 規定なし | 14日に1回以上 | 7日に1回以上 |
契約期間 | 規定なし(行政指導に従い3ヵ月以内が一般的) | 最長3ヵ月 | 最長3ヵ月 |
レインズ(※)への登録義務 | × | ○(契約から7日以内) | ○(契約から5日以内) |
自己発見取引 | ○(不動産会社の仲介なしで取引き可) | ○(不動産会社の仲介なしで取引き可) | ×(不動産会社の仲介が必要) |
一般媒介契約の特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 複数の不動産会社と契約が可能
一般媒介契約では、売主が複数の不動産会社に同時に売却を依頼できます。
例えば、地域密着型の会社と全国展開している大手会社を組み合わせて依頼するなど、売主が自由に選べます。この仕組みにより、幅広い市場にアプローチすることが可能です。
2. 自分で見つけた買主と直接取引ができる
一般媒介契約では、自分で見つけた買主と不動産会社を通さずに直接取引を行えます。これにより、不動産会社に支払う仲介手数料を節約できる場合があります。
3. 仲介手数料は他の契約形式と同じ
契約形式にかかわらず、不動産会社に支払う仲介手数料は同じです。手数料は売買契約が成立した場合にのみ発生します。
4. 明示型と非明示型の選択が可能
一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」があり、選択が可能です。
- 明示型:他社への依頼状況を不動産会社に開示します。これにより、売却活動の透明性が高まり、不動産会社間の競争が促進される可能性があります。
- 非明示型:他社への依頼状況を開示しません。売却活動を目立たせたくない場合や特定の戦略を取る際に選ばれます。
5. 周囲に知られずに売却活動が可能
一般媒介契約では、レインズへの登録義務がないため、物件の売却情報が広く公開されません。そのため、近隣住民などに知られずに売却活動を行いたい場合に適しています。
6. 売却活動の報告義務がない
不動産会社は、一般媒介契約の場合、売却活動の進捗報告を行う義務がありません。そのため、活動状況を知りたい場合は売主から積極的に問い合わせる必要があります。
7. 契約期間に法令上の規定はない
一般媒介契約には契約期間の法的な制限はありません。ただし、一般的には不動産会社が3ヶ月を目安に契約期間を設定することが多いため、契約時に期間や更新条件を確認しておきましょう。
8. 解約が自由
一般媒介契約は、契約期間中であっても売主がいつでも解約できます。解約手続きは簡単で、特別な費用が発生することは通常ありません。ただし、事前に契約内容を確認しておくことが重要です。
一般媒介契約を選ぶメリット

不動産売却を検討している方にとって、一般媒介契約は自由度が高く、売却活動の幅を広げる選択肢です。この契約方式を選ぶことで得られる具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
1. 複数の不動産会社と契約できる
一般媒介契約の最大の魅力は、複数の不動産会社と同時に契約が可能な点です。
たとえば、地域に強い地元密着型の不動産会社、大手の不動産会社、特定のエリアに特化した会社など、特徴の異なる不動産会社を組み合わせて依頼することができます。これにより、複数の会社が異なる手法やネットワークを活用して買主を探してくれるため、売却活動の幅が広がります。
また、一般媒介契約では依頼できる会社数に制限がありません。そのため、1社に絞らずに広く市場にアプローチすることで、早期売却を目指すことが可能です。
2. 競争による良い条件での売却の可能性
複数の不動産会社が同じ物件を売却しようと競争するため、売却条件が良くなる可能性があります。不動産会社は、売却が成功した場合にのみ仲介手数料を得られる仕組みであるため、より積極的に売却活動を行います。
たとえば、買主に対する提案力を強化したり、広告宣伝に力を入れたりすることで、物件が高値で早く売れるよう取り組んでくれるでしょう。
競争原理が働くことで、売主は不動産会社からの対応や提案内容においても、より良いサービスを期待できます。
3. 不動産会社選びの手間が省ける
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、不動産会社を1社に絞る必要があります。そのため、「どの会社を選べば良いか」という悩みや不安がつきまといます。しかし、一般媒介契約なら複数の会社に依頼できるため、不動産会社選びの負担が軽減されます。
たとえば、「どの会社が最も信頼できるか判断しづらい」という場合でも、複数の会社に依頼し、各社の動きを観察しながら進めることができます。その中で、自分に合った会社を見極めることも可能です。
4. 周囲に知られずに販売活動ができる
一般媒介契約では、不動産流通標準情報システム(レインズ)への登録が必須ではありません。そのため、「物件を売り出していることを周囲に知られたくない」「プライバシーを守りたい」という場合でも安心です。
レインズへの登録がない場合、物件情報はインターネットや不動産会社間のネットワークで広く公開されることがありません。ただし、必要に応じてレインズに任意登録することも可能です。これにより、売却活動の進め方を柔軟に選べます。
5. 不動産会社の囲い込みを防げる
「囲い込み」とは、不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を得るため、物件情報を他社に共有せず、自社内でのみ買主を見つけようとする行為を指します。
一般媒介契約では複数の会社と契約するため、特定の会社による囲い込みを防ぐ効果があります。囲い込みを防ぐことで、物件情報がより多くの潜在的な買主に届き、売却機会が広がります。
一般媒介契約を選ぶ際の注意点

一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる自由度の高い契約形式ですが、その反面、注意すべきデメリットもいくつかあります。ここでは、具体的な事例を交えながら解説します。
1. 積極的な販売活動を期待できない場合がある
一般媒介契約では、複数の不動産会社が同じ物件を販売するため、競争が生まれやすくなります。しかし、反対に各社が積極的に販売活動を行わないケースも少なくありません。
その理由は、不動産会社が販売活動にかけたコスト(広告費や営業の手間など)を回収できないリスクがあるからです。他社が先に買主を見つけて契約を成立させた場合、その物件にかけた努力が無駄になってしまいます。このため、特に以下のような物件では消極的な対応が目立つことがあります。
- 人気エリア外の物件
- 築年数が古く、買主の関心が低い物件
- 高額すぎる、または条件が厳しい物件
例えば、地方にある築20年の戸建てを売りたい場合、大手不動産会社は力を入れず、活動が停滞することも考えられます。
2. 販売状況が分かりにくい
一般媒介契約では、不動産会社に販売状況の報告義務がありません。そのため、どの不動産会社がどのように物件を宣伝し、どの程度の問い合わせや反響があるのかを把握するのが難しいです。
例えば、物件の売れ行きが悪い場合、「広告の内容を変更すべきか」「価格を見直すべきか」など、売主として判断が必要なタイミングが来ます。しかし、販売活動の詳細が分からないままでは、適切な対応が遅れるリスクがあります。
解決策としては、自分から定期的に不動産会社に連絡を取り、進捗状況を確認する必要があります。ただし、複数の会社に問い合わせる手間や時間がかかる点はデメリットと言えます。
3. 特定のサポートサービスが受けられない
不動産会社が提供する以下のような特別なサービスは、一般媒介契約では利用できない場合が多いです。
- ハウスクリーニング:物件を美しく保つための専門清掃サービス。
- ホームステージング:家具やインテリアを設置し、内覧時に物件の魅力を高める演出。
- 買取保証:一定期間内に売れなかった場合、不動産会社が物件を買い取る仕組み。
これらのサービスは、不動産会社がその物件に対して確実に仲介手数料や収益を得られる場合に提供されることが多く、専任媒介契約や専属専任媒介契約で選ばれるケースが一般的です。
例えば、内覧時にホームステージングを活用すれば、モデルルームのように魅力的な空間を演出でき、成約率が高まることが期待できます。しかし、一般媒介契約では「複数の会社が関与している」ため、こうしたコストを負担する不動産会社はほとんどありません。
一般媒介契約を選ぶべき人は?

一般媒介契約は、売主の状況や物件の特性、さらには自身の性格や行動スタイルに応じて適している場合があります。メリット・デメリットを踏まえ、自分にとって最適な選択をするために、以下のポイントを参考にしてみてください。
1. 人気のあるエリアや新しい物件を売りたい人
物件が人気エリアにある場合や築年数が浅い場合、一般媒介契約が効果を発揮します。こうした物件は需要が高く、複数の不動産会社が積極的に買主を探してくれる可能性が高いからです。
例えば、駅近のマンションや新築間もない戸建てなどは、不動産会社同士の競争によって、想定以上の高値で売れることも期待できます。
一方で、物件が郊外や駅から遠い場合、一般媒介契約では各社の販売活動が消極的になる可能性があります。そのため、こうした物件では、一社に絞りじっくり販売活動を行ってもらえる専任媒介契約の方が適している場合もあります。
2. 複数の不動産会社とやり取りできる人
一般媒介契約では、複数の不動産会社と同時に契約を結ぶため、それぞれの会社とコミュニケーションを取る場面が増えます。不動産会社から定期的な報告が義務付けられていないため、売主自身が積極的に情報を集め、進捗を確認する必要があります。
「複数の会社とやり取りをするのが面倒ではない」「むしろ、自分で状況を把握しながら進めるのが得意!」という方には、一般媒介契約が向いています。特に、日頃からこまめな連絡や確認を苦に感じない人にとっては、複数社の動きや情報を比較しながら進める楽しさもあるでしょう。
3. 周囲に知られずに不動産を売りたい人
「物件を売却していることを家族や友人、近所の人に知られたくない」という場合、一般媒介契約は有効な選択肢です。一般媒介契約では、物件情報を広く共有する不動産流通標準情報システム(レインズ)への登録が義務付けられていないため、売却活動を目立たせずに進めることが可能です。
ただし、周囲に知られないよう売却を進める場合、買主候補が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。また、広く宣伝されない分、購入希望者が限られる場合もあるため、状況に応じて柔軟に対応する心構えが必要です。
一般媒介契約から専任媒介契約への切り替え

「一般媒介契約を結んだ後に専任媒介契約や専属専任媒介契約に切り替えることはできるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論として、一般媒介契約から他の契約形態への切り替えは可能です。ただし、いくつかの手順や注意点がありますので、以下に詳しく解説します。
切り替えのプロセス
一般媒介契約を専任媒介契約に切り替える際には、以下の手順を踏む必要があります。
(1) 契約する不動産会社を一つに絞る
一般媒介契約では複数の不動産会社と契約を結んでいるため、専任媒介契約に切り替える際には、選んだ1社にのみ契約を集中させる必要があります。
たとえば、販売活動に最も力を入れてくれている不動産会社や、対応が信頼できる会社を選ぶと良いでしょう。
(2) 希望する不動産会社に切り替えの意向を伝える
専任媒介契約を結びたい不動産会社に対し、「専任媒介契約に切り替えたい」と伝えます。この際、その会社が現在の一般媒介契約を解除し、新しい契約書を作成してくれます。プロセスは比較的簡単で、特別な書類の準備や手数料が発生することは通常ありません。
(3) 他の不動産会社との契約を解約する
一般媒介契約では、複数の不動産会社と契約を結んでいる場合、専任媒介契約に切り替える際には、売主自身が解約の意思を伝える必要があります。解約の手続きは以下の方法で行うことができます。
解約方法
- 電話で解約を伝える
最も手軽な方法は、不動産会社に電話をして「一般媒介契約を解除したい」と伝えることです。ただし、口頭での解約は記録が残らないため、担当者の名前や解約日をメモしておくと安心です。 - 直接訪問して解約を伝える
不動産会社に訪問し、担当者に解約の意向を直接伝える方法です。この方法では、不動産会社の担当者と詳細をその場で確認できるため、契約解除に伴う条件や手続きについて疑問があればすぐに解消できます。 - 書面で解約を通知する(推奨)
重要な取引やトラブルを避けたい場合には、解約通知を文書で送ることをおすすめします。特に、内容証明郵便を利用することで、解約意思を正式に伝えた記録を残すことができます。書面には以下の内容を明記しましょう。- 契約解除の意思
- 解約の理由(必要に応じて)
- 契約解除日
注意点
- 契約時の条件を確認する
解約に際して特別な条件が記載されている場合があります。たとえば、解約通知が一定期間前に必要とされることや、解約に伴う費用負担が発生するケースもあります。契約書の内容を再確認し、不明点があれば不動産会社に問い合わせましょう。 - 解約に費用が発生するケース
通常、一般媒介契約の解約では手数料や違約金が発生することはありません。ただし、売主が特別な広告活動を依頼していた場合、その費用が請求される可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。
切り替えのメリット
専任媒介契約に切り替えると、不動産会社が物件の売却活動に専念できる環境が整うため、販売活動が積極的になる可能性があります。また、以下のようなサービスや効果が期待できます。
- レインズへの登録義務(7日以内)が発生し、物件情報が広く共有される。
- 不動産会社が定期的に販売状況を報告してくれる(14日に1回以上)。
- 物件が売れ残るリスクを避けるため、戦略的な広告や提案が行われやすい。
切り替えの注意点
専任媒介契約への切り替えを検討する際には、以下の点に注意が必要です。
(1) 契約書の特約条項を確認する
一般媒介契約の契約書に、解約に関する特別な条項が記載されている場合があります。たとえば、解約の際に事前通知が必要だったり、一定の期間は契約解除ができないといった内容が含まれている場合があります。契約書の内容を十分に確認し、必要であれば解約前に不動産会社に相談しましょう。
(2) 契約有効期間の確認
一般媒介契約は法的な有効期間が定められていないため、契約期間が記載されていない場合もあります。しかし、契約期間が設定されている場合には、契約満了日を待たなければ解約できないケースもあるため注意が必要です。
(3) 切り替え後の販売活動を見極める
専任媒介契約に切り替えた後、1社に絞ったことで不動産会社の活動が本当に積極的になるかを確認することも重要です。期待通りの動きがない場合には、売却戦略の見直しを検討しましょう。
まとめ
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約できる自由度の高さが特徴です。特に、人気エリアの物件や築浅物件を売りたい方、売却活動に積極的に関わりたい方に適しています。また、売却情報を周囲に知られたくない場合にも有効です。
一方で、販売活動が消極的になる可能性や、進捗状況が把握しにくい点には注意が必要です。手厚いサポートや効率的な売却を求める場合は、専任媒介契約への切り替えも検討すると良いでしょう。
不動産売却は大きな決断です。この記事を参考に、自分に合った契約を選び、納得のいく売却を目指してください。
