不動産売却後の住民税はいつ払う?計算方法と節税に使える控除特例を解説

不動産を売却してまとまった資金が手に入ったものの、「翌年の住民税が大変なことになる」という話を聞いて不安に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。不動産売却によって利益が出た場合、その翌年に納める住民税が高くなる可能性があります。しかし、事前に仕組みを理解し、利用できる制度を知っておけば、慌てる必要はありません。
この記事では、不動産売却後の住民税について、計算方法から支払い時期、そして税負担を大きく軽減できる特例制度まで、専門的な内容を分かりやすく解説します。
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不動産売却で住民税が上がるのはなぜ?
不動産を売却したからといって、必ずしも住民税が上がるわけではありません。住民税は、前年の所得に応じて金額が決まるため、不動産売却によって「所得」が増えた場合にのみ、翌年の住民税が上がります。この不動産売却による所得を「譲渡所得」と呼びます。
利益(譲渡所得)に対して課税される
譲渡所得とは、簡単に言うと不動産売却によって得られた「利益」のことです。これは、売却価格そのものではなく、売却価格からその不動産を購入したときにかかった費用(取得費)や、売却するためにかかった経費(譲渡費用)を差し引いて計算されます。この計算結果がプラスになった場合にのみ、その利益に対して住民税や所得税が課税されます。もし売却によって損失が出た場合(譲渡損失)は、住民税が上がることはありません。
| 項目 | 内容 |
| 譲渡所得 | 不動産売却による利益。これがプラスの場合に課税対象となる。 |
| 取得費 | 売却した不動産の購入代金や購入時の仲介手数料など。 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料や印紙税など、売却のために直接かかった費用。 |
参考:No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁
参考:No.3252 取得費となるもの|国税庁
【関連記事】相続税軽減のための取得費加算の特例について-【岡山県】不動産売却・査定・買取|後楽不動産の安心サポート
住民税と所得税の違いとは
不動産の譲渡所得に対して課税される税金には、「住民税」と「所得税」の2種類があります。これらを総称して「譲渡所得税」と呼ぶこともありますが、実際にはそれぞれ異なる税金です。所得税は国に納める国税、住民税は都道府県や市区町村に納める地方税という違いがあり、税率や納付のタイミングも異なります。確定申告をすれば、税務署からお住まいの自治体へ情報が連携されるため、住民税の申告を別途行う必要は基本的にありません。
不動産売却後の住民税はいくら?計算方法を解説
ご自身の住民税がいくらになるか、大まかな金額を把握しておくことは大切です。ここでは、3つのステップに分けて計算方法を解説します。
STEP1:譲渡所得を計算する
まず、課税対象となる譲渡所得を計算します。計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費+譲渡費用)
例えば、4,000万円で売却した不動産の取得費が3,000万円、譲渡費用が150万円だった場合、譲渡所得は「4,000万円 – (3,000万円 + 150万円) = 850万円」となります。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することもできますが、一般的に税額が高くなる傾向があります。
参考:No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁
参考:No.3258 取得費が分からないとき|国税庁
STEP2:所有期間に応じて税率を確認する
次に、計算した譲渡所得にかける税率を確認します。この税率は、不動産を売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えているか、5年以下かによって大きく異なります。
| 所有期間 | 区分 | 住民税率 | 所得税率(※) | 合計税率 |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 5% | 15.315% | 20.315% |
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 9% | 30.63% | 39.63% |
※所得税率には復興特別所得税が含まれます。
このように、短期で売却する方が税率が格段に高くなるため、売却のタイミングは非常に重要です。
STEP3:住民税額を計算する
最後に、算出した課税譲渡所得金額に税率を掛けて住民税額を求めます。
住民税額 = 課税譲渡所得金額 × 税率
先ほどの例で、所有期間が10年(長期譲渡所得)だった場合、住民税額は「850万円×5%=42.5万円」となります。これが、翌年にもともとの住民税に上乗せして課税される金額の目安です。
参考:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁
参考:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁
不動産売却後の住民税はいつ・どうやって支払う?
譲渡所得に対する住民税は、所得税とは支払うタイミングや方法が異なります。うっかり納付を忘れることがないよう、しっかりと確認しておきましょう。
支払うタイミングは売却した翌年
最も重要なポイントは、住民税は不動産を売却した「翌年」に課税されるという点です。住民税は前年1年間の所得をもとに計算されるため、例えば2024年中に不動産を売却した場合、その譲渡所得に対する住民税は2025年6月以降に納付することになります。売却代金を受け取ってから納税まで1年以上の期間が空くため、納税資金を使い込んでしまわないよう計画的な管理が必要です。
納税方法1:普通徴収
自営業者の方や、確定申告時にご自身で納付を選択した会社員の方が利用する方法です。売却した翌年の6月ごろに、お住まいの市区町村から納税通知書と納付書が自宅に届きます。通常、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納付しますが、一括での納付も可能です。金融機関の窓口やコンビニエンスストアなどで支払います。
納税方法2:特別徴収
会社員や公務員の方の一般的な納税方法で、毎月の給与から住民税が天引きされます。不動産売却による譲渡所得分の住民税も、翌年6月から翌々年5月までの12回に分けて給与から天引きされます。会社に不動産売却したことを知られたくない場合は、確定申告書の第二表「住民税に関する事項」の欄で「自分で納付」(普通徴収)にチェックを入れることで、給与天引きを避けることができます。
参考:【確定申告書等作成コーナー】-住民税の徴収方法の選択(令和6年分申告)
住民税の負担を軽減する4つの控除・特例制度
不動産売却による税金は高額になりがちですが、国は様々な特例制度を設けています。これらを活用することで、合法的に税負担を大きく軽減できる可能性があります。利用するには、必ず確定申告が必要です。
マイホーム売却で使える3,000万円の特別控除
ご自身が住んでいたマイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる非常に強力な特例です。例えば、譲渡所得が2,500万円だった場合、この特例を使えば課税対象となる所得が0円になり、住民税も所得税もかからなくなります。住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売却するなど、いくつかの適用要件があります。
| 特例名 | 概要 | 主な適用要件 |
| 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除できる。 | ・自分が住んでいる家屋の売却であること。・親子や夫婦など特別な関係の相手への売却ではないこと。 |
【関連記事】自宅売却で得られる特別控除の条件とは?「3,000万円控除」を徹底解説-【岡山県】不動産売却・査定・買取|後楽不動産の安心サポート
所有期間10年超で使える軽減税率の特例
売却した年の1月1日時点で、マイホームの所有期間が10年を超えている場合、課税譲渡所得6,000万円以下の部分について、通常よりも低い税率が適用される特例です。住民税率は5%から4%に、所得税率は15.315%から10.21%に軽減されます。この特例は、前述の3,000万円特別控除と併用することが可能です。
参考:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
新しい家へ買い換える場合の特例
マイホームを売却し、新たにマイホームを購入(買い換え)した場合、一定の要件を満たせば、譲渡益への課税を将来に繰り延べることができる制度です。売却した時点では課税されませんが、買い換えた家を将来売却するまで課税が先送りされる仕組みです。ただし、3,000万円特別控除との併用はできません。
参考:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
売却で損失が出た場合に使える特例
不動産を売却して利益が出るどころか、損失(譲渡損失)が出てしまった場合にも使える特例があります。マイホームの買い換えで損失が出た場合や、住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出た場合に、その損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)できます。これにより、所得税や住民税の還付を受けられる場合があります。
参考:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
参考:No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
【具体例】住民税の計算シミュレーション
実際に特例を使った場合に、住民税がどれくらい変わるのか見てみましょう。
3,000万円の特別控除を適用するケース
- 売却価格:5,000万円
- 取得費:3,500万円
- 譲渡費用:150万円
- 所有期間:8年(長期譲渡所得)
①譲渡所得の計算
②特例の適用
譲渡所得1,350万円から3,000万円特別控除を適用します。
控除額の方が大きいため、課税譲渡所得は0円になります。
③住民税額
課税譲渡所得が0円のため、住民税は0円となります。このケースでは、特例を適用しない場合に発生したはずの住民税67.5万円(1,350万円×5%)が全て節税できたことになります。
【関連記事】不動産売却の税金はいくら?計算方法と使える特例をわかりやすく解説-【岡山県】不動産売却・査定・買取|後楽不動産の安心サポート
不動産売却と住民税に関するよくある質問
住民税がかからないケースはありますか?
はい、あります。まず、不動産を売却して利益が出なかった(譲渡所得が0円以下だった)場合は、住民税はかかりません。また、利益が出た場合でも、「3,000万円の特別控除」などの特例を利用した結果、課税譲渡所得が0円になった場合も住民税はかかりません。
控除を使えば確定申告は不要になりますか?
いいえ、不要にはなりません。3,000万円特別控除などの特例制度を利用するためには、譲渡所得が0円になる場合であっても、必ず翌年に確定申告を行う必要があります。確定申告をしないと特例は適用されず、本来納めるべき税額に加えて無申告加算税などのペナルティが課される可能性があるので注意が必要です。
ふるさと納税の上限額は変わりますか?
はい、変わります。ふるさと納税の控除上限額は、その年の総所得金額等に応じて決まります。不動産売却によって譲渡所得が発生すると、総所得金額も増加するため、ふるさと納税の控除上限額も上がります。そのため、売却した年は通常よりも多くのふるさと納税を活用できる可能性があります。
まとめ
不動産売却後の住民税は、売却で得た利益(譲渡所得)に応じて、売却の翌年に課税されます。納税額が高額になることもありますが、「3,000万円の特別控除」をはじめとする様々な特例制度を活用することで、負担を大幅に軽減することが可能です。
ご自身の状況にどの特例が使えるのかを確認し、忘れずに確定申告を行うことが重要です。税金のことで不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
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