不動産を相続した際にかかる税金はどれくらい?

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「相続」という言葉を耳にすると、心に少しの重さを感じることがあるかもしれません。

「不動産を相続したら、どのくらいの相続税がかかるのだろう?」や「手続きはどう進めるべきか」といった疑問は、自然なことです。そんな疑問や不安を解消するために、この記事では不動産相続に関する税金の計算方法や、適切な分割方法などを専門家の視点で解説することで、皆様の心の負担を少しでも軽減できればと思います。

安心して、不動産相続に向き合うための手助けができれば幸いです。

目次

不動産の相続にかかる税金

土地や家屋などの不動産を相続する際、特に注意すべきは「相続税」と「登録免許税」の二つの税金です。これらは、一定の金額以上の財産を相続した場合に発生します。それぞれの税金について詳しく見ていきましょう。

相続税

相続税は、亡くなった方が残した財産を引き継ぐ際に生じる税金です。基礎控除額を超える財産を相続した場合にのみ、申告・納付の義務が生じます。基礎控除額の計算は以下のようになります:

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人とは、配偶者や子どもなど、民法で定められた相続人のことです。例えば、配偶者と子ども二人の場合、基礎控除額は4,800万円になります。相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から10か月以内です。

登録免許税

不動産を相続した際には、その名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。この登記には「登録免許税」がかかります。この税金の計算は、不動産の固定資産税評価額に0.4%を乗じて行います。例えば、評価額が5,000万円の不動産の場合、登録免許税は20万円になります。

相続登記は現在義務化されていませんが、令和6年(2024年)から義務化される予定です。この場合、相続による不動産取得を知った日から3年以内に登記を行わないと、過料の対象になる可能性があります。

メモ

  • 相続税:亡くなった方が残した財産の総額から計算します。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続税の申告・納付期限は被相続人の死亡を知った日から10か月以内です。
  • 登録免許税:不動産の相続登記時に必要となります。計算方法は、不動産の固定資産税評価額×0.4%です。

不動産の相続税額の計算

不動産の相続において、多くの方が特に関心を持つのが「相続税がどれくらいになるのか」という点です。実際、相続税の計算は一見複雑に見えるかもしれませんが、適切な方法で行えば明確に理解できます。その計算の仕組みをもう少し詳しく見てみましょう。

不動産の相続税を算出するには、まず相続する全財産の総額を把握する必要があります。そして、その総額のうち不動産部分の評価を正確に行うことが重要です。不動産の評価額を計算する際は、土地と建物を個別に評価することになります。

土地の評価

土地の評価には主に「路線価方式」と「倍率方式」が使用されます。路線価方式は、国税庁が公表する「路線価」を基に計算され、主に都市部で用いられます。この方法では、路線価(1平方メートル当たりの価格)に土地の面積を掛け合わせて土地の相続税評価額を算出します。

例えば、路線価が1平方メートルあたり30万円で、土地面積が200平方メートルの場合、相続税評価額は30万円×200平方メートルで6,000万円になります。

一方、路線価が設定されていない地域では「倍率方式」が用いられます。この方法では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けることで土地の相続税評価額を算出します。固定資産税評価額は毎年市町村から送られてくる納税通知書で確認できます。

建物の評価

建物の評価に関しては、土地に比べて簡単です。建物の相続税評価額は、固定資産税課税明細書に記載されている額がそのまま用いられます。なお、建築途中の建物については、その建築費用原価の70%が相続税評価額として採用されます。

特例制度の利用

加えて、相続税の計算に際しては、特例制度を利用することで税額を軽減することが可能です。例えば、「小規模宅地等の特例」を適用すると、土地の相続税評価額を最大80%まで減額できます。この特例の適用には条件がありますが、適切に利用することで大幅な税負担の軽減が期待できます。また、「配偶者の税額の軽減」を利用することで、相続税評価額の一部が非課税となり、特に配偶者が主な相続人の場合に大きな恩恵を受けることができます。

土地を貸している場合、または建築途中の建物の場合でも、相続税評価額の計算方法が変わるため、これらのケースについても適切な評価が必要になります。借地権の存在や建築途中の状況を考慮した評価を行うことで、実情に即した税額を算出することが可能です。

このように、不動産の相続税の計算は、土地と建物の評価額を正確に算出し、全体の遺産総額に基づいて行う必要があります。また、特例制度の適用も検討することで、税負担を軽減することができます。不動産相続の税務処理は複雑な面があるため、不明な点があれば専門家に相談することが賢明です。

メモ

  • 相続税の計算は、全遺産の評価額を出してから行います。
  • 土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があります。
  • 建物の評価は固定資産税課税明細に基づきます。
  • 特例を利用することで相続税が軽減される場合があります。

複数人での不動産相続

相続が発生すると、特に相続人が複数いる場合、遺産の分割に関する協議が必要となります。このプロセスを「遺産分割協議」と呼び、相続人間でどのように遺産を分割するかについて話し合い、合意を形成するのが目的です。遺産分割協議は通常、存在する遺言書に従って行われます。遺言がない場合、法律で定められた法定相続分を基準にして分割することが一般的ですが、相続人全員の合意があれば、その合意に基づいた分割が優先されます。

特に不動産が相続財産に含まれる場合、遺産分割協議ではその扱いについても重要な議論の対象となります。不動産の分割方法としては、主に以下の4つの方法が考慮されます。各方法は、特定の状況や相続人のニーズに応じて選択され、相続人間で合意を形成する必要があります。

現物分割

複数の不動産がある場合に適した方法で、物件ごとに分割を行います。各物件の価値が異なるため、不平等が生じる可能性がありますが、他の財産でバランスを取ることが可能です。ただし、物件の価値差が大きい場合、適切な調整が難しい場合もあります。また、土地の場合は物理的に分割(分筆)することも選択肢の一つです。

代償分割

不動産が1つしかない場合や、その価値が大きい場合に考慮される方法です。不動産を取得する相続人が、その価値に見合った金銭を他の相続人に支払い、バランスを取ります。ただし、この方法は代償金を支払う能力が相続人に必要です。

換価分割

不動産を売却し、得られた現金を分割する方法です。不動産の維持管理の負担を避け、平等に遺産を分割することが可能です。しかし、売却がスムーズに進むとは限らず、時には売却のために時間がかかることもあります。また、不動産市場の状況によっては、期待通りの価格で売却できないリスクも考慮する必要があります。

共有分割

不動産を複数人で共有する方法です。この方法では、1つの物件が複数人の名義で保有され、共同で所有し続けます。法定相続分に基づいて持分が設定されることが多いですが、共有は必ずしも推奨される方法ではありません。共有によって将来的なトラブルが生じやすく、特に不動産の売却や処分を検討する際には共有者全員の同意が必要となります。相続時点での関係性が良好であっても、将来の関係性の変化には注意が必要です。

メモ

  • 相続人が複数いる場合、遺産分割協議で分割方法を決定します。
  • 分割方法には現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。

相続時の注意点

不動産を相続する際には、相続税や登録免許税以外にも複数の税金が関係してくることを理解しておくことが重要です。特に、不動産をそのまま保有し続ける場合や売却する際には、税金の面で留意すべき点がいくつかあります。

まず、不動産を保有し続ける場合固定資産税都市計画税が毎年かかってきます。固定資産税は土地や建物に課される税金で、都市計画税は固定資産税に加えて徴収されるものです。これらの税金は不動産の所有者に対して課されるため、相続によって不動産の所有者が変わった場合でも引き続き支払い義務が発生します。さらに、相続した不動産が空き家の状態で放置されている場合、特定空き家に指定されるリスクがあります。特定空き家に指定されると、固定資産税が通常の6倍、都市計画税が3倍に跳ね上がる可能性があるため、適切な管理と利用計画が重要となります。

一方、相続した不動産を売却する場合、売却益に対して所得税住民税が課されることになります。この売却益は「譲渡所得」として扱われ、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた金額が所得とみなされます。所得税の税率は、不動産の保有期間によって異なり、5年を超える長期保有の場合は税率が低くなる傾向にあります。また、2037年までの間は復興特別所得税が課せられることも念頭に置く必要があります。

これらの税金に関する知識は、不動産を相続する際に非常に重要です。特に、相続した不動産の利用計画や売却計画を立てる際には、これらの税金の影響を考慮に入れておく必要があります。税金に関する理解を深めることで、より良い相続計画を立てることが可能になります。また、複雑な税務問題に直面した場合は、税理士や不動産専門の専門家に相談することをお勧めします。

メモ

  • 不動産をそのまま保有する場合、固定資産税と都市計画税が発生します。
  • 不動産を売却する場合、所得税と住民税が発生する可能性があります。

不動産の活用方法

不動産を相続した際の活用方法には、さまざまな選択肢があります。重要なのは、状況や将来の計画に基づいて最適な選択をすることです。以下に、不動産相続後の代表的な活用方法を掘り下げて説明します。

住む

多くの場合、相続した不動産は親御さんの家であり、住み慣れた家を引き継ぐことには大きなメリットがあります。親密な思い出が詰まった家で生活を続けることは、心の安らぎにもつながります。しかし、家が古くなっている場合、改修やリノベーションにかかるコストや労力も考慮する必要があります。また、家の大きさや立地が現在の生活スタイルに合っているかどうかも重要な検討ポイントです。

収益化を目指す

賃貸物件として提供することで収益を得る、駐車場や賃貸アパートを建設するなど、不動産から定期的な収入を得る方法もあります。これにより、安定した収益源を確保することが可能です。しかし、不動産管理やテナントとの交渉、メンテナンスなど、不動産を収益化する際には多くの課題が伴います。特に、自分で管理するのではなく、管理会社に依頼する場合はそのコストも考慮に入れる必要があります。

売却する

家に住む予定がなく、将来的にもその計画がない場合、売却は有効な選択肢となります。売却によって得られる現金は新しい投資や他の資産の購入に活用できます。ただし、売却益が出た場合には、譲渡所得税や住民税が発生することも覚えておく必要があります。市場状況や物件の状態によっては、希望する価格で売却できるとは限らないため、不動産市場の動向をよく調べ、適切なタイミングで売却することが重要です。

放置する

不動産を放置することは推奨されません。放置された不動産は固定資産税や都市計画税の負担のみならず、その状態が悪化すれば特定空き家に指定されるリスクもあります。また、地域の景観を損ねたり、セキュリティ上の問題を引き起こしたりする可能性もあります。

メモ

  • 自宅として利用、売却、収益化、または放置することが選択肢ですが、放置はリスクが伴います。

どの選択をするにしても、不動産の現状、市場価値、保有コスト、将来の計画などを総合的に検討することが重要です。また、複雑なケースでは不動産専門のアドバイザーや税理士の意見を求めることが賢明です。不動産を相続することは、単に資産を手に入れること以上の意味を持ちます。したがって、長期的な視点で慎重に計画を立てることが、最善の選択につながります。

まとめ

不動産相続においては、共有や分割方法の選択、相続人の意見の不一致、賃借人の存在、債務や担保権の問題など、様々なトラブルが生じる可能性があります。こうした問題を適切に解決し、スムーズな過程を進めるためには、専門家の知識と経験が不可欠です。また、不動産の売却や維持に伴う税負担の問題も無視できません。譲渡所得税やその他の税金に関する節税のアドバイスを税理士から受けることで、負担を軽減する方法を見つけることが可能です。

この記事を通じて、不動産相続のプロセスとその複雑さを理解し、有効な計画を立てることができれば幸いです。専門家のアドバイスを受け入れ、前向きに相続に取り組むことで、安心して新たな一歩を踏み出すことができるでしょう。不動産相続は、しばしば困難な道のりですが、適切なサポートと情報により、そのプロセスを円滑に進めることが可能です。

売買事業部岩富係長

この記事を監修した人

後楽不動産 売買事業部係長 岩富

26年の不動産売買経験と宅建士、賃貸不動産経営管理士の資格を持つ。豊富な知識と実績で、不動産売買に関するサポートを行う。

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