【空き家対策完全ガイド】空き家の問題を解決する具体的な方法を解説

【空き家対策完全ガイド】空き家の問題を解決する具体的な方法を解説

日本の空き家問題は年々深刻化しており、身近な問題となりつつあります。空き家を所有している方のほとんどは、売却するか活用するか、空き家の行く末に頭を悩ませているでしょう。

本記事では、空き家を所有している方が直面する問題を解決するために、空き家対策を「売却」「賃貸」「その他の方法」の大きく3つに分けて解説していきます。

さらに、空き家を放置することのリスクや空き家対策で利用できる補助金、知っておきたいポイントについても詳しく紹介しています。本記事を読むことで、自分が所有する空き家をどのように対処すべきかが分かるでしょう。

空き家を相続してお困りの方や、将来自分の家が空き家になると予想される方は、ぜひ本記事をチェックしてみてください。

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この記事を監修した人

売買事業部岩富係長

岩冨 良二

後楽不動産 売買事業部 係長

不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。

目次

空き家問題の現状と具体的な対策方法

空き家問題の現状と具体的な対策方法

空き家問題は人口減少や高齢化に伴い増加しており、社会問題となっています。特に問題なのが、管理が行き届かず倒壊の恐れがある危険な空き家です。

2023年の法改正では所有者の責務が強化され、周辺に被害を及ぼす可能性が高い放置空き家を「特定空き家」と呼び、対応が進められています。特定空き家に指定されると、住宅用地特例(固定資産税の軽減措置)が解除され、土地の固定資産税が最大で約6倍になる場合があります。

空き家の所有者は今まで以上に維持管理に気を配り、「特定空き家」に指定されないようにメンテナンスする必要があるのです。

放置空き家は何が問題?

放置空き家の問題点
  • 家屋の倒壊や外壁・瓦が飛散するリスク
  • 不法投棄や不審者の侵入による治安の悪化
  • 放置空き家が原因で周囲の景観が損なわれる
  • 放火や漏電による火災のリスク

放置空き家では様々な問題が発生し、家屋の倒壊や火災など人命にかかわる大きな事態に発展する恐れもあります。所有者が家に居住していない場合でも、何らかの問題が発生すればその責任は所有者にあります

売却しても売れない、解体する費用が惜しいなどの理由で空き家を放置したままにしておくと、所有者が多額の賠償責任を負うことになる可能性もあるのです。自分や家族のみならず、周辺住民にまで被害を及ぼすことになるかもしれない空き家は、放置しないで適切に活用することが必要と言えるでしょう。

空き家問題の具体的な対策方法は?

空き家問題を解決するため、具体的には以下の3つの方法があります。

  • 空き家を売却する
  • 空き家を賃貸に出す
  • 売却と賃貸以外の方法で活用する

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、所有する空き家の状態や立地、所有者の経済状況などによっても適した方法は異なります。自分が所有する空き家がどのような状態でどれくらいの資産価値があるのかを知った上で、今後空き家を活用していく方法を考えなくてはなりません。

ここからは、空き家問題を解決するための対策について、具体的な方法やかかる費用、注意点などを詳しく解説していきます。

空き家をそのままの状態で売却する

空き家をそのままの状態で売却する

空き家問題を解決する最もシンプルな方法は、空き家をそのままの状態で売却することです。売却してしまえば、固定資産税や都市計画税、修繕費などの維持費が不要になります。

また、空き家の管理には定期的な換気やメンテナンスが必要ですが、売却することでその手間がなくなります。売却でまとまったお金が手に入れば、資金を別の用途に使うこともできるでしょう。

空き家のままで売却するメリットとデメリット

空き家を解体したりリフォームしたりせず、そのままの状態で売却する方法には、初期費用を抑えられるというメリットがあります。また、建物がある土地には固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が適用されるため、更地にするよりも売却までの維持費負担を抑えやすい点もメリットです。

一方で、築年数が古く傷みが目立つ空き家の場合、購入希望者が建物を活用するイメージを持てず、売却が難航するケースもあります。買い手にとっては「解体費用が必要な土地」と捉えられてしまい、結果として売却までに時間がかかったり、希望価格より安くなることも少なくありません。

そのため、「建物付きのまま売る方が良いのか」「解体して更地にした方が買い手が見つかりやすいのか」は、物件の状態や立地によって異なるため、事前に不動産会社へ相談し、最適な方法を検討することが重要です。

空き家を売却する3つの方法

空き家を売却するには、主に「仲介」「買取」「空き家バンク」の方法があります。

  • 仲介…不動産仲介業者に依頼し買い手を探してもらう売却方法
  • 買取…不動産買取業者に直接空き家を売却する方法
  • 空き家バンク…自治体などが運営する空き家のマッチングサービスを利用し売却する方法

仲介の場合は売却に時間がかかる場合がありますが、自分の希望に近い金額で売却できる可能性もあります。買取を利用すると、物件や業者によっては早ければ数日で売却が成立するケースもありますが、売却価格は相場の5割~7割程度に下がることが一般的です。ただし、地域や物件の状態によって異なるため、事前に複数社に査定を依頼して確認することをおすすめします。

空き家バンクは、2017年から全国共通のサイト運用が開始され、徐々に周知されてきました。空き家を探している人と、売りたい人・貸したい人の間をつなぐマッチングサービスで、マッチング後は仲介手続きを不動産会社が引き継ぐシステムです。

空き家売却の3,000万控除特例

空き家の多くは、両親が住んでいた家を相続した子ども世代が所有しているという実態があります。こうした空き家を売却しやすくし、今以上増やさないために空き家売却の3,000万円控除特例措置が生まれました。

土地・建物の要件として、相続または遺贈により取得した空き家であることや、昭和56年以前に建築された建物であることなど、いくつかの条件があります。さらに、適用要件として耐震基準を満たすことや、解体する場合は期限が定められていること、他の特例の適用を受けていないことなどの条件があり、すべて満たした物件でないと空き家の3,000万円控除は適用されません

自身の不動産が条件を満たしているか分からず不安だという方は、空き家の売買を行っている不動産会社に相談してみるとよいでしょう。

空き家を解体し更地にしてから売却する

空き家を解体し更地にしてから売却する

空き家を解体し更地にして売却することには、さまざまなメリットと問題点があります。解体費用や補助金制度について理解した上で、計画的に進めることが重要です。

空き家を解体して売却するメリットとデメリット

空き家を解体したのちに更地の状態で売却すると、建物がないことで購入希望者が自由に土地利用を計画できるメリットがあります。建物が不要な人にとっては、更地の方が土地の価値が上がるため売却へとつながりやすいでしょう。

空き家を解体するデメリットは、解体費用が発生し解体作業のために売却までの期間が延びる可能性があることです。

空き家解体に必要な費用

空き家解体の費用は、建物の大きさや構造、立地条件によって異なります。

空き家の解体費用目安
  • 木造住宅…坪あたり30,000円から50,000円程度
  • 鉄骨造…坪あたり35,000円から55,000円程度
  • RC造…坪あたり60,000円から80,000円程度

これらの費用はあくまで目安であり、実際の解体費用は解体業者に見積もりを依頼して確認する必要があります。

空き家解体で利用できる補助金制度

空き家解体に利用できる補助金は地域ごとに異なります。同じ県でも市町村単位で補助制度の有無や補助率、限度額は変わりますので必ずお住まいの自治体でご確認ください。

岡山県では倒壊の恐れがあるなどの危険な空き家については、市町村の補助金制度を利用できる場合があります。

岡山県内市町村の空き家解体に関する補助金制度の例
補助率限度額
岡山市3分の150万円
倉敷市2分の150万円
津山市3分の150万円

参考:空き家ガイドブック、空き家管理サービス、県内の空き家相談窓口及び補助制度等一覧 – 岡山県ホームページ(建築指導課)

空き家を賃貸物件として貸し出す

空き家を賃貸物件として貸し出す

空き家を賃貸物件として活用すると、家賃収入の経済的なメリットだけでなく、空き家の劣化を遅らせる手助けにもなります。ただし、賃貸物件としての管理や責任も伴い、貸借人とのトラブルや管理の手間が発生することは覚悟しておかなければなりません。以下に、メリットとデメリット、注意点について詳しく説明します。

空き家を賃貸に出すメリットとデメリット

メリット

  • 空き家の管理が容易になり、建物の劣化が防げる
  • 毎月家賃収入が発生し、安定した収入源となる

デメリット

  • 賃借人とのトラブルや、管理の手間が発生するリスク
  • 初期投資が必要

空き家を賃貸に出す最も大きなメリットは、毎月安定した家賃収入を得られる点です。さらに、空き家に人が住むことで常に換気が行われ湿気がこもりにくくなり建物の劣化を遅らせることができます。

一方デメリットは、リフォームや設備の交換などで初期投資が必要であることや、家賃未納や近隣住民との騒音問題・部屋を汚されるなどの貸借人トラブルが起こるリスクがあります。

空き家を賃貸に出す際の注意点

空き家を賃貸に出す前には、建物の状態を細かく確認し必要であれば修繕やリフォームを行いましょう。賃貸契約を結ぶ際は、契約書を作成しトラブルを未然に防ぐためにルールを明確にしておく必要があります。

不動産会社に管理を依頼することも可能ですが、トラブルのリスクや管理の手間を軽減できる代わりに、家賃の5%程度のコストがかかることも考慮しておきましょう。

空き家を売却や賃貸以外の方法で活用する

空き家を売却や賃貸以外の方法で活用する

空き家を売却や賃貸以外の方法で活用することで、新たな価値を生み出すことができます。具体的な方法を5つ紹介していきますので、空き家活用のヒントにしてみてください。

宿泊施設(民泊)として運営する

メリット:収益が見込める

デメリット:リフォームや準備費用が多額、客とのトラブルのリスク

空き家をリフォームし、宿泊施設(民泊)として活用する方法もあります。
手頃な価格で宿泊できる点や、日本文化を感じられる雰囲気が国内外の旅行客に人気を集めており、観光地や都市部では特に需要があります。立地次第では安定した収益を見込める可能性があります。

ただし、旅館業法や住宅宿泊事業法、消防法、建築基準法などクリアすべき法令も多く、特に住宅地では営業が制限されるケースもあるため注意が必要です。また、リフォーム費用は物件の状態によって異なりますが、数百万円以上かかるケースも少なくなく、開業後も清掃・管理・顧客対応など継続的な運営負担が伴います。

事前に地域の規制や市場ニーズを確認した上で、改修費用やランニングコスト、収支計画をしっかりと立てることが成功のカギとなります。安易に始めるのではなく、慎重に検討することが大切です。

レンタルルームやコワーキングスペースとして運営する

メリット:大きなリフォームは不要で気軽に始められる

デメリット:立地やコンセプトが悪いと集客が見込めない

空き家をレンタルルームやコワーキングスペースとして活用することで、在宅勤務やリモートワーカーなどの需要を取り込むことができます。運営にはインターネット環境の整備や共有スペースの設置が必要ですが、大がかりなリフォームは不要で初期費用を抑えて始められるでしょう。

ただし、駅から遠い場合や都市部以外の地方ではニーズが少ないこともあり、集客が見込めない可能性もあります。

シェアハウスやグループホームへ改築する

メリット:入居者が途切れなければ収益が見込める

デメリット:初期支出(リフォームや設備投資)がかかる、入居者が入らないリスクがある

シェアハウスやグループホームに改築することで、若者や高齢者、障害者などの居住ニーズに応えられます。広い空き家であるほど、部屋数や共有スペースを最大限に活かせて、効率的に利用できるでしょう。

複数人が入居することで、空室が出た場合でも一人に1棟で貸すのに比べて賃料収入が安定するメリットもあります。一方で、入居者間でのゴミ出しや騒音のトラブルの対応に迫られる事態も想定しておくべきです。

古民家カフェやバー・ショップとして活用する

メリット:比較的規模の小さい改装で始められるケースもある

デメリット:経営の基本的知識が必要、気軽に始められるため競合が多い

空き家を古民家カフェやバー、ショップとしてリノベーションすることで、地域の魅力を発信する拠点へと生まれ変わらせることができます。近年は「古民家ブーム」もあり、趣のある店舗が話題のスポットになるケースも増えています。

ただし、改装費用や開業資金、運転資金など思わぬコストがかかることも少なくありません。特に飲食業や小売業は、競合も多いため経営に関する知識や計画性が必要不可欠です。「低予算で気軽に始められる」と考えるのではなく、物件の状態や立地、ターゲット層をしっかり見極め、無理のない事業計画を立てた上でスタートすることが成功のカギとなるでしょう。

地域の人が集まるスペースとして活用する

メリット:空き家を利用した社会貢献ができる

デメリット:収益はほとんど見込めない

空き家は、地域住民が集まり交流するコミュニティスペースとして利用することもできます。ワークショップやイベント、地域活動の場として活用し、地域の絆を深めることや活性化に貢献できるでしょう。

空き家対策で重要なポイントとは?

空き家対策で重要なポイントとは?
空き家対策のポイント
  • 空き家の管理や売却については全ての相続人に合意を得る
  • リノベーションは費用対効果を考慮し、お金をかけすぎない
  • 「特定空き家」にならないように定期的にメンテナンスを行う
  • 相続で取得した空き家は3年以内の売却を目指す
  • 信頼できる不動産会社を見つける

空き家対策にはさまざまな要素が絡んできます。相続で取得した空き家で自分以外にも相続人がいる場合は、全ての相続人の合意を得てから売却や活用をしなくてはなりません。

相続人間での意思統一が難しい場合には、弁護士などの専門家に依頼する必要も出てくるでしょう。また、相続で取得した空き家は、続開始後3年を経過する年の12月31日までに売却すると、『相続空き家の3,000万円控除特例』や『取得費加算の特例』など、税務上の優遇措置が受けられる場合があります

空き家を売却するか残したまま活用するか決めかねるときは、信頼できる不動産会社を探して相談することをおすすめします。空き家の売買に詳しい不動産会社であれば、空き家対策についても考慮した上で最適な選択肢を提示してくれることでしょう。

まとめ

空き家問題は、今や誰にとっても他人事ではなく、将来にわたって向き合うべき身近な課題となっています。
「売却」「賃貸」「その他の活用方法」と、空き家への対策にはさまざまな選択肢がありますが、どれを選ぶべきかは物件の状態や立地、所有者の事情によって異なります

放置すれば、思わぬトラブルや大きな負担につながる可能性もあります。しかし、適切に活用すれば、家賃収入や地域活性化といった新たな価値を生み出すこともできるのです。

「何から手を付ければいいか分からない…」
そんな時こそ、不動産のプロに相談してみることをおすすめします。
専門家の知識を活用しながら、あなたの空き家に合った最適な活用法を見つけることで、不安を安心へと変えていきましょう。

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