更地にするべき?そのまま売る?古家付き土地を高く売るための選択術

空き家になった実家、老朽化が進んだ古い家。
売りたい気持ちはあるけれど、「このままで売れるの?」「更地にした方がいいのかな…?」と迷ってしまう人は少なくありません。
たしかに、築年数が古く見た目も傷んでいると、買い手がつきにくいのでは…と不安になりますよね。でも実は、“古家付き土地”だからこそ活かせる価値もあり、売り方次第で損をせず売却することは十分可能です。
この記事では、「古家付きのまま売るべきか?更地にして売るべきか?」 という悩みに対して、判断のポイントや売却のコツをわかりやすく解説していきます。迷ったまま動けないのが一番のロス。
この記事を読み終えた頃には、自分にとってベストな選択肢が見えてくるはずです。
この記事を監修した人

岩冨 良二
後楽不動産 売買事業部 係長
不動産業界歴26年のベテランで、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つエキスパート。豊富な知識と実績でお客様から厚い信頼を得ており、売買事業部のエースとして活躍中。複雑な取引もスムーズにサポートし、最適な提案を行う頼れるプロフェッショナルでありながら、社内のムードメーカーとしても周囲を明るくする存在。
古家付き土地とは?

不動産を売却・購入しようとする際に、「古家付き土地」と「中古戸建」という似たような表現を見かけることがあります。一見すると同じように思えるこの2つの違いを理解することで、物件の正しい価値や売り方・買い方の判断がしやすくなります。
古家付き土地とは
古家付き土地とは、老朽化した建物が残ったままの状態で、「土地」として販売される不動産のことを指します。この場合、建物には資産価値がほとんどないと見なされ、評価や価格設定も主に土地の価値に基づいて行われます。建物はあくまで「おまけ」として扱われるのが特徴です。
買主は購入後、建物をそのまま使用するか、解体して更地にするかを自由に選べます。ただし、建物の状態に関して売主が責任を負わない「現状有姿」での取引が一般的です。
中古戸建との違い
一方で、中古戸建とは、建物にも一定の価値が認められ、建物と土地のセットとして販売される物件のことです。
内装・外装ともにある程度の状態が保たれており、「住めること」を前提とした売却になります。
重要なのは、この2つの呼び方には法的な違いはなく、売主の意図や市場ニーズによって分類されるという点です。
状況 | 選ばれる表記例 |
建物がリフォーム可能で住める状態 | → 中古戸建として販売 |
建物が老朽化し価値がない | → 古家付き土地として販売 |
築年数と建物の価値
特に木造住宅の場合、税務上の法定耐用年数は22年とされており、それ以降は建物の資産価値はゼロと評価されることが一般的です。ただし、これはあくまで会計上の話であり、実際にはメンテナンスがされていれば築30年を超えても十分に住める家もあります。そのため、古家付き土地であっても購入者にとっては「リノベーション前提の住まい」として魅力的に映る場合もあります。
古家付き土地のまま売る?それとも更地にする?

築年数の古い建物が残っている不動産を売却する際、多くの方が迷うのが「古家付き土地」として売るべきか「更地にして売るべきか」という判断です。
特に木造住宅では、築20年以上で建物の資産価値がゼロと評価されることも少なくありません。このような物件では、建物をどう扱うかが売却成功のカギになります。
ここでは、それぞれの売却方法に適したケースと判断時の注意点や補足情報を整理して解説します。
古家付き土地として売却が適しているケース
建物が老朽化していても、すべてのケースで「解体=正解」とは限りません。以下のような条件に当てはまる場合は、古家付きのまま売却した方が、結果的にメリットが大きくなる可能性があります。
① リノベーション需要が見込める場合
築年数が古くても、構造に大きな問題がなく、最低限のリフォームで住める状態であれば、「リノベーション前提」で家を探している買主にとっては魅力的な物件になります。
近年では、
- 築40年以上の古民家を改装して住みたい人
- 自分好みに手を入れたい若年層やDIY層
- 相場より安く物件を手に入れたい投資家
といった築古物件を積極的に活用したい層のニーズが増加傾向にあります。このようなターゲットに届けば、「古さ」そのものが価値になります。
② 再建築不可または再建築制限がある土地
以下のような土地は、一度更地にしてしまうと新しく家を建てられない、または建てる条件が厳しくなるため、建物を残したまま売る方が明らかに合理的です。
- 幅4m未満の私道にしか接道していない
- 接道面積が建築基準法の規定(2m以上など)を満たしていない
- 都市計画区域内で用途制限や高度制限が厳しい
こういった「再建築不可」や「建て替え困難な物件」は、現存の建物を生かすしか選択肢がないため、古家付きのまま売却する方がむしろ買主にとってメリットになるケースです。
③ 解体費用が査定額に見合わない場合
たとえば木造住宅(延床30坪)を解体する場合、地域や条件によりますが、90万~150万円程度解体費用がかかるのが一般的です。
一方で、もし土地の査定額が800万円程度だった場合、
- 解体費用で150万円引かれる
- 固定資産税の軽減も失う
となると、建物付きのまま売却した方が、手元に残る金額が多くなる可能性があります。特に「築年数は古いがまだ使える」「固定資産税の特例を維持したい」という場合は、無理に更地にしない方が賢明です。
更地にして売却した方がよいケース
古家付きのままでは売れにくい、あるいは売却に時間がかかりそうな場合には、建物を解体して更地にしてから売却した方がスムーズに進むことがあります。
以下のような条件に当てはまるなら、更地化を前向きに検討する価値があります。
① 建物の老朽化が著しく「使えない」と判断される場合
- 雨漏りがひどく、屋根や天井が抜けている
- 柱や土台にシロアリ被害が見られる
- 壁や床が傾いている、構造的な不安がある
- 長年空き家で、水道や電気のインフラが完全に停止している
このような状態の建物は、買主からすると“解体費用が必要な手間のかかる物件”と見なされがちです。内覧時の印象も悪く、結果として「敬遠される=売れ残る」リスクが高くなります。
② 周辺エリアが新築住宅の需要が高い地域
- 近隣に分譲住宅や新築戸建てが並んでいる
- ファミリー層や転入者が多い地域
- 駅近、商業施設・学校が充実しているエリア
このようなエリアでは、「土地から新築を建てたい」と考える層が多いため、建物が残っていることで売却の足かせになるケースもあります。
更地にしておけば、
- 建築のイメージがしやすい
- 建築スケジュールがすぐに立てられる
- 「即活用可能な土地」として買主にとって魅力的
となり、購入検討者の幅が広がります。
③ 解体費用を負担でき、早期売却・現金化を重視する場合
売主側に資金的余裕があり、「なるべく早く売りたい」「手間をかけたくない」と考えている場合は、戦略的に更地化するのが有効です。
更地にしておくことで、以下のメリットが見込めます。
- 内覧時の印象が良くなり、問い合わせが増える
- 値下げ交渉のリスクが減る
- 買主の意思決定が早まり、スムーズな成約につながる
また、不動産会社によっては「更地の方が高く売れる」と判断されることもあるため、査定時点で解体後のシミュレーションをしておくことも重要です。
古家付き土地のまま売る?更地にする?それぞれのメリット・デメリット

古家付き土地を売却する際には、メリットもあれば注意すべき点もあります。
「古い家が建っているから売れにくいのでは…?」と思われがちですが、状況によっては更地よりも効率的に売却できるケースも。
ここでは、古家付き土地ならではの利点とリスクを整理してご紹介します。
【メリット】古家付きのまま売却することで得られる利点
ではまず、「古家を残したまま売却する」場合にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
実は、建物があること自体が“売却の強み”になるケースもあるんです。
解体費用がかからない
古家を残したまま売却する最大のメリットは、解体費用を売主が負担しなくて済む点です。
木造住宅の解体費用は一般的に坪4〜5万円が相場で、延床面積30坪の場合は約120〜150万円程度が目安。構造や立地、重機の搬入可否などによって変動するものの、決して小さな金額ではありません。
この費用をかけずに売却できるため、手元に残る利益が増える可能性があります。
固定資産税が安くなる(住宅用地特例の適用)
建物が建っていると、その土地は「住宅用地」として扱われ、固定資産税・都市計画税に特例が適用されます。
- 固定資産税:課税標準額 × 1.4%
- 都市計画税:課税標準額 × 0.3%
住宅用地の場合、この課税標準額が最大で6分の1(200㎡以下の部分)まで軽減されるため、建物がある方が税負担が小さくなるケースが多いのです。
※この特例は、空き家でも要件を満たせば適用されます。
【デメリット】古家があることで想定されるリスク
一方で、古家が残っていることによって、買主の印象や売却条件に影響を及ぼすリスクもあります。売却をスムーズに進めるためには、こうしたデメリットもしっかり理解しておくことが大切です。
更地よりも売れにくい可能性
古家付きの物件は、購入後に解体を前提とした場合、買主側に追加コストがかかるため、需要がやや限定的です。
また、古家があると土地の状態が見えにくく、
- 地盤の強度がわかりにくい
- 埋設物(古い配管・コンクリート基礎など)の確認が困難
- 境界杭が確認できない
などの理由から、購入判断に慎重になる買主も多いのが実情です。
売却価格が低めに設定されやすい
古家付き土地は、買主側が将来的に解体することを前提に価格交渉を行うため、周辺の土地相場よりも低めに評価される傾向があります。
また、売主側が解体費を考慮せず価格設定をした場合でも、購入希望者からの値下げ交渉を受けやすくなる点に注意が必要です。
売却前に押さえておきたい「基本知識」3選

古家付き土地の売却を成功させるためには、行動に移る前に最低限知っておくべき前提知識があります。
ここでは、見落としがちな3つのポイントを簡潔に解説します。
① 「古家付き土地」と「中古戸建」の違いに法的な定義はない
「古家付き土地」と「中古戸建」は似た言葉に見えますが、実は法律上の明確な違いはありません。
呼び方は、建物の状態や市場ニーズに応じて、不動産会社が販売戦略として使い分けているにすぎません。
- 建物が使える・リフォーム可能 → 中古戸建
- 建物が老朽化・実質的に使えない → 古家付き土地
この違いを理解しておくことで、自分の物件がどう評価され、どんな売り方が適しているのかが見えてきます。
② 売却判断は「総コスト」で考えるのが鉄則
売却価格が高い=得をする、とは限りません。
解体費用・不動産仲介手数料・税金などを含めた“最終的な利益”=実質的な手取り額で比較することが大切です。
たとえば、解体費用が思ったより高額だったり、固定資産税の軽減措置を失ったことで、売却後の手取りが想定より少なくなるケースも少なくありません。
「売り方によって、いくら手元に残るか?」という視点を忘れずに。
③ 古家があると固定資産税が軽減される可能性がある
古家が建っている場合、その土地は「住宅用地」として認定されることが多く、固定資産税や都市計画税が大幅に軽減される特例(最大6分の1)が適用されます。
しかし、解体して更地にするとこの特例が外れ、税負担が一気に増える可能性があります。売却前に税額の試算や市区町村への確認をしておくと安心です。
古家付き土地を売却する際の注意点|トラブル回避のための5つのポイント

古家付きの土地を売却する場合、スムーズに取引を進めるにはいくつかの重要な確認事項があります。特に、建物の老朽化や境界線の不明確さといった古い物件特有のリスクにどう対応するかがカギになります。
ここでは、古家付き土地の売却を検討する際に売主が押さえておきたい5つの重要な注意点と、判断を助ける補足情報をご紹介します。
適正価格の設定は「更地・古家付き」両面から比較する
古家付き土地を売却する際は、建物を残した場合と更地にした場合の両方の売却価格をシミュレーションすることが基本です。見落としがちですが、「売却価格」だけでなく、解体費用や固定資産税などを含めた“最終的な利益”で比較することが大切です。
例えば、木造住宅30坪の解体には約120〜150万円ほどの費用がかかるのが一般的。これに加え、更地にすることで固定資産税が上がるケースもあります。
境界線・測量・権利関係の確認は必須
土地の境界線が不明確なままでは、売却後に隣地とのトラブルに発展するリスクがあります。スムーズな取引のためにも、売却前に確定測量を行い、土地の正確な範囲を明らかにしておくことが重要です。
あわせて、抵当権の設定や共有名義などの権利関係についても事前に整理しておきましょう。買主にとって安心できる状態を整えておくことが、信頼を得る第一歩になります。
建物の契約不適合責任(旧・瑕疵担保)を明確に
古家付きのまま売却する場合は、建物の不具合に対して売主がどこまで責任を負うのかを明確にしておくことが重要です。
一般的には、「現状有姿(ありのままの状態)」で引き渡し、契約不適合責任を免除する形での取引が多くなります。こうした取り決めは、売買契約書に明記しておくことで、売却後のトラブルを防ぐことができます。
土地・建物の状態はできるだけ開示する
スムーズな売却のためには、建物の劣化状況や土地の状態について、可能な限り正確な情報を開示することが重要です。たとえば、地盤の状態や古い配管・基礎などの埋設物の有無なども、分かる範囲で伝えておくと安心材料になります。
さらに、インスペクション(建物診断)を事前に実施しておくことで、買主からの信頼が高まり、売却後のトラブル回避にもつながります。
「見えない不安」を減らすことが、結果として売却成功への近道になります。
売れにくさを感じたら、戦略の見直しを柔軟に
古家付きのまま売り出しているものの、長期間にわたって反響が少ない場合は、売却戦略を見直すタイミングかもしれません。
たとえば、
- 半年以上経っても問い合わせがほとんどない
- 価格を下げても内見や具体的な話が進まない
- 不動産会社からも市場とのミスマッチを指摘された
こういった状況が続く場合は、思い切って建物を解体して更地に切り替えることで、流れが変わることもあります。特に、新築を希望する層にとっては、更地の方がイメージしやすく、需要が広がりやすいメリットがあります。
また、スピードを優先したい方は、不動産会社による買取査定を検討するのも一つの方法。販売期間にこだわらず、早期の現金化や手間の削減を重視したい方にとっては、有効な選択肢になり得ます。
まとめ
築年数の古い建物が残った土地でも、そのまま売るか、解体して更地にするかの選択次第で、不動産としての価値は大きく変わります。建物の状態や立地、周辺環境、税金、解体費用など、複数の視点から冷静に見極めることが、後悔しない売却への第一歩です。
「売れるのか不安…」「何から始めたらいいか分からない…」
そんなときこそ、一人で抱え込まず、専門家の視点を借りることが何より大切です。
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